科学史・科学社会学

【資料】ヒポクラテスの著作と和訳

昭和六年に出版された今裕訳『ヒポクラテス全集』(岩波書店)はGoogleBooksで無料公開されている。新版の『ヒポクラテス全集』は、研究室には所蔵していないが、明治大学では和泉図書館の書庫に所蔵されている。 ギリシア語の原文はWikisourceの『Συγγραφέα…

【資料】Albert Hofmann『LSD: Mein Sorgenkind』

アルベルト・ホフマンの『LSD』の前書きの部分がKindleで試し読みできたので、その部分をテキスト化した。 VORWORT Es gibt Erlebnisse, über die zu sprechen die meisten Menschen sich scheuen, weil sie nicht in die Alltagswirklichkeit passen und si…

〈ナチュラル〉と〈ケミカル〉の象徴論

大麻の「神話」 〈自然〉と〈文化〉 「医療化」という言説 〈ケミカル〉の危険性 大麻の「神話」 日本ではアサは大麻取締法で規制されており、代表的な精神活性物質であるTHCは麻薬および向精神薬取締法で規制されている。しかし、THCをアセテート化してすこ…

シーニュ(記号/宮)とコンステレーション( 付置/星座)

共時性のコスモロジー ―シーニュ(記号/宮)とコンステレーション ( 付置/星座)再考― The Cosmology of Synchronicity: Reconsidering “Signe” and “Constellation” 科学は、反復される現象の中に法則性を見いだし、その法則を利用して未来を予測するこ…

【資料】ポール・ファイヤアーベント(Paul Feyerabend)

歴史が提供するゆたかな素材を見つめる人々、より低級な本能を喜ばせるために、すなわち明晰性、精確さ、「客観性」、「真理」という形式の中で知的な事柄における安全性を切望する気持を満たさんがために、その素材を貧しいものにするつもりのない人々にと…

超心理学と関連学会の動向

アメリカの「Parapsychological Association」は、American Association for the Advancement of Science (AAAS)に加盟している学術団体であり、日本超心理学会(JSPP: Japanese Association for Parapsychology)は、かつては日本心理学諸学会連合にも加盟…

心理学における「異常」と「超常」

超心理学(parapsychology)とは、超常現象(paranormal phenomena)を対象とする心理学の一分野である。しかし、「超」心理学や「超」常現象という訳語は、いささか意味不明である。あるいは、一種の「いかがわしさ」さえ感じさせる。以下、断りがないかぎ…

睡眠変調療養記 ー当事者研究としてー

睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害と脂肪肝・高脂血症の治療を進めています。医療法人ともしび会・ファイヤークリニック(代表、江越正敏)に通院し研究協力も行っていますが、診療報酬以外の資金等の授受は行われていません。 この記事には医療・医学に関す…

日本の精神展開薬研究史

この記事は書きかけです。関連する情報をご存じの方はお知らせください。 この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、その正確性は保証されていません[*1]。検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。この記事の内容…

「ゲリラ」としての学際研究

新しい研究分野は、必然的に学際的な様相を帯びるものである。しかし、学際的ということは、広く浅い雑学という意味ではない。すこし長くなるが、日本の宗教学の先駆者のひとりである柳川啓一による、よく知られた一節を引用する。 …宗教学は、宗教一般を解…

天動説と地動説 ー 西欧ルネサンス期のコスモロジー ー

西暦1633年、ガリレオはローマに呼ばれ、古代ローマの神殿(パンテオン)跡の近く、街中の小さな教会、サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会で宗教裁判にかけられ、そこで聖書の教えに反するとされた地動説への支持を撤回する。その後フィレンツェ郊外の…

【資料】レヴィ=ストロース「歴史と弁証法」

レヴィ=ストロースの「歴史と弁証法(Histoire et dialectique)」は、フランス現代思想の歴史において、サルトルの実存主義(→「【資料】『実存主義とは何か』」)を論破し、構造主義の時代の幕開けを告げたと評されているが、その議論の中心に、単純に還…

人類学とは何か ーその科学史的位置づけー

人類学の背景 人類学の下位分野 二つの人類学 文理総合科学としての人類学 人類学の現代的意義 人類学の背景 人類学(anthropology)は、人間を研究する学問である。しかし、そう定義しただけでは、人間を扱う学問のすべてが「人類学」になってしまう。人類…

【資料】ドゥルーズ(Gilles Deleuze)

資料サイト 研究室の蔵書 資料サイト ドゥルーズの著作とその邦訳については、ドゥルーズ(Wikipedia)のほか、以下のサイトにも詳しくまとめられている。 「ドゥルーズの著作リスト」 研究室の蔵書 日本語に訳出されている著作のうち、河出文庫に収録されて…

【資料】フーコー(Michel Foucault)

資料サイト 研究室の蔵書 主要な著作 論考集 その他 資料サイト フーコーの著作とその邦訳については、以下のサイトに詳しくまとめられている。 立岩真也「Foucault, Michel ミシェル・フーコー」 「ミシェル・フーコー」『ameqlist 翻訳作品集成(Japanese T…

「不思議現象の心理学」2021/07/16 講義ノート

不思議現象の心理学という不思議なタイトルの授業も、今回が最終回になります。思い出してみれば私も大学生のころは、試験の情報を入手するために、授業の最終回だけは出席しよう、などと都合のいいことを考えていたものですが、さて、今年度も混乱がありま…

「不思議現象の心理学」2021/06/25 講義ノート

不思議現象の心理学もあと四回になりました。hirukawa-classes.hatenablog.jpおおよそのスケジュールとしては、シラバスとはすこし順序が違うのですが、話の流れで、まず先に疑似科学についての議論を先に扱います。これについては「科学と非科学の境界設定…

「不思議現象の心理学」2021/05/28 講義ノート

資料集にアップしてある「プラセボ効果と象徴的効果」を読んでください。今週はこの記事を中心に質疑応答ができればと思います。さて先週の講義ノートのうち、夜明砂、コウモリのフンが薬として飲まれているという噴飯ものの話は、切り出して「呪薬の論理 ー…

「不思議現象の心理学」2020/05/14 講義ノート

さて今週は「実験心理学と統計的仮説検定」に書いたことをテーマとする。じっさいに「心理学」という学問にふれてみると、統計学の話ばかりが出てきて驚くかもしれないが、これは、心という目に見えないものを科学的に研究するために、心理学が物質科学以上…

睡眠障害治療薬の科学史

この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、その正確性は保証されていません[*1]。検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。この記事の内容の信頼性について検証が求められています。確認のための文献や情報源をご…

「不思議現象の心理学」講義ノート 2020/04/23

心という、物質ではないものを、物質と同じように、自然科学的な方法で研究する、心理学という学問がいかに成立してきたか。心理学という学問の歴史は、あまり古くない。せいぜい、百年か、二百年である。もともと、ヨーロッパでは、人間の心や魂の問題は、…

日記実験(7日目)・睡眠実験(0日目)

hirukawa.hateblo.jp 承前。 音声と文字 心理学の歴史 睡眠 心理学講義 昼 緊急事態と会議 夜 音声と文字 音声言語を止めて、文字言語だけで暮らしてみると、脳はどうなるのか。実験の開始。ブローカ野とウェルニッケ野がまったく別の領野に局在し、進化して…

日記を書くという試み(三日目)

hirukawa.hateblo.jp 承前。(昨日の日記) 起床と朝食 日記に余計なことを書きすぎている (また向精神薬の話) 昼食 休憩、そして 夕食 睡眠と覚醒と光 起床と朝食 三日坊主という言葉があるが、日記というものを書くという試みの三日目。いつも、研究の打…

「不思議現象の心理学」2020/04/09 講義ノート

さて「不思議現象の心理学」の授業、今日が初回です。教室で、口でしゃべる代わりに、口語体の文字で書きます。ところどころ、日本語としておかしいところもありますが、それも講義口調ということで、御理解ください。今日は、初回なので、ざっと全体を見わ…

辞書・事典・教科書リンク集(オンライン/書籍)

一般 言語 日本語 古語 方言 敬語 法学 哲学 哲学一般 科学史・科学哲学 心理学 心理学一般 認知心理学 臨床心理学 医学 医学一般 精神医学 看護学 薬学 日本薬学会『薬学用語解説』(オンライン) 日本薬学会(編)『薬学用語辞典』東京化学同人 医薬品 生…

「VR元年」略史

日本では、2016年が「VR元年」と呼ばれたことがあった。この年に、VR器機が一般消費者向けに普及しはじめた。 第二次VR元年 個人的にも、最初にVR世界に没入したのが、この西暦2016年であった。 Oculus Rift Cv1を用いた三次元宇宙シミュレーション「Mitaka …

文明社会の神話的思考

神話的思考はいわゆる未開人に特有のものではなく、科学=技術の発展した現代の都市社会でも、いや、そのような社会であればこそ、なおのこと ―レヴィ=ストロースの言葉を借りれば ― 思考している当事者にも意識されずに、はたらいている。 〈自然〉への回帰…

向精神薬に関連する国内法と国際条約

国際条約 国内法 国際条約におけるスケジュール 薬物犯罪の罰則 国際条約 国際機関と国際条約 International Narcotics Control Board (INCB)(国際麻薬統制委員会) Single Convention on Narcotic Drugs, 1961 千九百六十一年の麻薬に関する単一条約(日本…

古代ギリシア哲学における心物問題

近代科学の基本的な考えは、唯物論(materialism)である。脳という物質だけがあり、その情報処理のプロセスとして、意識や感情が発生すると考える。これは、あまりにも当たり前なので、唯物論という言葉自体が、認識論では、あまり使われない。(この語は、…

西洋近代における心物問題

素朴実在論とアニミズム デカルトの二元論 唯物論と近代科学 素朴実在論とアニミズム 目の前に見えている世界は実在する、それは物理的世界であり、そんなことは当たり前で、それ以上のことは考えない、というのが、素朴実在論(naive realism)である。では…