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CE2019/02/25 JST 作成
CE2021/09/14 JST 最終更新
蛭川立

日本の精神展開薬研究史

この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、その正確性は保証されていません[*1]。検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。この記事の内容の信頼性について検証が求められています。確認のための文献や情報源をご存じの方はご提示ください。

この記事は特定の薬剤や検査・治療法の効果を保証しません。個々の薬剤や検査・治療法の使用、処方、売買等については、当該国または地域の法令に従ってください。

武田薬品の麦角アルカロイド研究

東京帝國大學農芸化学科を卒業した阿部又三が武田長兵衛商店研究部(後の武田薬品研究所)に就職し、麦角アルカロイドの研究を始めた[*2]のが1938年である。

同年、スイスのサンド(現・ノバルティス)社ではアルベルト・ホフマンLSD-25の合成に成功ていた。しかし、LSD-25は片頭痛治療薬や陣痛促進剤の一環として開発されたものであって、その向精神作用が知られることなく、世界は戦争に巻き込まれていった。

阿部の研究テーマは上司の勧めだったらしいから、武田研究所はこれ以前から麦角アルカロイドに関心を持っていたらしい。「産めよ増やせよ」という時代背景があった、と回想されている。

武田薬品の麦角研究は世界的にみても先進的で、逆に欧米での研究を刺激したとも評価されており[*3]、阿部又三とアルベルト・ホフマンの間には私信のやり取りもあった[*4][*5]

山城祥二こと大橋力も阿部又三とともに麦角アルカロイドの生合成経路の研究を行っている[*6]。大橋は1975年に博士論文「麦角アルカロイドの生合成に関する研究」[*7]を発表した。

サイケデリックス研究へ

合成から5年後、1943年4月16日ににセレンディピティが起こる。ホフマンが偶然LSDを摂取してしまい、その向精神作用を発見した。その後、武田研究所でも麦角アルカロイドの向精神作用の研究が行われた[*8]

1950年代後半になって、ザンド社からLSDのサンプルが京都大学医学部に送られ、その後、加藤清らが精神医学的な研究を深めていった[*9]のだが、加藤はそれ以前にからメスカリンを独自に合成して実験を進めていた。ただし、合成した物質がメスカリンかどうかわからないまま、ボランティアに飲ませて「官能検査」をしていたという[*10]。戦中戦後の混乱期での出来事である。

1957年には、武田薬品薬用植物園のヤマハギに含まれるDMTが子宮収縮作用を持つことが発見される[*11]が、この時点ではDMTの向精神作用については触れられていない。

筆頭著者の後藤實は戦後の日本で広く漢方薬の研究につとめ、また後進を育成した人物である。



記述の自己評価 ★★★☆☆

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CE2021/07/23 JST 作成
CE2022/04/16 JST 最終更新
蛭川立

*1:免責事項にかんしては「Wikipedia:医療に関する免責事項」に準じています。

*2:阿部又三 (1987).「麦角菌研究の思い出」『日本農芸化学会誌臨時増刊号』61, 28-30.

*3:日本学士院賞 (1971).「農学博士阿部又三君の『麦角菌による麦角アルカロイド類の生産に関する研究』に対する授賞審査要旨

*4:大和谷三郎・阿部又三 (1959).「麦角菌に関する研究(第30報)Elymoclavineといわゆるペプタイド型麦角アルカロイドとの化学的関連性」『日本農芸化学会誌』33(12), 1036-1039.

*5:阿部又三・大和谷三郎・山野藤吾・楠本貢 (1959).「麦角菌に関する研究(第31報)ハマニンニク型麦角菌の培養からPenniclavineおよび1種の新水溶性アルカロイドTriseclavineの分離」『日本農芸化学会誌』33(12), 1039-1043.

*6:大橋力・青木俊三・阿部又三 (1970).「菌類によるアルカロイドおよび関連物質の生産(第5報)代表的な麦角アルカロイド間の生成上の関係について」『日本農芸化学会誌』44(11), 527-531.

*7:大橋力 (1975).「麦角アルカロイドの生合成に関する研究

*8:油井亨・竹尾雄児 (1962).「Clavine系麦角アルカロイドの薬理学的研究(Ⅰ)諸種動物における一般症状とこれに及ぼす2, 3中枢抑制剤の影響」『日本薬理学雑誌』58(4), 386-393.

*9:塚崎直樹 (2016).「加藤清とトランスパーソナル精神医学」『トランスパーソナル心理学/精神医学』15(1), 14-22.

*10:加藤清・上野圭一 (1998).『この世とあの世の風通し―精神科医 加藤清は語る―』春秋社, 62-63.

*11:後藤實・野口友昭・渡邊武 (1958). 「有用天然物成分の研究 第17報 植物中の子宮収縮成分の研究 その 2 ヤマハギ中の子宮収縮成分について」『YAKUGAKU ZASSHI』78, 464-467.

【資料】青木保『タイの僧院にて』

人類学者である青木保氏じしんがタイで出家した「参与観察」の記録『タイの僧院にて』。

還俗したときの経文がパーリ語で記されている。私がかつてチェンマイで出家・還俗したときには(→「タイでの一時出家」を参照のこと)、パーリ語タイ語訳とを交互に唱えていったと記憶している。

アチャ マヤー アパチャペキトゥァ ヨ ビンダバート パブリトー
ソー ネーワ ダワーヤ ナ マダーヤ ナ
マムダナーヤ ナ ヴ ィブーサナーヤ
ヤーワデーワ イマサ カーッサーヤ ティティヤ
ヤーパナーヤ ヴィヒムスパラティヤ ブラマチャリヤーヌガハーヤ

これまでどのようなバアツが私に用いられたことがあるにせよ、今日、それはもう想い起すことはなく、ただ

それが遊びのためでなく、酔うためのものでなく、太るためのものでなく、美化するためのものでなく

ひとえにこの身体を生き続けさせ、養うためだけのもの、身体を傷つけず、知の向上を助けるためのものである、と

イティ プラーニャンチャ ウェーダナム パティハムカーミ ナーワンチャ ウェーダナムナ ウパデサーミ
ヤートラ チャ バビーサティ アナワチター
チャ パスヴィハーロ チャーティ

私は古い気持(空腹の)を捨て、決して(満腹したいという)新しい気持を起さないようにしよう

かくして私には肉体の起す災いから逃れ、安らかに生きることができる

「バアツ」とは僧侶が俗人から受け取る「布施」のことであり、タイの貨幣である「バーツ」ではない。僧侶が金銭に触れることは戒律によって禁じられている。

中国仏教に由来する食事五観と比較すると、食欲そのものが肉体から起こる災いだと捉えられているところがより原理主義的である。また太ることが美しいことだというのはインド的身体観のゆえにだろうか。

「ブラフマ・チャリヤ」は直訳すれば「正しい行い」という語義だが、通常は性的禁欲を意味する。私がチェンマイの僧院にいたときには、どうして食前に性的禁欲を朗唱するのだろうかと不可解に思ったが、青木は「知の向上」と訳している。出家者は知の向上のために食べるのである。

シッカム パッチャカーミ
ギーヒィティ マム タレタ

私はここに修行を断念します

どうか俗人としての私をお受け取り下さい

近代タイ仏教において、出家とは俗世を永遠に放棄することではなく、還俗とは修行を永遠に放棄することでもない。半僧半俗でもなく非僧非俗でもなく、僧俗自在とでもいうべきか。



青木保『タイの僧院にて』(中公文庫)328-331.

  • CE2022/04/23 JST 作成
  • CE2022/04/24 JST 最終更新

蛭川立

「不思議現象の心理学」講義計画

第1回 脳の中の幽霊(全体の展望)
第2回 心霊研究から心理学へ:科学史的背景
第3回 心理学と統計学
第4回 因果性・共時性・テレパシー
第5回 ヒーリングとプラセボ(偽薬)効果
第6回 錯覚と認知バイアス
第7回 陰謀論と終末論
第8回 精神疾患と幻覚・妄想
第9回 知覚と透視
第10回 運動と念力
第11回 記憶・予知・自由意志
第12回 心物問題・心身問題と意識科学
第13回 現代物理学の世界観
第14回 科学・未科学疑似科学(全体のまとめ)

「人類学B」講義関連資料リンク

第1回 宇宙・生命・人間(全体の展望)
第2回 遺伝と進化
第3回 霊長類の進化・人類の進化
第4回 現生人類の拡散
遺伝子からみた日本列島民の系統
第5回 有性生殖と配偶システム(中国・雲南
走婚ー雲南モソ人の別居通い婚ー
第6回 交換としての婚姻(日本,オーストラリア先住民)
第7回 呪物としての貨幣(ミクロネシア
第8回 記号・時間・暦法(中米先住民,ヨーロッパ)
第9回 象徴的分類(インドネシア漢民族
第10回 芸術の起源(ヨーロッパ,縄文文化
縄文文化の超自然観
第11回 原始美術と現代美術(オーストラリア先住民)
第12回 憑依から舞踊へ(インドネシア
第13回 数学・音楽・天文学(古代〜近代ヨーロッパ)
第14回 近代科学と民族科学(全体のまとめ)



記述の自己評価 ★★★☆☆

  • CE2022/04/08 JST 作成
  • CE2022/04/08 JST 最終更新

蛭川立

「身体と意識」講義計画

第1回 胡蝶の夢と水槽の脳(全体の展望)
第2回 神経系の構造と機能
第3回 脳の状態と意識の状態
第4回 睡眠と夢
睡眠と覚醒の概日周期
第5回 明晰夢と睡眠麻痺:夢と現実の狭間
第6回 向精神薬神経科
第7回 精神展開(サイケデリック)体験
エンタクトゲン(共感薬)
大麻の向精神作用と精神文化
第8回 芸術・宗教と精神疾患
第9回 西洋思想における身体と精神
第10回 東洋思想における身体と精神
第11回 輪廻転生と偽記憶
第12回 臨死体験
第13回 瞑想・ヨーガ・禅
タイでの一時出家
第14回 リアリティとバーチャルリアリティ(全体のまとめ)

CE20220406 JST 作成

「人類学A」講義計画

第1回 未開と文明の狭間(全体の展望)
「歴史と弁証法」
第2回 脳の構造と機能
第3回 神経系と脳の進化
第4回 遺伝子と神経伝達物質
第5回 遺伝子と文化の共進化
第6回 シャーマニズムの神経薬理学(中南米先住民)
第7回 向精神薬の民族科学(インド,太平洋諸島)
大麻の起源と伝播
インドの大麻文化
第8回 〈正常〉と〈異常〉(沖縄・古代日本,モンゴル)
第9回 精神疾患神経科学的研究
第10回 民族芸術の深層心理学縄文文化・アマゾン先住民)
第11回 神話の論理(日本,太平洋諸島,南米先住民)
神話の構造(オーストロネシアと古代日本)
第12回 大脳化と他界観の起源(化石人類,インド,チベット,中国・雲南
送魂ー雲南ナシ族・モソ人の葬送儀礼
第13回 瞑想の文化と生理心理学(インド・タイ)
タイでの一時出家
第14回 文化相対主義と意識状態相対主義(全体のまとめ)