承前。先週はスプーン曲げ騒動に巻き込まれた清田さんのお話をしましたが、森達也さんの『職業欄はエスパー』のDVDですが、探していたものが出てきましたので、清田さんがスプーンを折る部分をすこしだけお目にかけます。
それから、超能力騒動ということからいったん離れて、あらためて、近代的心理学の歴史をお話していきます。
人間の心や魂を扱う学問としての心理学の歴史を辿っていくと、心霊研究や超心理学というオカルト的な分野と区別されていなかったものが、じょじょに分化し確立していったという歴史があります。それは、近代ヨーロッパで精神的な支柱であったキリスト教と新しく発展してきた自然科学の折り合いをつけなければならなかったという地域的な歴史でもあります。
それは、西洋文化圏の外にあった日本ではまたちがった文脈になります。日本では、仏教や神道のような宗教はあったのですが、それが学術的な権威とは結びついていませんでした。しかし、そのゆえに、日本では宗教と科学の葛藤ということも起こらなかったのです。仏教という宗教が特殊な宗教で、超自然的な存在を信じるというものではなく、むしろ自己の心を客観的に観察するという色彩が強かったという理由でもあります。ですから、むしろ日本でのほうが、心の科学は研究しやすかったという有利な事情もあります。