この記事は常に書きかけです。
西暦2023年度に開講される人類学Aの公式シラバスについては「『人類学A』西暦2023年度 概要」を参照されたい。重複するようだが、こちらのページでは毎週のじっさいの講義計画をリアルタイムで更新していく。授業はライブであり、シラバスどおりには進まない。受講生からのフィードバックや時事的な話題なども考慮しながら進めていく。
文理の学際領域としての人類学
学部の1・2年生向けの講義は「人類学A」と「人類学B」である。春学期の「人類学A」と秋学期の「人類学B」は独立の科目だが、人類学は文理融合の総合科学であるという主張は「人類学の科学史的位置づけ」に書いたとおりだが、二つの授業は、いずれも自然人類学の話から始めて、社会人類学・文化人類学へと発展させていくという構造は続けたい。
「人類学A」は自然科学的な基礎知識として、脳神経科学を概観し、神経伝達物質、精神活性物質、そして芸術や宗教などの精神文化を論じたい。
講義概要
精神展開物質(いわゆるサイケデリックス)と精神文化について世界各地で現地調査を続けてきたので、画像や動画も交えながら、この話題を中心に講義を進めたい。
精神活性物質について知るためには、脳や神経の構造や機能についての基礎知識が必要となる。講義の進めかたとしては、まず先に自然科学的な基礎から始めたい。自然人類学の視点からは、人類進化と脳の進化、そして物質文化と精神文化の先史考古学的研究から話を進めていきたい。
また精神活性物質の分類についての知識も必要である。とくに精神刺激薬と精神展開薬の違いについて、南米のアンデスとアマゾンの文化も対比させながら論じたい。
精神文化には、芸術と宗教という二つの側面があるが、近代化されていない社会では、芸術と宗教は生活の中で未分化であった。プリミティヴな宗教のありかたとして、日本の古代と沖縄を例にとりながら議論する。また、いわゆる未開宗教と現代の国際社会のかかわりについて、モンゴルを例にとりながら議論する。(ただし、この人類学Aの授業では、現代の民族問題や国際政治については深く掘り下げない。)
また、プリミティブな芸術のありかたとしては、縄文文化やオーストラリアの先住民美術を例にとりながら、と現代美術との関係について議論したい。
全体的には、化石人類の精神文化から現代文化へという時間軸を追っていきたいが、テーマによって地域が行ったり来たりするとわかりにくくなるので、できるだけ講義は地域別に進める予定である。なお、講義で扱う地域については、基本的に蛭川じしんが調査に行ったことがある場所であり、また先史時代の文化については、遺跡を訪れたときの話を基本に扱う。
進行計画
04/06 | (学習指導期間) |
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04/13 | 人類学とは何か |
「人類学の科学史的位置づけ」 「暦法ーコスモロジーと文化相対主義ー」 |
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04/20 | 脳の構造と機能 |
「神経系の構造と機能」 | |
「神経伝達物質と精神活性物質」 | |
「精神活性物質の民俗分類」 | |
04/27 | 脳の進化と精神文化 |
「神経系の系統発生と個体発生」 | |
「化石人類の芸術文化」 | |
05/04 | (休講) |
05/11 | オーストラリア |
「オーストラリア先住民の親族構造」 | |
「オーストラリア先住民美術と現代美術」 | |
「精神疾患と創造性」 | |
05/18 | 中米 |
「世界の精神文化と精神展開薬」 | |
「中米先住民の精神文化と精神展開薬」 | |
05/25 | アンデス・アマゾン |
「アンデス先住民の薬草文化」 | |
「アマゾン先住民の精神文化と薬草」 | |
「文化としての勤勉」 | |
「生業と労働時間」 | |
06/01 | ブラジル |
「ブラジルの多文化主義とシンクレティズム」 | |
06/08 | 北インド・ネパール |
「インドの精神文化とアサ(大麻)」 | |
「ヨーガと瞑想」 | |
06/15 | タイ |
「タイでの一時出家」 | |
06/22 | 日本列島 |
「日本列島の歴史年表」 | |
「縄文文化と美術」 | |
06/29 | 「日本列島の精神文化史」 |
07/06 | 「沖縄のシャーマニズムと世界観」 |
07/13 | モンゴル |
「モンゴルー宗教文化の復活ー」 | |
07/20 | 現代世界の中の未開文化 |
「近代社会における宗教と芸術の世俗化」 | |
「統制と禁制の社会史」 | |
07/27 | (定期試験) |
なお、人類学では、世界各地の文化が薬草を用いてきたサイケデリック体験の神経科学的な機序や体験内容の詳細については、三年生・四年生向けの「身体と意識」のほうで論じたい。