向精神薬の分類については、前回の授業(→「人類学A」2021/04/27 講義ノート - 蛭川研究室)で扱ったが、あらためて、また、あらためて、整理したい。
向精神薬の分類
向精神薬の分類を知っておくのは大事なのだが、社会文化的な常識とは異なるところが多いので、わかりにくい。しかし、そうだからこそ、「正しい」知識を身につけておくのは、一般教養である。
世界的な基準としては、ICD-10(国際疾病分類)による9種類の分類がある。
F10 アルコール
F11 アヘン類
F12 大麻類
F13 鎮静薬
F14 コカイン
F15 カフェインを含むその他の精神刺激薬
F16 幻覚薬
F17 タバコ
F18 揮発性溶剤
F19 多剤使用及びその他の精神作用物質
主な物質を例にあげて機能別に分類すると、以下のようになる。
- 興奮剤
- 抑制剤
これでもまだやこしいが、
というのが大枠である。
また、わかりにくさの理由には、たとえば以下の二つがあるだろう。
精神展開薬は、宗教儀礼でしか用いられない。しかも、その多くが中南米の先住民社会で使用されており、アジアやヨーロッパの文化では使われない。しかしながら、この精神展開薬が、向精神薬の中でももっとも神秘的であり、精神と物質の関係を考える上でも、とりわけ科学的、哲学的な重要性を持つ。
アヤワスカ
とくに私が注目してきたのが、南米、アマゾンの先住民族が使用してきた薬草茶、アヤワスカ茶である。アヤワスカ茶の有効成分は、精神展開薬であるDMTである。
アヤワスカ茶については、私じしんがとても意味深い体験をしたこともあり、思い入れがある。たくさんの場所に、たくさんの文章を書いてきた。(じょじょに統合しながら、まとめていきたい。)
アマゾンの先住民族におけるアヤワスカ茶の使用
以下の二つの記事に、私じしんの、アマゾンの先住民社会での調査と体験談を書いた。
- 「アマゾン先住民シピボのシャーマニズム」
- 「アヤワスカの宴(プロローグ+エピローグ)」(彼岸の時間)
ブラジルで広がったアヤワスカ系宗教運動
それから、ブラジルに広まったアヤワスカ茶系宗教運動について、これも体験談を交えて書いた。
- 「アヤワスカの時代」(彼岸の時間)
- 「聖ダイミの恍惚」(彼岸の時間)
- 「ブラジルからの逆襲」
- 「ブラジルにおけるアヤワスケイロ宗教運動の展開」
- 「世界を夢見ているのは誰か」
「京都アヤワスカ茶会裁判」
そして昨年、日本でも身近な植物であるアカシアやミモザのお茶をうつ病の治療薬として販売していたことが事件になり、裁判になった。これは非常に希有な事件であり注目しているのだが、詳しくは以下の記事に書いた。
これらのリンク先の記事だけでも三回分ぐらいの文量になる。今週は、まず向精神薬の分類を復習し、精神展開薬を含む薬草の代表的なものとして「アヤワスカ」を扱う。今週は、アマゾン川上流域の先住民族の文化的伝統の中での使用について扱い、ブラジルでの広がりなどは、来週、再来週に扱う。
また、シラバスでは先に扱うことになっていた、認知能力とパーソナリティの遺伝と小進化については、その後から扱う。
記述の自己評価 ★★★☆☆
CE2021/05/09 JST 作成
CE2021/05/11 JST 最終更新
蛭川立