メジャー・サイケデリックスの多くは、モノアミン神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど)と同様の構造を持っており、単純にこれらの物質と同じ働きをすることで精神作用を発現しているのは明らかである。とくにDMTは多種の植物の体内でも生合成されるが、動物の脳内でも生合成され神経伝達物質として機能している可能性が高い。
インドールアミン
インドールアミン系の神経伝達物質・精神展開薬は、トリプトファンから生合成される。
トリプトファンからセロトニン(5-HT)が生合成され、そこからブフォテニン(5-HO-DMT)とメラトニンが合成される。また、トリプトファンからトリプタミンが合成され、そこからジメチルトリプタミン(DMT)が合成される。
ミカン属などの植物の体内では、DMT(ジメチルトリプタミン)からトリメチルトリプタミンが合成される。
また、シビレタケ属などの菌類の体内では、DMTからシロシン、シロシビンが生合成される。(シロシビンは人体内に摂取されると分解されてシロシンに戻る。)
LSDは麦角アルカロイドから人工的に合成された物質だが、中米先住民が使用してきたアサガオに類似の物質LSA(リセルグ酸)が発見された。
イボガインの分子構造は、やや複雑だが、やはりインドール核がある。
これらのインドールアミン系精神展開薬は、セロトニン受容体(主に5-HT2A)のアゴニストとして作用し、そのはたらきを増強すると考えられている。(シナプスにおける受容体については「神経伝達物質と向精神薬」を参照のこと。)
いわゆる「神経症圏」の疾患、つまり不安、うつ、強迫などに有効とされるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)と同様、インドール系の精神展開薬は、少量ではSSRIと同様の作用を示すが、ある程度以上では精神展開作用を示す。
フェネチルアミン誘導体
モノアミン系神経伝達物質のもうひとつのグループが、カテコールアミン神経伝達物質であり、これらはチロシンから生合成される。
メスカリンはメジャー・サイケデリックスであり、インドールアミン系サイケデリックスとよく似た精神作用を示すが、ドーパミンやノルアドレナリンと構造が似ている。
やはり同様の分子構造を持つMDMAは合成物質だが、精神刺激薬と精神展開薬の中間的な、独特の共感作用を示すため、エンタクトゲン(共感薬)(→「共感薬(エンタクトゲン)」を参照のこと)として、サイケデリックスとは別種の物質群として分類することもある。
このことは、精神展開薬が単純にセロトニン受容体のアゴニストとしてセロトニン系の神経系を活性化するだけではなく、より複雑な作用機序を持つことを示唆している。