睡眠と覚醒の概日周期

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レム睡眠とノンレム睡眠

ヒトの脳は24〜25時間周期で睡眠と覚醒を繰り返している。

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睡眠・覚醒リズムとホルモンの変動[*2]

睡眠の部分を拡大してみると、以下のようになる。

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睡眠時の脳波をグラフ化したヒプノグラム(hypnogram)[*3]

睡眠時にはレム睡眠(Rapid Eye Movement sleep)とノンレム睡眠(Non-REM sleep)が周期的に繰り返される。「REM」とは「Rapid Eye Movement: 急速眼球運動」のことである。

通常、入眠時はまず深いノンレム睡眠に入り、徐々に浅くなりながら、約90分ごとにレム睡眠レム睡眠を繰り返し、最後はレム睡眠から覚醒する。目ざめたときに覚えている夢は、この覚醒直前のレム睡眠の体験である。じっさいには一晩に二個以上の夢を見ているのだが、それは思い出せないことが多い。夢などまったく見ないという人もいるが、それは見ても忘れているだけである。レム睡眠のときに無理に起こせば、その時点での夢を想起できる。

脳波をとるというほどのことをしなくても、スマートフォンのアプリでもおおよそのヒプノグラムを計測できる。(→「スマートフォンの睡眠記録アプリ」)

この睡眠と覚醒のサイクルを概日リズム(サーカディアンリズム: circadian rhythm)という。「circa」というのはラテン語で「およそ」という意味。概日リズムには、遺伝的な個体差があるのだが、一般に24時間よりも長い。完全な暗黒状態で生活する実験を行うと、睡眠のサイクルはおよそ25時間になるということが知られている。

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蛭川が体調を崩し睡眠相後退が悪化したころ、2017年4月の睡眠日誌[*4]

概日リズム睡眠障害のうち、睡眠時間が後退していくものを睡眠相後退症候群というが、これは、人工的な文明環境で暮らしている場合、誰にでも起こりうる現象である。

なぜ夢を見るのか?

睡眠と夢の意味については、精神分析学など、さまざまな議論があるが、夢見の機能について、ひとつの有力な仮説は、学習である。起きているときに経験したことを眠りの中で反芻することで記憶を整理し、長期記憶へと定着させているという説がある。じっさい、睡眠時間は年齢によっても変化する。胎児はすべてレム睡眠の状態にあり、睡眠時間は加齢とともに減っていく。これは、学習しなければならない情報量が減っていくからだと言われている。(睡眠と夢の発生について、詳しくは「睡眠の個体発生と系統発生」を参照のこと。)

同調因子

脳が24時間以上のサイクルで活動しているのに、なぜ24時間周期に補正されるのだろうか。光と、その他の社会的な活動が同調因子(Zeitgeber[*5])として機能している。

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光はメラトニンの分泌を抑制する[*6]

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メラトニンの合成と分解[*7]

眼球の網膜が光を受け取ると、視神経の興奮に変換されて脳に送られる。視神経からの興奮は脳の後頭葉で視覚として処理されるだけでなく、松果体におけるメラトニンの合成も阻害する。つまり、睡眠を阻害する。

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トリプトファンからセロトニンメラトニン、NMT、DMTが合成される過程。内因性DMTはインドールアミンN-メチル基転移酵素(indolethylamine-N-methyltransferase (INMT))によって合成され、モノアミン酸化酵素(MAO)によってすみやかに分解されるため、体内の内因性DMT量はINMTの合成量に依存する[*8][*9]

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セロトニンメラトニンの日内変動[*10]

食品中に含まれるアミノ酸であるトリプトファンからセロトニンが合成され、さらにメラトニンが合成されるが、光はメラトニンの合成を阻害する。

夢という「幻覚」

トリプトファンセロトニンを経てメラトニンになるが、いっぽう、トリプタミン、NMT(モノメチルトリプタミン)を経てDMT(ジメチルトリプタミン)になる。

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尿に排出される内因性NMTとDMTの日内変動[*11]

NMTは昼間に多く作られ、夜の尿に排泄される。NMTから合成されるDMTは夜間に多く作られ、朝の尿に排泄される。

DMTは「幻覚剤」であり、麻薬および向精神薬取締法でその所持が禁じられている[*12]。しかし、脳内では毎晩、脳内幻覚剤とでもいうべきDMTが合成されている。脳内DMTが「夢」という幻覚を見せている物質なのかもしれないが、これはまだ仮説である。人間の脳では、いつ、どこでDMTが合成されているのか、まだ詳しいことはわかっていない。



記述の自己評価 ★★★☆☆
(大まかな概論であり、医学的な正確さは不十分である。)
CE2017/02/01 JST 作成
CE2021/09/30 JST 最終更新
蛭川立

*1:免責事項にかんしては「Wikipedia:医療に関する免責事項」に準じています。

*2:吉田集而(編)(2001).『眠りの文化論』平凡社, 197より孫引き

*3:古賀良彦(監修)「睡眠と体のリズム」『良い睡眠で快適生活』(2021/10/01 JST 最終閲覧)

*4:睡眠相後退症候群」に、蛭川による「当事者研究」の体験談を書いたが、2017年4月には概日リズムが24時間10分であった。

*5:ツァイトゲーバーとカタカナ書きすることもある。ドイツ語で「時間を与える」という意味。

*6:上山菜穗 (2018).「睡眠の質改善に、”メラトニン”」『上山院長ブログ』(2021/10/01 JST 最終閲覧)

*7:K. Jane Hassell, Russel J. Reiter, and Nicola J. Robertson (2013). Melatonin and its role in neurodevelopment during the perinatal period: A review. Fetal and Maternal Medicine Review, 24(02), 76-107.

*8:Jon G. Dean (2018). Indolethylamine-N-methyltransferase Polymorphisms: Genetic and Biochemical Approaches for Study of Endogenous N,N,-dimethyltryptamine. Frontiers in Neuroscience, doi:10.3389 / fnins.2018.00232

*9:Jon G. Dean, Tiecheng Liu, Sean Huff, Ben Sheler, Steven A. Barker, Rick J. Strassman, Michael M. Wang & Jimo Borjigin (2019). Biosynthesis and Extracellular Concentrations of N,N-dimethyltryptamine (DMT) in Mammalian Brain. Scientific Reports, 9.(孫引き)

*10:つむぐ健康通信 (2019).「昼のセロトニン・夜のメラトニンを高めよう ― 神経系を整え、健やかな毎日のために」『つむぐ指圧治療室』(2021/10/01 JST 最終閲覧)

*11:Michael C. H. Oon, Robin M. Murray, Richard Rodnight, Marion P. Murphy & James L. T. Birley (1977). Factors affecting the urinary excretion of endogenously formed dimethyltryptamine in normal human subjects. Psychopharmacology, 54, 171–175.

*12:動植物の体液に含まれるDMTを所持することが違法かどうかは2020年に京都地裁で始まった「京都アヤワスカ茶会裁判」で争われている。