PK(Psychokinesis:念力)は、「スプーン曲げ」や「念写」のような「マクロPK(macro-PK)」と、電子や原子核など素粒子レベルの現象を引き起こす「ミクロPK(micro-PK)」に分けられる。
乱数発生器実験
PK(Psychokinesis:念力)にかんしては、1930年代のラインの時代のサイコロ投げに代わって、放射性元素の崩壊やダイオードのトンネル電流などの物理乱数発生器(REG: Random Event Generator)を使ったミクロPK(micro-PK)の実験が行われるようになった[*1]。
ダイオードの壁を「壁抜け」するトンネル電子の数や、壁に2つの通り道をあけておいて、光子がどちらを通過したか、などの、量子論的な確率現象を、心の力によって偏らせることができる、という実験である[*2]。
コインを投げて、表が出るか、裏が出るか、その確率は50%である。コインを投げるときに「表が出るように」と念じたときに、表が出る確率が51%に増えるか、60%に増えるか、そういう実験を、コンピュータで行うようになってきた、というわけである。
ダイオードのトンネル電流を使った乱数発生器実験の結果[*3]。100000回の試行のうち55000回ヒットしているとすると、ヒット率は55%だということになる。
成功した実験だけが公表されているのではないか(公表バイアス:publishing bias)、失敗した実験が公表されていないのではないか(お蔵入り問題:drawer preblem)という問題もあるが、下の図のように、メタ分析の結果は、効果サイズの最頻値は0だが、平均値はプラスの方向に偏っており、これは、2610回の失敗実験がお蔵入りしていなければ説明できない。
乱数発生器実験のメタ分析結果。縦軸は試行回数(対数)、横軸は効果サイズ[*4]
詳細については、日本語でも読めるすぐれた概説がある。
PKは量子力学で説明できるのか?
ミクロPKの実験結果がいかに奇妙なものであるかについては、量子力学における観測問題にかんする知識がなければ理解できないが、詳細は稿を改めて論じたい(→「物理学は『超常現象』をどのように扱いうるか?」)。
(私的研究史)
物理乱数発生器を、人間が集団的に興奮している場所や宗教儀礼の場などに持ち込むと、その興奮の度合いに応じて値が偏るという研究がある。これについては著者である蛭川じしんが研究に取り組んでいたことがあるが、それは錯綜したストーリーであり、大量の研究成果をまだうまくまとめきれていない。当座は下記の断片的リンクを参照されたい。
- 2000年
- 2003年
- 2004年
ブラジル・パラナ州での調査(→「世界を夢見ているのは誰か」(ブラジルで調査をしたときのことを書いたエッセイ)ブラジルの宗教文化概説、研究結果)
- 2013年
ロンドン大学ゴールドスミス校心理学科で特異心理学を学ぶ
- 2014年
参考サイト
石川幹人「地球意識プロジェクト」『超心理学講座―「超能力の科学」の歴史と現状―』
CE2019/06/14 JST 作成
CE2023/05/29 JST 最終更新
蛭川立
*2:前掲書, 192.甲南大学 (2004).「1-13. ツェナーダイオードのトンネル電流」に、わかりやすい解説がある。
*3:Jahn, R. G. & Dunne, B. J. (2009). Margins of Reality: The Role of Consciousness in the Physical World. ICRL Press, 110.
『実在の境界領域』というタイトルで和訳あり。
ジャン, R. G. & ダン, B. J. 石井礼子・笠原敏雄(訳)(1992).『実在の境界領域―物質界における意識の役割―』技術出版.
*4:Radin, D. (2006). Entangled Minds: Extrasensory Experiences in a Quantum Reality. Paraview Pocket Books, 157.