蛭川研究室

蛭川立の研究と明治大学での講義・ゼミの関連情報

「不思議現象の心理学」2024/04/29 講義メモ

先週の講義では話がだいぶ脱線してしまいましたが、ヨーロッパの思想を理解するためには、ヨーロッパ化されたキリスト教の思想が背景にあるということを知る必要があること、日本のような非西洋圏では、それが理解しにくいこと、ということを、前提としてお話しておきたかったわけです。

『心霊研究』から『超心理学』へ」というエッセイですが、十年前にロンドン大学ゴールドスミスカレッジで心理学を学んでいたころに書いたものです。長い文章ですが、かいつまんでお話をします。霊魂の永遠性という宗教的な観念を近代科学と折衷させるために、とくにイギリスで、心霊主義という思想と心霊研究という研究分野が成立しました。

心霊研究は、肉体の死後も霊魂は存続するのか?という素朴な問いかけを「科学的に」研究する分野だったのですが、やがて、心の働きは物質的な肉体を超えてはたらくのかという「超心理学」という分野に発展します。詳しくは「超心理学という研究プログラム」に書きました。

なお「超」心理学という言葉はちょっと変な感じがしますが、これは英語の、もともとはギリシア語ですが「para」という言葉を日本語に訳すときに「超」という漢字に置き換えたという経緯があります。そのニュアンスについては「心理学における「異常」と「超常」」に解説記事を書きました。

講義が予定よりも遅れていますが、次回からは、具体的に超心理学がどんな研究をしてきたのか、それはふつうの心理学と基本的には違わないということをお話していきます。