蛭川研究室

蛭川立の研究と明治大学での講義・ゼミの関連情報

【講義ノート】「人類学B」2020/12/07

人類学Bの講義ノートです。今週は(一年前の授業と同じで)ミクロネシアから、インドネシアへと南下します。

先週までの授業では、オーストロネシア語族というグループの、ミクロネシアのヤップ島の文化を紹介しました。

今回の講義では、同じオーストロネシアでも、ヘスペロネシアのバリ島の文化を取り上げます。バリ島は、国でいうと、インドネシア共和国のバリ州なのですが、ヘスペロネシアというのは、国家の名前ではなく、言語人類学的な民族集団の名前です。(→「ヘスペロネシア」)

オーストロネシアの中でも、ヘスペロネシアは、基層文化である根栽農耕社会に稲作が伝わって、より社会の階層化が進んだという点では、縄文時代の終わりに稲作が伝わったことをきっかけにして、社会の階層化が進んだ日本の歴史とも並行しています。


バリ島(ポイントはギアニヤール県プリアタン村)

インドネシアというのは「インドの島々」という意味であり、もともとは、オランダ領東インドとして植民地支配を受けていた地域です。

オランダ植民地統治下でも、バリ島では、伝統文化は保護され、むしろ観光化され、伝統文化のある側面は観光化によってさらに発展してきました。バリ島民の文化については拙著『彼岸の時間』に動画を張り込んだ改訂版である「象徴としての世界 −バリ島民の儀礼と世界観− (改訂版)」をごらんください。明治大学のサーバー上にある「パフォーマンスとしての葬送ーバリ島民の世界観(1)」もごらんください、(右上のメニューから1〜3ページまで表示させることができます。)ただし、動画は形式が古く、うまく表示できないかもしれません。

バリ島民の宗教儀礼の典型的なものとしては、火葬儀礼があります。盛大な祭礼である火葬儀礼は、インドから伝わったヒンドゥー文化の死生観の表現であると同時に、いっしゅの「ポトラッチ」として、階層化された社会における富の再分配という機能を果たしています。詳しくは、上で紹介したリンク先の記事を読んでください。

火葬儀礼に該当する箇所は、「象徴としての世界 −バリ島民の儀礼と世界観− (改訂版)」の前半、「『最初の楽園』バリの誕生」から「海が象徴するもの」までと、「パフォーマンスとしての葬送ーバリ島民の世界観(1)」です。(2〜3は、また来週、です)

葬送儀礼だけではなく、バリ島民の世界観においては、「自然/文化」という象徴的な二元論が存在しています。抽象的な議論になりますが、それは、来週の仮想教室でお話しすることにします。



2019/12/02 JST 作成
2020/12/07 JST 最終更新
蛭川立