蛭川研究室

蛭川立の研究と明治大学での講義・ゼミの関連情報

WEBに数式・化学式を組み込む

HTMLに数式を組み込む標準的な手法はまだ確立されていない。Wikipediaなどでも数式の画像を貼り込んだりという現状が続いている。

以下の文章は、自分が作業をするために書いたリンク集が元になっている。読者にとっても役に立つだろうと思う。

LaTeXをはじめ、MathML、MathJaxなどの方法が並行して使われている。はてなブログでは、今のところいちばん実績がありそうなTeX形式が使える。はてながアカデミックなブログとして優れている特長でもある。

はてな記法Markdown記法

はてなブログでは、HTML記法以外に、はてな独自のはてな記法と、Markdown記法が選択できる。この記事はMarkdown記法で記述している。

数式

TeX形式の数式は、従来のはてな記法では「[tex:〜]」で組み込むことができた。Markdown記法では「$$〜$$」でテキスト内に組み込めるはずなのだが、試してみると、なぜか、うまくいかない。

他のはてなユーザーの試行錯誤の記録を調べてみると、Markdown記法でも、どうやら「はてな記法」と同様[tex:〜]で書いて、さらに前後をHTMLの<div>で囲むと、なんとか表示されるらしい。

この方法で、たとえば「x\left( t{2}\right) -x\left( t{1}\right) =\int ^{t{2}}{t_{1}}\upsilon \left( t\right) dt」を囲んで記述すると、以下のように、位置と速度の式が表示される(はずである)。


x\left( t_{2}\right) -x\left( t_{1}\right) =\int ^{t_{2}}_{t_{1}}\upsilon \left( t\right) dt

ディスプレイスタイル

Latexの数式は、スタイル指定ができる。

mathlandscape.com

何も書かないとデフォルトでテキストスタイルになる。縦長の数式も一行の高さに圧縮される。ディスプレイスタイルを指定すると、縦長の数式がそのままの比率で美しく表示される。これを使うと「x\left( t{2}\right) -x\left( t{1}\right) =\int ^{t{2}}{t_{1}}\upsilon \left( t\right) dt」が


\displaystyle x\left( t_{2}\right) -x\left( t_{1}\right) =\int ^{t_{2}}_{t_{1}}\upsilon \left( t\right) dt

のように表示される。

化学式

化学反応式

数式と同じように、化学式もTeXを使ってあらわすことができる。

光合成と酸素呼吸の対称性をあらわす化学式は「6CO{2}+12H{2}O\rightleftharpoons C{6}H{12}O{6}+6CO{2}+12H_{2}O」となり、これを組み込むと、


6CO_{2}+12H_{2}O\rightleftharpoons C_{6}H_{12}O_{6}+6CO_{2}+12H_{2}O

のように表示される。

構造式

しかし、構造式をTeXで表現するのは、MyTeXなど

http://web.archive.org/web/20090224162250/http://www.klavis.info/xym.html

いろいろ試みられてはいるが、扱いがややこしい。IUPACのように分子構造を一行で表せる記法があり、すでにWEB上で表現できる記法も確立されているので、単純な分子なら技術的には可能だろう。あるいは、ポリペプチドのように、アミノ酸を単位とした表現もできるはずである。

さしあたり、いまのところは、画像を貼り込むという原始的な方法がいちばん簡単なようだ。

役に立つツール

数式エディタ

HostMathは、WEB上で数式を打ち込むとリアルタイムでLaTeX形式に変換してくれる。

www.hostmath.com

手書き数式・数式画像をTeXに変換する

もともと数式は紙に手書きだったものだが、ブラウザの画面にマウスで数式を書くとTeX形式に変換してくれたり、テキストに埋め込まれている数式の画像をTeXに変換してくれるなど、便利なツールが開発されている。

yagokoro-lab.com

上に書いたような、位置と速度の間の関係式を、そのまま「x\left( t{2}\right) -x\left( t{1}\right) =\int ^{t{2}}{t_{1}}\upsilon \left( t\right) dt」と打ち込むのは、非常に見づらく、面倒なのだが、手書きで積分の式などを書くと、それが魔法のようにTeX形式になってしまうのだから、使わない手はない。

TeX形式の数式テンプレート

よく使う数式や公式のTeX表記については、数式集のサイトにリストアップされている文字列をコピー・ペーストして使うと便利である。たとえば『物理のかぎしっぽ』は教育的なコンテンツである。

hooktail.sub.jp

hooktail.org


HTMLから「はてなブログ」への紆余曲折

最初に作られたホームページのタイトル「仮想人類学博物館」
(ジャワ島で撮影した影絵芝居ワヤン・クリッ)

WWWとHTML

研究用の資料は、もともとHTMLをベースにしてWeb上にアップしてきた。最初に「ホームページ」を開設したときに使ったプロバイダは「bekkoame.ne.jp」である。1998年ごろのことだったが、その後、閉鎖した。

サーバーの移転履歴の途中は省略するが、明治大学のサーバー上に蛭川研究室の公式サイト[*1]を作ったのが2004年である。2017年には「はてなダイアリー」上にブログ版「蛭川研究室」を新設した。明治大学のサーバー上の「蛭川研究室」公式サイトの新規ページの追加は停止した。現在は、内容の修正と削除を進めている。

ブログへの移転

ホームページ開設の当初は、HTMLのタグを直接打ち込んでいたが、そのままタグを打ち込んだ経験は、HTMLの構造を知る上では勉強になった。

いくつかのHTMLエディタを使っていたが、Adobe製品を使っていた流れで、もっぱらDreamweaberを使うようになった。それでもHTMLは煩瑣である。ソースに戻すと、テキストがダグに埋もれてしまう。

そのうちに、ブログが普及するようになった。日記としての用途が一般的だったが、簡易版のWEBサイトとしても使える。

ハードウエア的には、携帯端末の普及により、WEBサイトをPC、タブレットスマホなど、異なる環境で見やすくデザインすることが必要になってきた。レスポンシブコーディングをすればいいのだが、当初、HTMLで個々に作るのは非常に面倒であった。これを自動的にやってくれるブログを使うほうが圧倒的に便利である。これが大きなきっかけになって、研究教育用の資料は、このブログのほうに移行させてきた。

なぜ「はてな」なのか

ブログには、日本だけでも、多数のサービスがある。その中でも「はてなダイアリー」を使うことを選んだのは、とくに下記の理由からである。

日記的なブログで注釈や数式が使われることは少ないので、どのブログを使っても大差はない。しかし、註釈や数式を使うとなると、2010年ごろであれば「はてなダイアリー」がいちばん良かった。とくに注釈機能をうまく使うと、学術論文なみのコンテンツが手軽に書ける。

今ではブログのサービスもいろいろ増えた。「はてなダイアリー」は閉鎖されたが、そのまま「はてなブログ」へと乗り換えた。この「蛭川研究室新館」を作ったのは、2018年5月である。

はてな記法」から「Markdown記法」へ

はてなダイアリー」から解体的に発展した「はてなブログ」では、はてな特有の「はてな記法」だけでなく、より汎用性の高い「Markdown記法」が使えるようになった。「はてなブログ」自体が「Markdown記法」のエディタになったともいえる。

このブログの記事も、古いものは「はてな記法」で書かれているが、2023年2月から、「Markdown記法」に切り替えつつある。

Markdown記法」も「はてな記法」も、「HTML」から煩瑣な改行記号などを省略し、簡素化した記法である。たとえて言うなら、HTMLが正確な文語体で、Makdownや「はてな記法」は、より簡略化された口語のようなものであり、あるいは、HTMLの方言だともいえる。どちらも似たようなものだが「はてな記法」のほうが、「はてな」の世界でしか通じない、かなり「訛りの強い」方言であるのに対し、同じ方言でもMarkdownのほうが、WordPressなど、他の広い世界で通じやすい。

Markdown記法」の主なタグについては、以下の記事にまとめられている。

notepm.jp

Markdown記法では、改行が半角のスペースで表されたり等々、欧語の入力環境に依拠していて使いにくいところもある。なお改行はTHMLで強引に<br>と書くと明示的に指定できる。

記法の曖昧さ

はてなブログでは「はてな記法」「Markdown記法」「HTML記法」の三種類のモードが使え、これらを同じページの中で混在させることもできる。そもそもがHTMLの方言なので、方言の文法は曖昧なのである。

脚注番号の自動生成

はてな記法」独自の画期的な特長として、註釈の番号が相対参照によって自動的に生成されるという機能があり、これはMarkdown記法に混ぜて使い続けている。「Markdown記法」でも註釈機能が使えるようになったが、註釈の番号はテキストの中に個々に書き込む必要があり、絶対参照である。記事を追加したり削除したりしたときに、番号が相対的に割り当てられることがないのは、かなり不便である。

表のデザイン

はてな記法」と「Markdown記法」の両方に共通した欠点として、テーブルのデザインが細かく指定できないという難点がある。たとえば、表の中で改行できないのは不便なのだが、<br>など、HTMLの改行記号を意図的に混ぜると、表の中で改行できることにも気づいた。

そもそも、<table>〜</table>と区切って、その間にベタにHTMLのコードを貼り込んでも、表は表示される。以下はその一例である。

はてな記法 Markdown記法
シンプル やや複雑
汎用性が低い 汎用性が高い

ソースを見ると、表の立体構造が直感的には把握しにくいが、特殊な構造を持つ表にかぎっては、Dreamweaverのような別のHTMLエディタで編集することはできる。

文書のフォーマットは標準化できるか?

一般に流布している文書のフォーマットとしては、PDFとWordが多い。PDFは画像だから文書ではない。Wordは文書ではあるが複雑すぎるし、Microsoftに依存している。

WWWの標準はHTMLだがソースは煩瑣である。HTMLにもとづいた標準記法の試みとしてはOpenDocumentがあるが、それほど普及しているわけではない。

metidx-gov.note.jp

行政文書をMarldown化しよう、という動きもあるようだが、Microsoft方式への依存から脱することは必要だろう。

この「蛭川研究室新館」についていえば、当座「はてな」で始めたものだから、その制約内でMarkdown方式で文書を編集していくことにしている。状況はまた数年ごとに変わっていくだろう。


記述の自己評価 ★★★☆☆ (つねに加筆修正中であり未完成の記事です。しかし、記事の後に追記したり、一部を切り取って別の記事にしたり、その結果内容が重複したり、遺伝情報のように動的に変動しつづけるのがハイパーテキストの特徴であり特長だとも考えています。)


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シヴァ・ラートリ

インド暦の大晦日、マハー・シヴァ・ラートリ(महाशिवरात्रि: Mahāśivarātri)は、西暦の2023年では、2月18日、おおよそ新月の夜である。
en.wikipedia.org
その次の満月がホーリーで、西暦2023年は、3月の7日から8日となる。こちらはお正月とでもいうべきか。
en.wikipedia.org

シヴァ・ラートリはインドのヴァラナシで、ホーリーはネパールのカトマンドゥで体験したことがある。

ヴァラナシのシヴァ・ラートリについては『風の旅人』にエッセイを書いたが、ほかの場所でも同じような文章を書いたので、重複している。

hirukawa.hateblo.jp
hirukawa.hateblo.jp

写真や動画も発掘して貼りなおし、ブログの記事にまとめなおしつつある。



暦法については人類学の講義でも触れているが、天体の運行や気温の変化などを基準に、時間を数学的に構成する文化であり、文化相対主義の好例でもある。和暦は日本の気候風土に合わせて作られたものであり、西暦には普遍的な利便性はない。

ヨーロッパでは冬至、つまり日照時間が減少から増加に転じるところが新年とされるが、東アジアや南アジアでは、気温が減少から増加に転じるところが新年とされてきた。これは、大陸の西岸と東岸の、緯度と気温の差異を反映している。

イスラーム暦を生んだ西アジアでは、太陽暦よりも太陰暦が優先される。これは、年間を通じて高温小雨で、季節の変化がはっきりしない砂漠の気候を反映している。砂漠では、昼と夜の気温の差のほうが、夏と冬の気温の差よりも大きいものである。



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  • CE2023/02/14 JST 作成
  • CE2023/02/18 JST 最終更新

蛭川立

「自殺からの解脱ー京都相思(アヤワスカ)茶会事件:第2報」

西暦2023年3月12日に行われた人文死生学研究会での発表要旨。

要旨

2019年7月に、希死念慮に悩まされていた京都の男子大学生が自己治療のためにDMTを含む相思樹(アカシア・コンフサ)の樹皮を茶にして服用した。大学生は主客合一の再帰的無限ループに陥り、隣で見ていた友人が救急車を呼んだ。大学生は救急車の中で無限の光と一体化し、抑うつ症状は消失した。彼は麻薬所持の疑いをかけられたが、未成年であったために不処分となった。

DMTやLSDなどのサイケデリックス(精神展開薬)は「自我の死」体験を引き起こすが、これによって自殺念慮が消失するという逆説的な作用があり、うつ病や依存症の治療薬としての研究が進められている。

2020年3月には、相思樹の樹皮を譲渡した青井硝子(筆名)が逮捕され、起訴された。京都地裁で行われた初公判で青井被告は自らの行いを菩薩行であるとして罪状を否認。証人として召喚された大学生は法廷で自らの体験をショーペンハウエルヴェーダーンタ哲学によって説明した。

京都地裁は2022年9月に青井被告に対し懲役3年、執行猶予5年の判決を言い渡した。青井被告は控訴し、裁判は2023年4月から再開される。

sites.google.com
人文死生学研究会HP

出来事の時系列

事件の背景

一連の事件は「脱法」サイケデリックス・カンナビノイドの流通と規制の「いたちごっこ」と並行して起こっている。これは、日本における「薬物」の規制と、日本人の遵法精神の高さが起こした社会現象でもある。

日本では「脱法ドラッグ」の流行が2015年ぐらいにいったん鎮静した。しかし、CBDの流行に続くように、2021年ごろから、THCと同様の作用を持つ「脱法」カンナビノイドの流通が広がり、さらに2022年ごろからは、LSDと同様の「脱法」LSDの流通が広がっている(詳細は「LSDアナログ」を参照のこと。)2019年に京都で起こった事件は、2022年ごろから本格化してきた「脱法」サイケデリックスの流通に、二年先立っていた。

1940年代から1960年代にかけて行われたLSDなどのサイケデリックスの研究は、いったん下火になったが、約50年間の「暗黒時代」を経て、2010年代ごろから、ふたたび盛んになってきている。これは西洋では「サイケデリックルネサンス」とも呼ばれるが、日本においては「鎖国」状態が続く中で、おもにインターネット上でサイケデリックスやカンナビノイドの流通が大学や病院での研究を追い越しつつある。

サイケデリックスの流行の背景には、抗うつ薬や依存症治療薬として自己治療に使用するユーザーが増えているのも大きな要因である。情報も物質もネット上で入手できてしまうようになったという技術的な変化が背景にある。

事件の詳細

一連の事件と長期化する裁判の記録はまとめきれていないが、概要は「京都アヤワスカ茶会裁判 ー アマゾンの薬草が日本で宗教裁判に? ー」にまとめておいた。

また、より詳細な裁判記録は「京都アヤワスカ茶会事件 ーDMT植物茶が争われる日本初の裁判ー」にまとめているが、まだまとめきれていない。

サイケデリックルネサンス」は、おもに生物学的精神医学の観点から語られることが多いのだが、同時に、1950年代に行われた、精神病理学的、宗教人類学的な研究を見なおす必要がある。

今後の研究に向けて

薬物をめぐる言論統制が厳しい日本では研究が進まない中で、裁判記録については、まずポルトガル語訳「Memorando de entrevista com o réu Aoi Garasu: o primeiro caso judicial sobre substância análoga à ayahuasca no Japão」がブラジルで出版される予定である。また、日本語での概説は『精神科治療学』2023年10月号に発表する予定である。

青井堂の「お茶会」の参加者自身による、一連の事件の考察としては、まるどろーるちゃん(筆名)による「青井硝子事件についての個人的総括」(外部サイト)に、よくまとめられている。



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  • CE2023/03/12 JST 作成
  • CE2023/03/12 JST 最終更新

蛭川立

サイケデリックスの量と作用時間

この記事は特定の薬剤や治療法の効能や適法性を保証するものではありません。個々の薬剤や治療法の使用、売買等については、当該国または地域の法令に従ってください。


作用時間

現在、治療薬としてもっとも注目されているのはシロシビンである。作用時間の点で、DMTは短すぎ、LSD、メスカリンやイボガインだと長すぎるから、という単純な理由もありそうだ。

LSDとシロシビンの作用時間[*1] https://media.springernature.com/full/springer-static/image/art%3A10.1038%2Fs41386-022-01297-2/MediaObjects/41386_2022_1297_Fig3_HTML.png?as=webp 心拍数など、生理的な作用

https://media.springernature.com/full/springer-static/image/art%3A10.1038%2Fs41386-022-01297-2/MediaObjects/41386_2022_1297_Fig2_HTML.png?as=webp 自我溶解など、心理的な作用

生理的な指標と心理的な経験はかなり一致しているが、シロシビンに比べると、LSDのほうが抜けていくのが遅いことがわかる。

Psychonaut Wiki」(外部サイト)という、サイケデリックスに特化した情報サイトに、さまざまな物質の作用の強度や時間についての数字も載せられている。以下はこのサイトから作図した。

時間 効き始め ピーク トータル 事後効果
LSD 15-30分 3-5時間 8-12時間 -48時間
1V-LSD 30-60分 3-5時間 8-12時間 -48時間
シロシビン 20-45分 2-3時間 4-6時間 -24時間
メスカリン 45-90分 4-6時間 8-14時間 -36時間
DMT(喫煙) 20-40秒 2-8分 5-20分 -60分
アヤワスカ 20-60分 1-2時間 5-10時間 -8時間
イボガイン 30-180分 18-36時間 ??? -72時間

摂取量

治療抵抗性うつ病に対してはハイドーズのサイケデリックスを一服=一座建立、という方法がとられるが、いっぽうで少量を何週間も摂取するという方法、マイクロドーズも流行してきている。

  LSDの摂取量による効果[*2]

たとえばLSDは切手のような紙に染みこませた形で流通してきたが、これは100〜200μgである。違法になった後のLSDのブロッターにはもっと少量しか染みこんでいなかったか、保存状態が悪くて分解が進んでいたのだとか言われているが、詳しいことはわからない。

質量 micro mini low midium high
LSD -25μg 25-50μg 50-100μg 100-200μg 200μg-
シロシビン -5mg 5-10mg 10-20mg 20-40mg 40mg-
P. cubensis -0.5g 0.5-1.0g 1.0-2.0g 2.0-4.0g 4.0g-
DMT -10mg 10-20mg 20-40mg 40-80mg 80mg-
アヤワスカ -10ml 10-20ml 20-40ml 40-80ml 80ml-

物質の量と効果について「Psychonaut Wiki」(外部サイト)などを参考にして表にすると、これぐらいの目安になる。(成人一人の体重が70kgぐらいを想定しているらしい。)

1V-LSDのようなLSDのプロドラッグも同じように100〜200μg単位で流通しているらしい。これはサイケデリック体験をじゅうぶんに引き起こす量である。

マジック・マッシュルームとして流通していたP. cubensisの乾燥重量としては2〜4g、シロシビン換算で20〜40mgに相当する。

また、流通しているイボガの根皮粉末に含まれるイボガインの濃度は0.6%から11.2%と、大きなばらつきがあるという実態調査がある[*3]

https://media.springernature.com/full/springer-static/image/art%3A10.1038%2Fs41386-023-01588-2/MediaObjects/41386_2023_1588_Fig1_HTML.png?as=webp https://media.springernature.com/full/springer-static/image/art%3A10.1038%2Fs41386-023-01588-2/MediaObjects/41386_2023_1588_Fig2_HTML.png?as=webp LSDの服用量と5D-ASC(上)・11D-ASC(中)・MEQ-30(下)の得点[*4]

LSDの場合、じゅうぶんなサイケデリック体験を引き起こすのは、約100μgであり、200μgを超えると、効果は頭打ちになる。これは、知覚の変容や神秘的合一体験など、体験の種類が違っても、だいたい同じである。なお、ホフマンが最初に意図的に摂取したのは250μgである。

私じしんはアヤワスカとシビレタケ(とくにミナミシビレタケ)とサンペドロと、それから1V-LSDなどのLSDアナログを[いずれも合法な地域と時代に]何度も試したことがある。イボガは味見ていどにしか服用したことはない。

アヤワスカについては、勧められるままに飲んでいただけである。シピボの先住民のところでは、小さなグラスに1/4ぐらい、だいたい50〜100mlぐらいの苦い液体を飲み干して、それでヴィジョンの世界に放り出されたから、じゅうぶんにハイドーズだった。クランデロに飲まされたアヤワスカの量が少ないとか、効きが足りないと感じたことはほとんどないから、毎回、DMTの効果が振り切れる以上の量を飲まされていたのだろうと、今となってはそう思う。

サント・ダイミの礼拝(trabalho)でも、同じぐらいの味の濃さで、同じぐらいの量を飲み、そして2時間ぐらいおきに「おかわり」があって、合計で3〜4杯を飲むことになっていた。それでも効果は弱く、歌って踊れるぐらいである。もっとも、踊りの輪から外れて横になると、やはりヴィジョンに巻き込まれそうになったから、意識の持ちようで精神作用が異なることを実感した。周囲で気分を悪くしている人に声をかけたり、礼拝の運営スタッフの手伝いという仕事(trabalho)をするようになると、自分じしんの意識はより明晰になると感じられた。

いくつかの研究をみると、アヤワスカに含まれるDMTの濃度は、おおよそ1mg/mlだというから、100mlなら100mgということになる。(もしアヤワスカを「マイクロドーズ」したいのなら、10ml弱、飲めばいいのだろうか。)

https://media.springernature.com/full/springer-static/image/art%3A10.1007%2Fs00213-022-06106-8/MediaObjects/213_2022_6106_Fig3_HTML.png?as=webp

https://media.springernature.com/full/springer-static/image/art%3A10.1007%2Fs00213-022-06106-8/MediaObjects/213_2022_6106_Fig4_HTML.png?as=webp

https://media.springernature.com/full/springer-static/image/art%3A10.1007%2Fs00213-022-06106-8/MediaObjects/213_2022_6106_Fig5_HTML.png?as=webp

LSD、シロシビン、アヤワスカの量と作用[*5]

マイクロドーズ

サイケデリックスの効果が感じられるのは、標準量の1/5から1/10ていど、LSDなら約20μgである。体感されないぐらいの用量で摂取するのをマイクロドーズというらしいが、これはここ数年の流行であり、プラセボとの比較研究が進んでいる[*6]

LSD Microdosing Kitwww.smplest.eu

非常に微小な量を計測するためには、物質をいったん水に溶かすという方法があるが、合法LSDアナログを水に溶かすためのキットも売られているらしい。


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CE2022/01/30 JST 作成
CE2024/05/06 JST 最終更新
蛭川立

役に立つサイトへのリンク集

文字数のカウント

www.luft.co.jp
文字数カウント

統計ソフト

昔ながらのSASSPSSとは別に、フリーの統計ソフトが流通するようになってきた。
https://www.stat.go.jp/teacher/r.html
総務省統計局のR言語紹介サイト。

構造式エディタ

一行の化学式、化学反応式をはてなブログに組み込む方法については、以下のページに詳しく載っている、

doratex.hatenablog.jp

構造式エディタについて、プロフェッショナルユースではChemDrawが標準だが、料金が高い。類似のフリーソフトとしてはMarvinSketchがあり、*mol形式でファイルを出力できる。

download.chemaxon.com

https://www.colby.edu/chemistry/PChem/scripts/MarvinWeb/marvin/help/sketch/sketch-index.html
MarvinSketchのマニュアル

構造式を含む物質のデータベースとしてはChemSpiderがあり、多くの物質の構造式が*.mol形式でダウンロードできる。

構造式をTeX形式で組み立てる試みもあり、下記のサイトに解説がある。

texwiki.texjp.org

構造式をIUPACのように一行にまとめる書式も規格化が進められている。

datachemeng.com
「データ化学工学研究室(金子研究室)@明治大学 理工学部 応用化学科」



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  • CE2023/02/10 JST 作成
  • CE2023/02/18 JST 最終更新

蛭川立

精神展開薬(サイケデリックス)の抗うつ作用

クラシック・サイケデリックスの多くはセロトニンと類似した構造を持ち、おもに5-HT2A受容体のアゴニストとして作用する。SSRI選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と同様に、うつ病(とくに治療抵抗性うつ病)、不安障害、強迫性障害に有効である[*1]抗うつ薬とは違い、単回投与後、症状は数時間で改善し、その効果は長期間続く。

ケタミンにも同様の迅速な抗うつ作用がある[*2]

双極性障害うつ状態に対しては躁転の可能性が指摘されている[*3]が、まだ充分な研究が行われていない。

LSDとリチウムを併用すると「バッド・トリップ」を引き起こすという逸話があるが、サイケデリックスと抗うつ薬気分安定薬との相互作用についてはまだよく知られていない。サイケデリックスとリチウムは危険な相互作用を起こすが、ラモトリギンは安全だという研究がある[*4]。また、ケタミンとラモトリギンの組合せは有益でも有害でもないというレビューもある[*5]

また、終末期における実存的苦悩や、それにともなう抑うつ状態や不安に対しても効果がある[*6]サイケデリックスは病気を治療するというよりは、いわば当事者に対し、治療できないことを受容させる、という作用を持つ。これは「serenity to accept the things I cannot change(自分に変えられないものを受け入れる落ち着き)」を得ると言いかえることもできるから、四苦すなわち生老病死のうちの「老=病」に対する回答でもあり、後述する薬物依存症の改善とも関連している。また「生/死」の彼岸に立つことは、後述する臨死体験とも関連している。

また、閾値下の少量を、抗うつ薬のように数週間摂取しつづけるmicrodosingが行われるようになってきたが、日常生活の中での創造性を高めるといった効果が期待されている。服用した当事者が主観的な効果を感じないので、プラセボとの比較研究が続けられている[*7]

サイケデリックスの服用による急激な意識状態の変容が、逆に急性不安障害、パニック発作を引き起こすことが多いが、数時間でおさまることが多い。大学生の場合は、服用数時間後に「世界の構造が再帰的」になり「無間地獄」に落ちて戻れなくなるような恐怖を感じたという。自己言及性が無限大に発散するからである。この様子を隣で見ていた友人が救急車を呼んだ。こうした一過性の不安は、事前の知識の有無やセットとセッティングによるところが大きい。


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CE2023/04/05 JST 作成
CE2024/02/04 JST 最終更新
蛭川立