蛭川研究室

蛭川立の研究と明治大学での講義・ゼミの関連情報

精神展開薬(サイケデリックス)の抗うつ作用

クラシック・サイケデリックスの多くはセロトニンと類似した構造を持ち、おもに5-HT2A受容体のアゴニストとして作用する。SSRI選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と同様に、うつ病(とくに治療抵抗性うつ病)、不安障害、強迫性障害に有効である[*1]抗うつ薬とは違い、単回投与後、症状は数時間で改善し、その効果は長期間続く。

ケタミンにも同様の迅速な抗うつ作用がある[*2]

双極性障害うつ状態に対しては躁転の可能性が指摘されている[*3]が、まだ充分な研究が行われていない。

LSDとリチウムを併用すると「バッド・トリップ」を引き起こすという逸話があるが、サイケデリックスと抗うつ薬気分安定薬との相互作用についてはまだよく知られていない。サイケデリックスとリチウムは危険な相互作用を起こすが、ラモトリギンは安全だという研究がある[*4]。また、ケタミンとラモトリギンの組合せは有益でも有害でもないというレビューもある[*5]

また、終末期における実存的苦悩や、それにともなう抑うつ状態や不安に対しても効果がある[*6]サイケデリックスは病気を治療するというよりは、いわば当事者に対し、治療できないことを受容させる、という作用を持つ。これは「serenity to accept the things I cannot change(自分に変えられないものを受け入れる落ち着き)」を得ると言いかえることもできるから、四苦すなわち生老病死のうちの「老=病」に対する回答でもあり、後述する薬物依存症の改善とも関連している。また「生/死」の彼岸に立つことは、後述する臨死体験とも関連している。

また、閾値下の少量を、抗うつ薬のように数週間摂取しつづけるmicrodosingが行われるようになってきたが、日常生活の中での創造性を高めるといった効果が期待されている。服用した当事者が主観的な効果を感じないので、プラセボとの比較研究が続けられている[*7]

サイケデリックスの服用による急激な意識状態の変容が、逆に急性不安障害、パニック発作を引き起こすことが多いが、数時間でおさまることが多い。大学生の場合は、服用数時間後に「世界の構造が再帰的」になり「無間地獄」に落ちて戻れなくなるような恐怖を感じたという。自己言及性が無限大に発散するからである。この様子を隣で見ていた友人が救急車を呼んだ。こうした一過性の不安は、事前の知識の有無やセットとセッティングによるところが大きい。


記述の自己評価 ★★★☆☆ (つねに加筆修正中であり未完成の記事です。しかし、記事の後に追記したり、一部を切り取って別の記事にしたり、その結果内容が重複したり、遺伝情報のように動的に変動しつづけるのがハイパーテキストの特徴であり特長だとも考えています。)


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CE2023/04/05 JST 作成
CE2024/02/04 JST 最終更新
蛭川立