蛭川研究室

蛭川立の研究と明治大学での講義・ゼミの関連情報

「不思議現象の心理学」2020/06/11 講義ノート

今週の講義ノートは、さらにくだけた話し口調にしてみます。カメラに向かって講義をして、それを録画しようかと思ったのですが、どうもぎこちなくなってしまいます。今回は見送りです。

その前段階として、パソコンの音声入力機能使って、話したことをそのまま文字に入れるとこういうことを試してみました。かなり精度がいいですが、しかし、かな漢字変換でうまくいかないことがあっても、戻って直せなかったりするので、いったん音声で入力したものを、後から校正して、教材ページへのリンクを張りなおしたりしています。多少、変換ミスがあるかもしれませんが、だいたい意味は通じますよね、そのほうが臨場感がありますかね、ということにしておきます。

教材ページは二ページで、まずは「錯覚・幻覚・認知バイアス」と「妄想と陰謀論」を見てください。一年ぐらい前に書いたもので、すこし状況が今と違うのですが、当時、緊急事態宣言だと、これから世の中はどうなるのだろうと、私じしんも不安になっていた時期です。そのころの臨場感があります。いや、今でもまだ気を緩めてはいけませんが、緊急事態、緊急緊急と何回も繰り返しているうちに、緊急慣れしてしまう、これもいけませんね、

さて不思議現象の心理学ということでやっていますが、超能力とか超常現象とか幽霊とか死後の世界とか、そういったことをテーマにしているわけですが、しばらく錯覚とか認知バイアスの話に寄り道しています。例えばでプラセボ効果とかですね、後は、錯覚とか認知バイアスです。

たとえば、心霊写真などというものがありますね。白いモヤモヤした写真のところに、人間の顔のようなものが見える。パレイドリアという錯覚があって、何を見てもじっと見ていると人の顔に見えてくるんですね。本当に幽霊がいるのかもしれませんが、先にそういう錯覚の可能性を排除する必要があるわけです。

時事的な話題ですと、いまの感染症の流行をどう捉えるか、報道されていることをどうとらえるか、これは科学リテラシーの問題にになってきます。科学リテラシーというのは、つまり科学的に情報を分析する方法です。科学リテラシーという名前の授業もあると思います。つまり批判的な思考ということですね。

私自身は超能力とかスプーン曲げができるとか、死後の世界があるとか肉体は死んでも霊魂は残るとか、地球外知的生命体が存在するとか、UFOに乗ってやってきているとか、そういうことが本当にあれば、その方が面白いと思っています。最初から超能力だとか幽霊だとか宇宙人だとかいうのは存在しないと決めつけてしまうのも科学的ではありません。

しかし間違ったことを信じてしまっても損をします。いんちき宗教みたいなものに騙されたり、変な薬を飲んで逆に病気になってしまったりとか、これは危険です。余談ですが、この肺炎が重症化するコロナウイルスですが、これは中国の雲南省の洞窟に住んでいるコウモリのフンから来ているわけですが、これの感染開始が2003年です。同じ話を何回もしていますが、その時私はたまたま別件でその雲南省にいたので、どうしても思い出してしまいます。地元の人が洞窟の水を飲むと病気が何でも治るとか、そんなことを言っていました。もちろん私は飲みませんでしたけど(→雲南省の洞窟の霊泉に行った話、これは余談です)そういうところから今の世界的感染が始まっていた可能性もあるんですね。18年前ですよ、もう今の大学生が生まれたころの話です、もうそこから感染が始まっていたんですね、たぶん。ただこれは中国のほうで情報がなかなか公開されなくてよくわからないままなんですが。

それで、怪しい話に深入りする前に、予備知識として、科学リテラシーと言ったりもしますが、批判的な思考能力を身につけるということが、これが基礎知識として重要になるわけです。緊急事態宣言などと言って、大学が閉鎖されたりオリンピックはどうなるとか、いろいろ心配な事も多いわけです。メディアで色々な情報が流れますね。東京都の新規感染者数が何百人だとか、そういう数字が正しい、間違っていないとか、昔の中国なら公式発表自体が疑わしかったのですが、さて、その信憑性とは別に、そういう数字をどう評価するのかという判断が必要になります。

そこで認知バイアスという問題がでてくるのですが、リスクをどの程度評価するかということですね、詳しくはリンク先の記事を見てもらいたいのですが、例えば新しいリスクは過大評価されるという認知バイアスがあります。例えば新型コロナウィルス感染症は新しく流行してきた病気です。死者数は一日あたり現在、日本では百人ぐらいです。しかしこの百人を多いと考えるのか、それとも少ないと考えるか。まずは他のリスクと比較する必要があります。

例えば毎日老衰で三百人のかたが亡くなっています。それから同じような呼吸器系の感染症として、過去には結核という病気が大流行しました。この結核という病気は今でも流行しています。結核による死者数は一日に日本では十人ぐらいです。しかし昔からあるリスクは過小評価される傾向にあります。例えば健康診断で胸のエックス線写真を撮ります。これは主に結核を早期発見するためのものです。ところで今、感染症対策として、集団での健康診断を取りやめると言うようなことがあるわけですが、これで結核という病気が見つからなくて治療が遅れるというリスクもあり、そのリスクを比較する必要があるわけです。結核がどれぐらい流行しているかということについては、過小評価されるというか、今もまだ結核なんていう病気があるのかということも忘れられています。これでは正しいリスクの評価にはならないということです。

あるいは、うつ病による自殺が増えているということが言われています。この10年ぐらい減り続けてきた日本の自殺率は、去年の2020年の7月ごろから増加に転じています。日本では失業率と自殺率に相関があることが知られています。いろいろ飲食店とかですね、そういうところが経営困難に陥ってで倒産したり従業員が失業したり、そういう人が増えることによって、食べるものがなくて飢え死にするとか、さすがに今の日本ではあまりないでしょうけれども、まあそれがきっかけになって精神的にうつ病になってしまう。それが悪化して、死にたいとか、そういうふうに思いつめてしまう。こういう事が今起きているわけです。この場合にもウイルスの感染の拡大による死者数の増加と自殺というか、その多くはうつ病などの精神疾患による、精神疾患による病死というべきなのかもしれませんが、この数の増加とトレードオフの関係にあるので、双方を比較する必要があるということです。

今、流行しているこのコロナウイルス感染症のウイルスですね、元は中国の雲南省のコウモリのフンから感染が始まったと言う事については先ほども、もう何度もお話していますが、2019年の感染拡大は、それがもう第二波だったわけですが、最初は湖北省武漢という、雲南からだいぶ離れた場所から起こっています。武漢にあるウイルス研究所で雲南省のコウモリのサンプルが研究されていたのですが、それが漏洩して感染が始まったのではないかという疑いがあると言われています。そして武漢ウィルス研究所で作られた人工的なウイルスが、生物兵器として作られたのではないかという陰謀論があります。この話が絶対間違っているという事は言えません。とにかく情報が乏しくてはっきりしないという事です。ウィルス研究所に由来するとしても、研究所の研究員が感染して、それを研究所外の人に感染させてしまったという、偶然の事故という可能性ももちろんあります。それとウィルスが意図的に感染させられたということや、あるいは人工的に作られたウィルスだという話は別の話です。しかしこれらの説は混同されがちです。どちらかというと偶然に起こった事故だというよりも、何か政治的な背景があって隠されているんだという、そういう話のほうが面白いわけです。不幸な出来事を面白がってはいけないのですが、悪いことのほうが気になってしまう、これも認知バイアスです。

さて話を戻しますが、もし本当に超能力者というものが存在するのであれば、もし本当に超能力者というのが存在するのであれば、スプーンを曲げるとか裏返したカードの模様を当てるとか、そんなことよりも、もっと実用的なことをしたほうがいいわけです。あるいは本当にそういう超能力者が存在するのであれば、まずは政治的、軍事的に利用されるのではないかと考えられます。実際アメリカではかつて透視能力、リモートビューイングの能力がある人が軍の情報収集活動に協力していたという話があります。これはとても面白い話です。旧ソ連では超能力の研究がされていたのだけれども、ソ連が崩壊したときにその文章が全て抹消されたとか、関わっていた超能力者や研究者たちはすべて消されたとか、そういった話は面白いわけです。

あるいは地球外の知的生命がUFOに乗って地球に来ている、UFOがアメリカの砂漠に墜落して、そこに乗っていたエイリアン、宇宙人の遺体が回収された、それがNASAの研究所に保管されているのだけれども隠されているのだというそういう話があります。そういう面白そうな陰謀論めいた話と、それが事実として確からしいか、区別するためのリテラシー、批判的思考方法が必要なわけです。

さて、詳しいことはリンク先の記事を読んでもらうことにして、この講義ノートはこれで終わります。来週ぐらいから、また超能力とか、そういう話に戻っていく予定にしています。