蛭川研究室

蛭川立の研究と明治大学での講義・ゼミの関連情報

「身体と意識」2021/11/05 講義ノート

最初からお断りしておきますが、今回はパソコンの音声入力を使ってしゃべったことを文字に起こしています。ですからかなり文章がおかしいのですがそういうことです。いま文字に起こしたものにもう一回手を加えてみましたが、ひらがなにしたほうがいいのが漢字になっていたりが多いですね。それから私の口癖のようですが、まあ、とか、あの、が多くて、文字にするとしつこく感じられます。だいぶ削りました。

これからの講義についてもですね、今までと同じような講義ノートの形式とリアルタイムディスカッションで続けます。教室に戻すかどうかって言う事はちょっと考えつつも、教室の大きさなどもあって考えているところですが、いろんな方法も考えています。例えば私がしゃべった動画を撮影してもそれをアップするとか、もう一つは講義ノートと言うのを、手書き打っていると非常に時間がかかるのと、同じ時間でも口で喋るというのが時間あたりの情報量が非常に多いわけで、これはリアルタイム講義のほうがはるかに情報量が多いですね。

この最近のコンピューターの音声入力、音声認識の精度がかなり上がってきていて、今はそれを使ってるんですけれども、しゃべったものをそのまま文字に変換させてます。これはまあまあ精度が良いですね。 精度が良いとは言ってもかなり誤変換があるのでまぁ後からちょっとは書き直さないと、間違いだらけの文章になってしまうのですが、でもところどころ日本語としておかしくても、実際の講義の内容と言うのは、かなり文法的に間違っていても、まぁそれ話し言葉ですからその話し言葉の雰囲気をそのまま伝えるにはこの音声認識の機能と言うのを使ってしゃべったことを文字に起こしてみるっていうのも面白いんじゃないかなと思って、今日の講義ノートはこの実験でやってみます。と言うことなので文章が多少おかしかったとしてもこれしゃべったままのものだと言うふうに、理解してください。

向精神薬について、精神に作用する物質の分類と言うのをちゃんと知っておいた方が良いと言う事は、違法か合法かとは別に、もう繰り返しお話ししている事ですが(→「向精神薬の分類」)簡単に言うと目覚めさせる薬、興奮剤とか中枢神経刺激薬といったものと、それから逆にリラックスさせる、眠くさせると言うそういう薬があって、繰り返しお話ししている事ですが、簡単に言うと目覚めさせる薬、中枢神経刺激薬といったものと、それから逆に間リラックスさせる眠くさせるという薬があって、睡眠薬とか抗不安薬というのがありますが、アルコール、エタノール、お酒ですね、これも一時的に脳を麻痺させてちょっと興奮する作用がありますが、リラックス作用がありさらに、たくさん飲むと眠ってしまうとか意識を失ってしまうとか死んでしまうとか、実はこれもねあまり、えーと、安全な薬物では無いのですね。

そういう興奮させる薬と鎮静させる薬以外にいわゆる、サイケデリックとか幻覚剤と言われるような薬物があるのですが、これはあの目覚めている状態で夢を見るような特殊な薬物なの いやこれは非常に興味深い作用する物質なのですが逆に、あまり身近なものではないので、ちょっとその話は後に回しましょう。

おそらく一番身近な神経刺激薬あるいは、興奮剤と呼ばれているもので、カフェインですね、コーヒーに入ってますし、後はお茶にも入ってるんですけどお茶の場合にはテアニンと言う物質が打ち消しているのでちょっと効果がはっきりしないのですが、カフェイン、コーヒー、と言うのが多分が1番身近にある向精神薬だと思います。 まぁお酒は好きな人は好きですけど飲まない人は飲みませんし、やはり強い薬物ですから、体質に合わないとかたくさん飲みすぎて大変なことになるとかっていうことがあるわけですけど、おそらくコーヒーやお茶と言うのは、飲んだことがない人はほとんどいない位ポピュラーなものですし、カフェインも飲むと後ちょっと目が覚めるとか元気になるとか、こういう薬物の体験ていうのは1番、一般的と思います。

なのでそういう薬物を使用するって言うと何か特殊なことなのかなと思ってしまいますが、これはごく普通の事なんだと言うことからも話を始めたほうがいいかなと思います。

カフェインは交感神経を興奮させる薬物です。興奮剤。これの中には、メタンフェタミンいわゆる覚せい剤が含まれます。カフェインと覚せい剤が同じ薬物だと言うと驚かれるかもしれませんが国際的な分類では同じ興奮剤に含まれています。コカインもこのグループ準じます。

カフェインを含むコーヒーと言うのは普通に飲まれているものですそれがドラッグであるとか、薬物だと言うような意識はあまりないわけです。しかし覚せい剤メタンフェタミンと言うのも何が問題なのかっていうと、それは暴力団の資金源になっていると言う、これが今の日本の社会の問題であるわけです。例えばコーヒーに含まれているカフェインだけを抽出して、もし注射すると言うことをすれば非常に危険な使い方であるわけですが、逆に言えばごく少量の覚せい剤を口から飲むと言うことであれば、まぁ量がほんと少なければですね特に問題は無いわけです。ただし法律では覚せい剤は違法だというルールはありますので、これは守らなければいけないと言うことになります。

朝起きたときにコーヒーを一服してそれから学校に行くとか会社に行くとかと言うような1日の活動を始めると言うのはまぁ普通のことです。覚せい剤とかと言うものであったとしても、それ自体は一度使ったら中毒になって止められないとかそういった事は、この興奮剤の依存性とか乱用と言うものはどういうものかと言うと、朝起きた時に元気にすると言う位だけではなくて、例えば徹夜でがんばってしまうとか、そういう時などコーヒーとかあるいはもうちょっとカフェイン濃度を濃くしたエナジードリンクとかですね、そういうものが売っているそうですが、私はちょっと飲んだことがないのでわからないですが。そこで問題になるのは、何が問題なのかって言うと、うん、何か頑張りすぎてしまうと言うそういう所にむしろカフェインや覚醒剤などの薬物の問題点があると思うわけです。

つまりエナジードリンクとかといっても飲んで元気になるわけですけど、本当にね体にエナジー、栄養分を補給して元気になるのではなくて、いわば脳を刺激して元気になったような錯覚と言うのか幻覚というか、そういうことをさせるわけですね。

本当は体が疲れているのに、すごく自分は元気なんだと言うような錯覚というか幻覚を感じさせる薬であると言う意味では扱い方を間違えると危険な薬にあるわけです。そのこれは暴力団の資金源になっていると言う事でも問題になっているわけですけれども、これも強さへの願望と言うんですかね、自分が普段の自分以上に頑張っていると言う、あの自分の能力と言うものが100%ぐらいしかないとすれば、覚せい剤っていうのは、それが200%位のパワーがあって、まぁ昼も夜も寝ないで頑張れるという錯覚とか幻覚を起こさせると、そういう意味で危険だと言えるわけです。

もちろん頑張ろうと言う、頑張って仕事しようとか頑張って何とかしようって言うこと自体は、いいことですよね。それはねあの、努力していこう発展させると言う社会を発展させると言うふうな力にもなってきたので、これは近代社会と言うものの発展、勤勉さと言う事と関係あると言うことです。

覚せい剤と言うのは実は日本で合成されたものです。メタンフェタミンと言うのはマオウという漢方薬に含まれるエフェドリンと言う物質を改良して明治時代に日本で作られたものです。これはその、明治時代以降の日本の急速な発展そして海外に向けて戦争を始めていくと、そういう時代の中でまぁ作られていったと言うそういう時代背景もあるわけですね。でそれはまた戦後の日本においては、その復興経済発展といったことにも関係しているわけです。これについては「興奮するモダン・沈静するポストモダン」と言う記事にも書きましたし、後は私が講義をした動画も以下にリンクがありますので見てください。


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朝なかなか寝布団から起き上がれないとかそういう事は誰にでもあることですけれども私が個人的には、これは結構重症でありまして、これが私が睡眠や意識の研究をしている個人的な動機でもあるんですけど、寝ていて、朝目覚まし時計に起こされても、もう全然起き上がれない全く体が動かないとか起き上がれないとか、がんばって起き上がってもまた急に眠くなって急に眠くなって眠てしまうとかそういった、ちょっとねえー過眠症というか、眠りすぎてしまうっていうのがあるんですけど。そういう時には興奮剤、中枢神経刺激薬とか、そういう薬も時々服用しています。カフェインも同じですが、胃が痛くなったり、副作用っていう動悸がしたりとかですね、そういう副作用が多いのかなと思います。なので私はあまりコーヒーとかカフェインは飲まないのですが副作用の出方は遺伝的な体質によってだいぶ違うようです。

薬物の社会的背景についてもあまり細かく語るのはこの授業から外れるのですが、コカインというのが南米のインカ帝国を作った、がんばって帝国を作った人たちによって使われてきたものでやはり厳しい環境の中で頑張るって言う、そういう精神と一致していると言うことであります。(→「勤勉と強迫の文化」これは本題から逸れます。南米の先住民社会の話です。)

何の話をしてたのかと言うと、これは脳の化学的な反応と言う事に話を戻しますと、脳内で交感神経を興奮させるような物質で神経伝達物質として、アドレナリン、ノルアドレナリンドーパミンといったカテコールアミン系の物質がありますが、これについてもカテコールアミンの生合成の経路といったことを動画で少し喋りましたが、ここまで詳しく話をすると専門的になりすぎるので、あまりちゃんと見なくてもいいです。これらのドーパミンノルアドレナリン、アドレナリンと言う物質がだいたい同じような構造の物質だということがわかればそれでいいと思います。


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ちなみにあのこういう精神刺激薬、中枢神経刺激薬と言うのを飲みすぎたらどうなるのかっていうことがあるんですが、もちろん交換神経を興奮させるので、血圧が上がりすぎたりとかそういう危険性もあるんですが、精神に対する作用としては、特に覚せい剤とかコカインとかなんですがたくさん飲むと被害妄想が出てきたりするんですね。 被害妄想とかというのは誰かから攻撃されているとか悪口を言われてるとかって言うような、統合失調症と言う病気の最初の方で出てくる陽性症状と言われるものですが、それとよく似ています。統合失調症というのは精神病の代表的なもので、これもあまり身近なものでは無いかもしれませんがしかし、100人に1人位の人が、20歳位で発病することが多いと言う割と普通の珍しくない病気なので、でもこれは早く発見して早く直せば治る病気なので気をつけた方が良いですね。

心が病んでいるとか性格がおかしいとかと言うよりは脳の病気であるということがわかってきているので、 ドーパミンの働きを抑える薬を飲むと、良くなると言うこともわかっていますので、早期発見早期治療をすれば、治る病気だと言うこともわかっています。

妄想とか被害妄想と言うとまた、普通の人には関係のない病的な話なのかなと思うと、そうではなくて、疑いを抱く、いま目に見える現実の背後に何か隠された意図があるんじゃないだろうか、隠された悪意があるんじゃないだろうかと言うことをちょっと心配すると言うのは誰でも考えることだと思います。(→「妄想と陰謀論」本筋とは外れますが、ご参考までに。)

例えば新型コロナウィルスは、中国から感染が始まったと言う事なんですが、これが本当はどこから来たのかよくわからないですね。市場とか研究所とか言われていますが、でこれに対して何かね、中国の政府とかその当事者が何か情報を隠してるんじゃないだろうかと、そういうふうに考えるのは、そういう疑いを抱くと言うのは、まぁ正常の範囲ですし、むしろそれぐらいの疑いと言うのは考えた方が良いわけです。ところがこれがだんだん程度が増してきますと、実はこの新型コロナウィルスと言うのは中国政府の陰謀であるとか、生物兵器として開発されたものである、それによって攻撃されているんだとか、 そういう陰謀論みたいな思想になってくるとまぁやや病的になってきます。とは言えそういう陰謀が本当にないとは言えないので、それも絶対間違いでは無いですしその正常な思考と病的な思考と言うものの間にははっきり線は引けないと言う事です。そしてその脳神経科学的な見地から言うと、これは脳内の神経伝達物質ドーパミンと言う物質の量が増えたり減ったりすると言う事で説明されています。というのはこのドーパミンを増やす興奮薬を飲み過ぎると被害妄想のようなものが出てきますし、逆にその被害妄想のような症状と言うのはこのドーパミン系の働きを抑えるような薬で良くなるということがわかっているからです。

それから逆に脳の働きを抑えるような物質、向精神薬としてはオピオイドですねそれから、GABA受容体に働きかけるベンゾジアゼピン系の抗不安薬睡眠薬と言うものがあります。睡眠薬と言うのもまぁ、あのー、それに近い作用するものとして多分もっと身近な物質はアルコール、エチルアルコールエタノール、お酒ですね、これがあります。この抑制させるタイプの物質と言うのはあんまり一般的ではないですかね。いやしかし、今睡眠のサプリというのはねかなり非常に、一般に流通していて、コンビニとかに売っているようですけど、テアニンとかGABAとかグリシンとかって言うものがよく眠れるサプリとして売っています。あの社会的な背景としては、とにかく頑張って頑張ってって仕事するって言うような社会の仕組みからちょっと、頑張りすぎてしまう、ストレスが溜まっているそういうストレスをちょっとリラックスさせると言う、そういうことが必要されてきてる時代なんだろうなと言うふうに思います。

ただし本当に神経の働きを抑えるような物質が乱用されると言う事は、特に日本ではあまりないですね。やはりそう社会の価値観として、真面目であることを勤勉であることというのが良いとされて、あまり後リラックスばかりしていて寝てばかりいるって言う事は 今までの社会の仕組みとしては、あまり望ましいことではなかったと言う事ですね。まぁお酒を飲んでちょっと神経を鈍らせて、ちょっともう疲れた、脳の憂さ晴らしをするとか、あるいはちょっと夜寝る前に晩酌って言うんですかちょっと脳を休めて寝るとか、と言うこともまぁ日本の文化の中にはあったのですが、しかしあのアルコールも飲みすぎると体には悪いですし、後はね攻撃的になって暴力振るったりするって言う弊害もあることも多いので、特に緊急事態宣言家下は、大声で喋るとかどうなのかって言う話そういう理由もあってお酒を飲むって言う人の数が減っていると言う感じがします。

でその一方でリラックスするためのサプリメントとか食べ物とかですね、かなり流通してきているなと言う気がします。睡眠薬と言うとちょっとこれはねぇ特殊でやはり医者に行って眠れません、て言わないともらえない薬なのですけど、でも弱い睡眠薬、ちょっとリラックスさせる薬、サプリメントっていうのはむしろ今の日本の社会では結構流行っていると思いますね、テアニンというのが、あのお茶に含まれるリラックスさせる物質で、お茶には沢山のカカフェインが入ってるんですけど、カフェインの作用を打ち消す物質としてテアニンが注目されています。 テアニンのテ、と言うのはお茶のティーと言う言葉から来ているわけです。

あとはGABAと言うものが売られていますがこれは実は脳内で働いている神経伝達物質そのものです。ドーパミンノルアドレナリンセロトニンが、脳で神経を興奮させるような神経伝達物質であるのに対してGABA、ガンマアミノ酪酸は神経の興奮を抑制させる代表的な神経伝達物質です。でこの神経伝達物質そのものがですね普通に売られるようになりましたねぇ、サプリメントとしてもありますしあとはチョコレート。もし本当にはっきり効くっていうことがわかっているのだとしたらこれたくさん飲んだら意識を失って倒れてしまうでしょうから、ほんとに効くのだとすれば、病院で処方されると言うことになるのでしょうけど、大丈夫だから売ってるんですね。医者が処方するベンゾジアゼピン系と呼ばれる抗不安、薬睡眠薬等はGABAと同じように作用するものです。睡眠薬などと言うとちょっと特殊な薬であって、 意識を失って倒れてしまうとか、もう死んでしまうとかいうイメージがあるかもしれませんが、実は普通に売ってるGABAと言うのも同じものだと思うと身近に感じられるものですね。

今まで向精神薬の中で脳の働きを興奮させるものと神経の働きの興奮を逆に抑制するものの2種類を見てきました。ここまでは身近でよくわかりやすいですけれども、それとは違う第3の薬物のグループがあって、これが精神展開薬とか、サイケデリックスとか呼ばれている、一番身近ではないのですがしかし非常に興味深い物質なので、これはぜひ来週以降改めてお話ししたいと思います。というのはこれ、夢を見させる物質なのですね。幻覚剤などと呼ばれていて何か幻覚が見える怖い薬なんじゃないだろうか、やばい薬なんじゃないだろうかと言うイメージがあるのですが、これは何度もお話してきた通りおそらく寝てる時に夢を見るって、その夢を見させる物質と関係があるのではないだろうかと言う意味で、意識の状態と幻覚と言うと変ですけど、別の現実、別のリアリティーと言う、身体と意識、精神と物質と言うものを考える上で非常に興味深い物質であって、それが単に脳を覚醒させるとか興奮を抑えるとかと言うものとは次元の違うものだと言うことです。夢を見ているときは、寝ているのに醒めているという、不思議な状態にあるわけです。これはまた来週以降お話をしたいと思います。