ニーチェの著作のすべての邦訳については「フリードリヒ・W・ニーチェ」[*1]に一覧表がある。「Nietzsche, Friedlich フリードリッヒ・ニーチェ」[*2]にも主要著作の邦訳リストと日本語による解説書・研究書のリストがある。
ドイツ語原文
Project Gutenbergには主要著作のドイツ語原文がアップされている。
グロイター版とクレーナー版
ニーチェの全集には「グロイター版(Sämtliche Werke : Kritische Studienausgabe in 15 Bänden. Friedrich Nietzsche ; herausgegeben von Giorgio Colli und Mazzino Montinari)」と「クレーナー版」の2種類がある。
グロイター版はドイツ語原書15巻とその和訳である白水社『ニーチェ全集(第一期・第二期)』を研究室に所蔵している。
クレーナー版の和訳は理想社から出版されたが、研究室では一部を所蔵している。その後、ちくま学芸文庫『ニーチェ全集』として再版されているが、こちらは全巻、研究室に所蔵している。
クレーナー版のほうがより新しく編纂されている一方で、妹のエリザーベトが遺稿を恣意的に編集したとも言われている。たとえば『権力への意志』は遺稿を集めたもので、元々そういう一個の書物があったわけではない。
グロイター版のほうは、こうした編集をせずに「遺された断想」をそのまま年代順に収録してあり、その点では学術的な全集としてより正確だとされる。
訳語と訳註
ただし、日本語に訳されている全集については、白水社のグロイター版のほうは訳註が少なく、理想社のクレーナー版のほうが圧倒的に訳註が多く、本の後半、半分が訳註である。前半の本文と後半の訳註を切り離して、二冊を対照しながら読むのが良いぐらいである。なお、ちくま学芸文庫版では字数は削減されているが、その後の研究成果も加筆されている。
分厚い文庫本なら、いっそ本文と訳註を切り離して二冊にして対照させながら読むのが便利
上記二系統の全集以外にも、個々の著書については岩波文庫など多数の和訳があるが、ここでは詳しくは触れない(というか、多すぎてよくわからない)。
日本語訳としてより正確か、より美文かということも日本語の味わいとしては重要だが、訳よりも註が充実しているほうがじっさいの研究には役立つ。とくにニーチェの著作には聖書などのパロディーが多いので、どの部分に対応するのかが書かれていると読み手としては助かる。
最近の和訳として面白いのは、光文社古典新訳文庫の奇妙な口語的翻訳である。
*1:雨宮孝(2019).『ameqlist 翻訳作品集成(Japanese Translation List)』
*2:石田智恵(2008/2013).