蛭川研究室

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人類学A 2023年度 春学期 期末試験問題

以下の三問から、二問を選択し、解答してください。いずれも単純な答えの出ない問題ですが、既存の知見をふまえた上で、議論が論理的に展開されていることを評価します。

問1

人間は、食料に充分な余裕がなかったであろう、何万年も昔から、芸術や宗教のような精神文化を発展させてきました。

芸術や宗教などの文化がなくても、食べていくのには困らないはずです。宗教などは、むしろ合理的な社会の維持にとっては不都合なところもあります。芸術の方面に傑出した才能を示す人の中には、精神疾患と見なされる人もいます。

精神文化を生み出す特殊な創造性は、なぜ進化してきたのでしょうか。そして、なぜ現代に至るまで存続してきたのでしょうか。

問2

中南米先住民族は、精神展開薬(サイケデリックス、幻覚剤)を含有する植物を儀礼的に使用してきました。しかし、精神展開薬のほとんどは、「麻薬」とみなされ、法律で禁止されています。

精神に作用する物質としては、他にも、酒(エチルアルコール)、覚せい剤(メタアンフェタミン)、カフェイン、コカイン、タバコ(ニコチン)、大麻THC、CBDなど)など、様々なものがありますが、現代の社会では、それらが良いものと考えられたり、悪いものだと考えられたりします。その分類の根拠は、どこにあるのでしょうか。

問3

世界各地の様々な民族を調査した結果、狩猟採集民から賃金労働者へと、文明が進歩するほど労働時間が長くなるというパラドックスが明らかになってきました。

現代社会では、過労が問題になっています。AI(人工知能)が進歩し機械が働けば、人間の仕事は減るはずですが、AIによって職が奪われることが憂慮されています。

こうした労働時間のパラドックスは、なぜ生じるのでしょうか。