蛭川研究室

蛭川立の研究と明治大学での講義・ゼミの関連情報

日本語・琉球語の辞典

日本(本土)

日本語は孤独語だが、日本・琉球語族というグループを仮定することもある。琉球の諸言語が多様であるのに対し、日本本土の日本語は、比較的均一である。

アクセント

日本語の方言は、語彙よりもアクセントの違いによって特徴づけられており、大きく京阪式と東京式に分けられている。(「イントネーション」と混同されることがあるが、単語内での音の高低は「アクセント」である。)

語彙には大きな違いがないから、方言が違っても話し言葉はだいたい通じるし、書き言葉も同様である。

しかし、アクセントの規則は複雑であり、東京式の話者、東京標準語で育った人間にとっては京阪式のアクセントは学びがたく、京阪式の話者にとっては東京式のアクセントは学びがたい。

日本文化は縄文=周縁/弥生=中心、という二重構造があるとされるが、アクセントにも東京式=周縁/京阪式=中心という二重構造がある。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/54/Japan_pitch_accent_map.png

日本語のアクセント[*1]

https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4246823022122023000000-1.png?ixlib=js-3.8.0&w=2234&h=2104&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=fd4782572abee144211940d20f8e7eb0 (参考:縄文系と弥生系の遺伝子頻度の分布[*2]

東京型を基準とした標準語のアクセントについてはNHKの放送用の辞典がある。

京阪式を代表する大阪方言については『大阪ことば事典』が詳しい。 京阪式のアクセント記号がついているが、日本語の方言辞典である以上、アクセント表記は必須である。船場言葉を中心に、近世以降の大阪方言を網羅している。

敬語

日本語は敬語の体系が発達しており、ネイティブスピーカーにとっても使い分けが難しい。

話者どうしのアクセントが違っても、出身地の違いによって「訛って」いると認識されるだけで、言葉は通じる。しかし、敬語を間違えると、意味は通じても社会生活に支障をきたす。これは、欧語文化圏ではあまり起こらないことで、ジャワ語・バリ語とよく似た特徴である。

私は『敬語マニュアル』を座右に置いている。尊敬語や謙譲語以外にも、ジェンダーや時代、フォーマルさの度合いなど、実用的な記号が付記されており、使いやすい。

古語

古語辞典は中高生の学習用に多数出版されており、それぞれ色刷りの図版なども楽しめる。

古い言葉を調べるには、上代の仮名遣いが書かれているものが参考になる。

kobun.weblio.jp Weblio古語辞典(WEB辞典)

琉球・沖縄

琉球方言については、沖縄本島南部の首里方言が基準とされることが多い。

hougen.ajima.jp
オンライン辞典『沖縄方言辞典』

アイヌ語

アイヌ語については、日本・琉球語族とは別系統であり、しかも方言の違いも大きい。

北海道アイヌについては、二風谷がアイヌ文化研究の拠点であったこともあり、一般向けには沙流方言の辞書が二種類出版されている。