蛭川研究室

蛭川立の研究と明治大学での講義・ゼミの関連情報

【資料】草間彌生

精神科病院で人生を送ったという芸術家は枚挙にいとまがない。しかし、自らが入院する病院の斜向かいに、その病院よりも大きな、自らの名を冠した『草間彌生美術館』[*1]を建てたという、その象徴的な意味において、草間彌生は世界の病跡学においても特筆すべき鬼才というほかない。

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1952年、松本で行われた初の個展で、草間彌生の才覚を見出したのは、東大医学部を出て信州大医学部の精神科の初代教授となった西丸四方である[*2]

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西丸四方は、草間の病理について、統合失調症の非現実性と双極症の現実性の双方が創造性と経済性という形で融合したケースとして分析している。

草間の創造の泉源となっている幻覚も、統合失調症に典型的な、被害妄想をともなう幻聴ではなく、超越性を持ち色彩に富んだ幻視が主であり、西丸四方は、精神展開薬 psychedelics の作用との類似性に着目している。

草間は、絵画だけでなく、自身の体験に基づく、詩や小説、そして自伝的エッセイも多数、執筆しており、自身の体験を巧みに表現している。

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彼女の入院生活は、1994年に出版された『蟻の精神病院』に、半フィクション形式で描かれている。

また、2012年のNHKスペシャル『水玉の女王 草間彌生の全力疾走』[*3]では、精神科病院内にカメラが入り、草間の入院生活がそのまま映し出されている。



CE2025/06/12 JST 作成
CE2023/06/12 JST 最終更新
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