脳という特別な装置について少し考えてみよう。重さー・ニキロほどの組織は一〇〇〇億もの神経細胞からなっている。その細胞の中に、あなたが誰でどんな人であるかを知るものは一つもない。
実際、細胞が知っているとか知らないということ自体がばかげたことに思えるだろう。そもそも一つの細胞というのはきわめて単純なものに過ぎないのだから。しかし、自己の意識というのはまさにここから、すなわち、何兆にも及ぶ結合を通じて互いに連絡をとりあっている細胞の集団から生じているのだ。考えてみれば、これは人間にとって非常に不思議なことである。だから、このような装置が奇跡のような性質を持っているに違いないと考えても、あながち不合理なこととは言えないだろう。しかし、世界は謎に満ちているとはいえ、科学は奇跡とは無縁のものであり、脳がどのように機能しているのかを純粋に物質世界の言葉で記述することこそが、二一世紀の科学の重要課題の一つなのである。(P. 1)
オーシェイ, M.・山下博志(訳) (2009). 『1冊でわかる 脳』岩波書店.(O'Shea, M. (2005). The Brain: A Very Short Introduction. Oxford, Oxford University Press.)
目次
- 脳を考える
- 体液から細胞へ―こころの構成要素
- 脳の中の情報伝達
- ビッグバンからビッグブレインまで
- 感覚・知覚・行為
- 記憶はこうしてできる
- 壊れた脳―開発と介入
- エピローグ
脳を理解するための参考記事
hirukawa-archive.hatenablog.jp
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CE2025/10/02 JST 作成
CE2025/10/02 JST 最終更新
