蛭川研究室

蛭川立の研究と明治大学での講義・ゼミの関連情報

西暦2023年度蛭川担当演習科目参考書(案)

2023年度の演習で輪読する本について、検討中。以下は原案。

学部2年生

春学期

問題発見テーマ演習A

  • 蛭川立 (2002).『彼岸の時間―〈意識〉の人類学―』春秋社.(新装版は2009年)
  • 蛭川立 (2011).『精神の星座―内宇宙飛行士の迷走録―』サンガ.

問題発見テーマ演習Aでは、人類学と意識科学の基礎を学ぶ。二十年前の出版になるが、拙著『彼岸の時間ー〈意識〉の人類学ー』を輪読する。

秋学期

問題発見テーマ演習B

  • オーシェイ, M.・山下博志(訳) (2009). 『一冊でわかる 脳』岩波書店.
    • O'Shea, M. (2005). The Brain: A Very Short Introduction. Oxford, Oxford University Press.
  • ブラックモア, S. ・篠原幸弘・筒井春香・西堤優(訳) (2010).『一冊でわかる 意識』岩波書店.
    • Blackmore, S. (2005).Consciousness: A Very Short Introduction. Oxford, Oxford University Press.

イギリスで出版されている人文科学系の超小型入門シリーズ「A Very Short Introduction」は、日本語では「〈一冊でわかる〉」シリーズとして翻訳されている。このうち「脳」と「意識」の二冊をテキストにして輪読する。全体として、脳の化学から、知覚や認知、意識と自我、そして夢や変性意識状態へと議論を進める。

予備知識は必要ないが、高校生ていどの生物学の知識があれば、なおよい。

一冊でわかる脳
脳を考える
体液から細胞へ
脳の中の情報伝達
ビッグバンからビッグブレインまで
感覚・知覚・行為
記憶はこうしてできる
一冊でわかる意識
なぜ意識は謎なのか
人間の脳
時間と空間
壮大な錯覚
自我
意識的な意志
変性意識状態
意識の進化

修士1年生

春学期

  • Blackmore, S., Troscianko, E. T. (2018). Consciousness: An Introduction (3rd. edition).
    • (和訳なし)
  • Godwin, M. The Lucid Dreamer: A Waking Guide for the Traveler Between Worlds.
    • (マルコム ゴドウィン (著), 大瀧 啓裕 (翻訳)『夢の劇場―明晰夢の世界』
  • Grinspoon, L., Bakalar, J. B. (1979, 1997). Psychedelic Drug Reconsidered (2nd. edition).
  • Scott O. Lilienfeld (Editor), Steven Jay Lynn (Editor), Jeffrey M. Lohr (Editor). Science and Pseudoscience in Clinical Psychology, Second Edition
    • (スコット・O. リリエンフェルド (編集), スティーブン・J. リン (編集), ジェフェリー・M. ロー (編集)『臨床心理学における科学と疑似科学』 )

秋学期

  • Gregory Bateson, G. Steps to an Ecology of Mind: Collected Essays in Anthropology, Psychiatry, Evolution, and Epistemology.
  • Campbell, J. (1997). The Mythic Image.
    • (ジョーゼフ キャンベル (著), 青木 義孝『神話のイメージ』 1991/7/1)
  • Scotton, B. et al. Textbook of Transpersonal Psychiatry and Psychology.
  • Leach, E. (1989). Claude Levi-Strauss.

「フィールド・アプローチ」

フィールドワークそれ自体は調査の技法であって特定の研究分野とは独立であるが、とくに文化人類学を特徴づける研究方法論として発展してきた歴史的経緯がある。この授業では、その典型的なモデルとして、都市であるか村落であるかを問わず、研究対象となる人々のコミュニティに住み込んで調査を行うというフィールドワークの方法論を中心に、受講者の希望調査地域を踏まえつつ、教員自身の体験も交えて、少人数での授業を進める。

フィールドワークというのはきわめて実際的な方法であって、演繹的に構成された方法論というよりは、細かい具体的なノウハウの集大成という色彩が強い。理論的な基礎については「フィールド・アプローチⅠ」でも扱うので、この授業ではより応用的な実用性を重視するという観点から、敢えて細かい具体的な技術を題材にとりながら、随時、抽象的な一般論にも触れていくことにしたい。

1.調査の目的とビザ、調査許可の取得
2.訪問時期(季節、訪問先の暦法と祭日など)
3.移動手段(飛行機、船、列車、バス、タクシー、三輪タクシー、自転車、徒歩)
4.政情と治安(戦争、テロ、その他の犯罪、軍隊や警察との関わり方)
5.衛生状態(食事、風土病、感染症とワクチン、薬、保険と病院)
6.言語(現地語、公用語、英語、日本語)、ガイドと通訳
7.持って行くものと現地調達するもの
8.どこに滞在するか(借家、ホテル、ホームステイ、集会所など)、どれぐらいの期間滞在するか
9.信頼関係を築く方法、謝礼と土産
10.調査方法(参与観察、聞き取り、質問紙など)、雑談の中から必要な情報を引き出す方法
11.記録のための機材(ノート、カメラなど)
12.調査する側とされる側の年齢・性別・社会的地位などをめぐる関係
13.禁忌(聞いてはいけない事柄、行ってはいけない場所、撮影してはいけない事物など)への対応、祭礼・儀礼等への参加
14. 約束の不確かさ(借りたものを返さない、約束の時間に遅れるなど)、その他のトラブル(人間関係、金銭面など)への対応
  
(少人数での授業になると予想されるので、内容は履修者の調査対象や具体的な研究テーマに応じて調整したい。)

この授業は、実際に特定の地域(とくに、日本のように政情、治安や衛生状態が他地域に比べて非常に良い社会以外の地域)でのフィールド調査を予定している諸君に対して、各々の対象地域に対応した実際的な技術を伝えることを主たる目的としているので、そのような具体的な調査の予定がない諸君が漫然と聴講するようには計画されていない。なお、担当教員である蛭川が比較的詳しい地域はアジアの東半分~オセアニア中南米に偏っているが、教員一人で全世界のすべての地域について詳しい体験的知識を持つことは困難であることはあらかじめお断りしておきたい。


  • CE2022/12/05 JST 作成
  • CE2022/12/17 JST 最終更新

蛭川立