「蛭川研覚書」に書いた記事が長くなりすぎたのでこちらに移動中。
この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、個人の感想も含まれており、その正確性は保証されていません[*1]。
この記事は特定の薬剤や治療法の効能を保証するものではありません。個々の薬剤や治療法の適法性については、当該国または地域の法令を考慮してください。
シロシビン治療の世界的趨勢
精神科治療薬としてのサイケデリック・ルネサンスが進む中で、うつ病にはシロシビン、PTSDにはMDMAと物質が絞り込まれ、治験が進んできた。
2023年7月にはオーストラリアが連邦レベルでシロシビンとMDMAの処方を可能にした。
オランダではシロシビン含有菌類は規制されている。しかし、規制されているのは地上部の子実体であり、地下の菌糸(マジック・トリュフ)は規制の対象外だという「脱法」的解釈[*2]のもとで、菌糸を使ったリトリートセンターが運用されている。
シロシビン1mg、10mg、25mgの効果の比較[*3]
イギリスではインペリアルカレッジで始まった治験がCOMPASSに引き継がれている。2023年には大うつ病患者120名を対象とした臨床試験が行われ、単回投与でも数ヶ月の効果が持続するという結果が得られている。これに続いて2024年には日本の慶應大学で治療抵抗性うつ病に対する治験が始まる予定である。
抗うつ薬としてのシロシビンについての詳細は、下記の記事を参考のこと。
hirukawa-notes.hatenablog.jp
オレゴン・モデル
アメリカではMDMAの承認が遅れる一方、シロシビンを含むキノコを非犯罪化する地域が増えた。
オレゴン州で全米初の公的なシロシビン・サービスが始まったのは、2023年の冬である。しかし、これは医療ではない。「サービス」は治療行為ではなく、医師や心理師とは異なる、「ファシリテーター」がクライアントに付き添う。
アメリカにおけるシロシビン・キノコの法的規制。灰色と水色の州は違法。青い点は非犯罪化した市区町村。紺色は非犯罪化に加えて免許制により合法化した州[*4]
サービスセンターは北部のポートランドの周辺に集中しているが、南部のLumina Life Journeyでは、日本語によるリトリートが2024年に始まった。
luminalifejourney.com
Lumina Life Journeyのあるオレゴン州アップルゲート。オレゴン州の南部で、カリフォルニア州との州境に近い。
参与観察=当事者研究として
身体は慢性的に怠く、気分は晴れない。3月には日本で最初のケタミン・クリニックに行き、背筋が伸ばされ、脳が晴れわたるような体験をしたが、三日後には元の気だるい身体に戻ってしまった。ケタミンの抗うつ作用が三日しか保たないというのは、今までの治験でも示されてきたとおりである。だからケタミンは保険適用外で自由診療となり、保険適用を目指した治験はシロシビンへと向かっている。
hirukawa-notes.hatenablog.jp
2024年8月、10日ほどの夏休みがとれた。大学は7月から9月まで、長い夏休みとなるが、入試や会議などで、連続して休みをとるのが意外に難しいのだが、このタイミングで医療人類学的参与観察=当事者研究として、このプログラムに参加することにした。
精神・神経センター病院の心理師さんに、イギリスに行ってケタミンでも打ってきたらどうかと聞いたのは、2018年の春のことだった。
6月には、失効して更新をしていなかったパスポートを作りなおした。東京都の窓口で書類を書いたとき、「行き先」の欄に何と書いて良いのかわからず「未定」と埋めた。
それから6年が経った。10年パスポートはまだ残っていた。
トリップの予約が完了しました。八年ぶりの海外渡航ですが、パスポートはまだ失効していませんでした・・・(~_~;) pic.twitter.com/AFp7XGCfd9
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) July 20, 2024
航空券を予約した。お盆の前後は航空運賃が高騰する。さらには円安で、いつの間にか1ドルが160円になっていた。
アメリカに行くのにはビザは不要かと思っていたが、じつは「ESTA」というビザ代わりの書類の申請が必要になっていた。
日本からアメリカに渡航するのにビザは不要だったかと思いきや、ESTAという書類を書く必要があるとのこと。「ナチスドイツの同盟国ですか?」という敵国条項は撤廃されたらしいが・・・ pic.twitter.com/moECGxscm5
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) July 23, 2024
準備セッション
渡航前にオレゴン州保険局の所定の問診票に記入し、zoomによる準備セッションを受ける必要がある。
2024年から始まったオレゴン州保険局公衆衛生部・オレゴンシロシビンサービスの問診票。
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) July 26, 2024
特定の疾患に対する治療ではないので診断書は必要ないが、事前に問診票に回答する必要がある。 pic.twitter.com/qsKNLJDoCQ
(→「オレゴン州のシロシビンサービス」に続く・・・)
記述の自己評価 ★★★☆☆
(つねに加筆修正中であり未完成の記事です。記事の後に追記したり、一部を切り取って別の記事にしていますが、遺伝情報のような冗長性がハイパーテキストの特徴であり特長だとも考えています。)
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*1:免責事項にかんしては「Wikipedia:医療に関する免責事項」に準じています。
*2:オランダでは規制の対象となるシロシビン含有菌類は種名を列挙することで規制されている。いっぽう日本の麻向法でも、「サイロシビン」を含有する「きのこ」は麻薬原料「植物」に指定されている。なぜ法律の条文に、ひらがなで「きのこ」と書いてあるのかは不可思議であり、この「きのこ」がオランダの法解釈と同様、子実体のみを指すのか、シロシビンを含まない胞子以外の生活環全体を指すのかは不明というほかない。
*3:Single-dose psilocybin for a treatment-resistant episode of major depression: Impact on patient-reported depression severity, anxiety, function, and quality of life - ScienceDirect
*4:Psilocybin decriminalization in the United States - Wikipedia