この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、個人の感想も含まれており、その正確性は保証されていません[*1]。
この記事は特定の薬剤や治療法の効能を保証するものではありません。個々の薬剤や治療法の適法性については、当該国または地域の法令を考慮してください。
サイケデリックス(精神展開薬・幻覚剤)が意識を変容させ神秘体験を引き起こすこと、そうした物質を含む薬草が世界各地で治療儀礼として使用されていることについて関心を持ち、研究してきた。
サイケデリックスの精神作用にかんする心理学的な研究は、なかなか進んでこなかった。依存性のある精神活性物質と混同され「麻薬」として研究や使用が厳しく規制されてきたという理由もある。
しかし、2010年代から、サイケデリックスをうつ病や依存症の治療薬として利用しようとする試みがじょじょに復活してきた。
個人的には緊急事態宣言下の在宅勤務で持病の睡眠リズム障害をこじらせ、抑うつ症状が慢性化するようになってしまったのだが、このタイミングで、サイケデリックスに抗うつ作用があることに身をもって知ることができた。
八月に十日ほど夏休みがとれました。世界に先がけて2023年から始まったオレゴン州保険局公式シロシビン・マッシュルーム・サービスに行ってきます。サイケデリック・ルネサンス=精神展開薬再合法化の最前線です。… pic.twitter.com/ghMvZcCZpL
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) August 15, 2024
シロシビン合法化の「オレゴン・モデル」
オレゴン州では2023年*2]から「サービスセンター(service center)」内でのシロシビンの合法的使用が始まった。
シロシビンはスケジュールⅠの規制薬物であり、所持、施用、売買等は違法である。スケジュールⅠの物質は医療用の使用も認められていないが、サービスセンター内での使用は医療や宗教という目的外で認められている。使用に付き添うファシリテーター(facilitator)は医師、看護師、心理師のような臨床的な資格ではない。
アメリカにおけるシロシビン・キノコの法的規制。灰色と水色の州は違法。青い点は非犯罪化した市区町村。紺色は非犯罪化に加えて免許制により合法化した州[*3]
全米ではまずオレゴン州がシロシビン・マッシュルームの公式サービスセンターを認可し、コロラド州が後を追っている。
違法薬物の個人使用を非犯罪化したオレゴン州では、オピオイドの乱用が広がり、2024年9月より、また再犯罪化された。大麻はすでに違法薬物のリストから外され、アルコールやタバコと同じ扱いになっている。
問題となっているのはフェンタニルなどのオピオイドが主であり、シロシビンなどのサイケデリックスについては事実上の容認が続いている。そのため、サービスセンターでシロシビンを使用するのは、完全に合法で安全に使用することを望む高所得者、州外・国外からの来訪者が多い。
ファシリテーター制度
2023年の春、旧知のビショップ・杉田・菜生子さんからファシリテーターの養成学校、Synaptic Institute[*4]に入学したいという連絡を受け、推薦状を書いた。
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「Greenzone Japan」が取材したシロシビンサービスの紹介動画
菜生子さんは2024年の春からオレゴン州のファシリテーターとしての活動を始めた。8月の夏休み期間に、シロシビンサービスを体験するために渡米することにした。9年ぶりの海外渡航だった。
準備セッション
渡航前に問診票に記入し、zoomによるインテークと準備(preparation)セッションを受ける必要がある。
2024年から始まったオレゴン州保険局公衆衛生部・オレゴンシロシビンサービスの問診票。
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) July 26, 2024
特定の疾患に対する治療ではないので診断書は必要ないが、事前に問診票に回答する必要がある。 pic.twitter.com/qsKNLJDoCQ
東京からオレゴンへ
羽田空港第三ターミナル。東京で閉じこもってヘタレ生活を送っているうちに、海外渡航は九年ぶりになってしまった。今まで人類学を研究してきたのに、飛行機に乗ること自体がなにか異世界へのトリップのように感じられる。… pic.twitter.com/YX5npvqGH7
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) August 20, 2024
オレゴン州アシュランド
シロシビン・サービスセンター
オレゴン州南部のAshlandにあるシロシビンサービスセンターSatya。公的なサービスとしてシロシビン含有キノコが合法化された仕組みと問題点について、サービスセンターのスタッフと議論。 #Oregon2024 pic.twitter.com/gXXY8jMAKZ
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) August 23, 2024
1回目のセッション
シロシビン摂取の後はファシリテーターと統合セッションを行う。体験したことを絵に描いたりしながら、その意味を話し合う。… pic.twitter.com/9h56UGzjHY
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) August 25, 2024
シロシビンのセッションはサービスセンター内で、だいたい朝の九時から夕方の六時までの間に行われる。
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) August 25, 2024
その後、クライアントは自宅か宿泊施設に戻らなければならない。今回はファシリテーターの @NaokoBishop さんのご縁でAshlandの近くのApplegateにある元ご自宅に投宿させてもらった。… pic.twitter.com/Eznv9BVRBA
2回目のセッション
オレゴン州Ashlandの @SatyaTherapy での二度目のセッション。投与の上限、35mgのシロシビンは修行である。今回は日本人ファシリテーターの @NaokoBishop さんに呼吸法を指導してもらう。… pic.twitter.com/zEFH8ERMgS
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) August 27, 2024
朝はリトリートの畑の野菜をそのままミキサーに入れてスムージーを一服。 #Oregon2024 pic.twitter.com/0ZWAkUnedu
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) August 27, 2024
アンデスから来たアルパカもいます。 pic.twitter.com/l67vIStjrk
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) August 25, 2024
統合=インテグレーション
オレゴンの森で生まれた男の子が東京に引っ越してきたような、不思議な感覚。建物や電車、東京の街で見るものが何でも新鮮で面白い。… pic.twitter.com/YiER9uuKpZ
— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) September 5, 2024
セッション後には、ファシリテーターが対面、そして遠隔でクライアントと面談をする。これをintegration(統合)という。
インタグレーションは地道な作業で、10年かかる人もいる。またはセッション後数時間で完了する人もいる。体験を忘れずに、足場を持つことは今の自分を変えていくことになる。自分の世界を見つけること。できなければ助けを求めること。
— Naoko Bishop /licensed psilocybin facilitator (@NaokoBishop) September 15, 2024
従来よりサイケデリック体験等の非日常的な意識状態から日常的な社会生活に軟着陸することは「グラウンディング」と呼ばれてきた。サイケデリック療法における「統合」においても、何年もかかる心理療法的な支持が必要になるだろう。
2024年4月から10月までのPHQ-9の推移
シロシビンセッション自体は8月23日と25日の2回だったが、それに先立って抑うつ症状は軽快している。これは、オレゴン州でシロシビンサービスが始まったという情報を知ってから、じっさいに参加することにして、事前の準備セッションを始めたという、一連の流れの影響でもある。過食や過眠のような症状は冬に悪化し、夏に軽快するという季節的な変動もある。
2023年にシロシビンサービスが合法化され、2024年にそれに参加することになったこと自体が沈滞した気分を改善させてくれたことでもあるので、シロシビンという物質を摂取した結果、「抗うつ作用があった」というだけではない。そもそも伝統文化の中でのシャーマニズムは、こうした社会的・神秘的な共時性(意味を付与された偶然)を介して治療効果を発揮するものである。
記述の自己評価 ★★★☆☆
(つねに加筆修正中であり未完成の記事です。記事の後に追記したり、一部を切り取って別の記事にしていますが、遺伝情報のような冗長性がハイパーテキストの特徴であり特長だとも考えています。)
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*1:免責事項にかんしては「Wikipedia:医療に関する免責事項」に準じています。
*2:出典未確認
*3:Psilocybin decriminalization in the United States - Wikipedia
