秋学期の「人類学B」では、生物の有性生殖から、動物の配偶システム、そして人間社会における親族と婚姻というテーマを扱う。
ここ数年、アマゾン川上流の先住民族である、シピボ=コニボが、森の精霊と共生する民族、アヤワスカを飲む/飲ませる民族としてグローバルな注目を集めている。しかし、シピボの社会がどのような生業に支えられ、どのような親族構造を持っているのかについて人類学的な議論が不足しているのも事実である。
シピボ=コニボの伝統社会における、親族の基本構造は「姉妹型の妻方居住の一夫多妻制」[*1]なのだが、その構造を「夫方居住の一夫一妻制」を自明の規範とするーさらには多妻婚を「不倫」と見なすようなー西洋近代的なエスノセントリズムから相対化してとらえるためには、文化人類学・社会人類学にもとづく理解が必要とされる。
「親族」や「kinship」という概念もまた東アジアや西ヨーロッパの特定の文化に依存した概念である。社会人類学では親族をリネージとクランに分け、そのクランを母系、父系、双系、重系、のように分類する。たとえばシピボの社会の婚姻居住規制は妻方居住婚であり、母ー娘関係を主軸とするリネージが存在するが、クランを持たないため、母系社会とはいえない。
親族構造論は文化人類学・社会人類学の基本をなす理論だが、近年は応用人類学的な研究が進むにつれ、議論されることが少なくなった。しかし一方で進化生態学にもとづく配偶システム論の発展によって、遺伝子=文化共進化理論の基礎として、ふたたび重要な役割を果たすようになってきている。
親族構造論の基礎文献
記述の自己評価 ★★★☆☆
(日々その都度、思いついたことを書きとめているだけなので、文章は荒く、途切れ途切れです。学術的に価値がありそうなコンテンツは、できるだけ加筆修正して独立させます。)
*1:大橋麻里子「アマゾンに住むシピボの食の「分かち合い」と森林資源」京都大学東南アジア研究センター