提示された三問から、二問を選択し、それぞれ、解答用紙一枚を超えない範囲で解答してください。いずれも単純な答えの出ない問いかけです。どのような仮説・学説を用いても、どのような結論になってもかまいませんが、議論が、既存の知見をふまえた上で、論理的に展開されていることを評価します。
【1】
いま、個人のゲノム(DNAの塩基配列)が、一万円で読み取れる遺伝子解析サービスが始まっています。
どんな病気になりやすい体質かがわかれば、生活習慣を変えていけます。性格や知能の特性がわかれば、職業選択に役立つかもしれません。男女二人で検査をして、どういう子どもが生まれるかをシミュレートすることや、遺伝情報のデータベースから、条件に合うパートナーを検索することも、理論的には可能です。
しかし、こうしたサービスには批判もあります。体質はともかく、性格や相性などが、遺伝情報だけから、どの程度、予測できるかは、まだ未解明です。予測できたとしても、どういう人生を選ぶかは、個々人の価値観次第です。
上記のような議論を踏まえた上で、あなた自身は、こうした解析をしたいと思いますか、したくないと思いますか。してみたい場合、何を、どこまで知りたいですか。その理由は何ですか。あなた自身の考えを論述してください。
【2】
世界各地の様々な民族を調査した結果、狩猟採集民から賃金労働者へと、一般に文明が進歩するほど労働時間が長くなるというパラドックスが明らかになってきました。
一見、文明の発展から取り残されてきたようにみえる未開民族も、文明的な暮らしよりも、簡素で時間的な余裕がある生活のほうを積極的に選びとってきたのかもしれません。
逆に、たとえば日本の都市社会では、過労が問題になり、積極的に休暇をとらなければいけないという考えも出てきました。AI(人工知能)が進歩すれば、機械が働いてくれるぶんだけ、人間の仕事が減るはずですが、実際には、AIによって職が奪われるという可能性が憂慮されています。
上記のような、労働時間のパラドックスは、なぜ生じるのでしょう。文明的な豊かさと、時間的な余裕は、両立しないのでしょうか。あなた自身の考えを論述してください。
【3】
他の動物とは異なり、人間は葬送儀礼を行います。
たとえば、インドネシアのバリ島では、盛大な火葬儀礼が行われます。現代では、葬儀や婚礼などは簡素に行うほうが合理的だという意見が増えていますが、いっぽう、火葬儀礼は伝統文化として受け継がれるべきで、観光化されることで地域振興にもなる、という考えもあります。
そもそも人の死という不幸な出来事に対して、楽しそうに騒ぐのは不謹慎だとも思えます。しかし、バリ島民の世界観において、死とは、精神が、肉体という物質の制約から解放される喜ばしい出来事でもあり、火葬によって肉体を焼いてしまうのは、精神が肉体へ戻りたいという執着を断つためだとされます。これは、火葬という文化の由来である、古代インド哲学における論理的思考の帰結であり、たんに非科学的な迷信だと決めつけることもできません。
上記のような議論に対して、あなた自身の考えを論述してください。
別途添付した、Microsoft Word形式のファイル二個のそれぞれに、学生番号、氏名、所属学部と学科、年・組・番号、提出日を記入し、選択した問いの番号を括弧内に書いた上で、解答してください。(採点結果の欄には何も記入しないでください。)
Webサイト、紙媒体を問わず、引用は、必ず引用部分と出典を明記してください。無断のコピー・アンド・ペーストはルール違反です。
なお、例年、講義の感想をひと言、書き添えてくれる人がおります。成績評価には反映しませんが、歓迎します。
提出受付期間は、日本時間の2021年1月27日00時00分〜1月29日23時00分です。(締切は厳守です。23〜24時ごろにはアクセスが殺到し回線がダウンする可能性があるので、早めの提出をお勧めします。)
その他、FAQの「期末レポートについて」について、問題になりそうな点について列挙しておきました。ご一読ください。それでも疑問がある場合には、上記サイトにあるアドレスに、メールでお問い合わせください。