臨死体験と精神展開体験は似ているが、その内容には個人や文化を超えた、典型的な要素がある。これらの体験要素を定量的に分析するためのスケールが作られてきた[*1]。
中核体験
臨死体験の内容は互いに似通っている。ムーディーの先駆的考察『かいま見た死後の世界(Life after Life)』によって記述された主要な要素を、あらためてまとめなおしたものが「中核体験(core experiences)」である。
要素体験の因子分析
臨死体験の深さというよりは、内容を分類しようとした研究もある[*5]。
分析の対象とした26個の要素
英語原板[*6]英語原板[*7]
臨死体験に特徴的な要素を因子分析によって分析すると、以下のような因子がみとめられる。
- 神秘的因子
- 自我感喪失因子
- 過剰覚醒因子
1と2は、臨死体験の「深さ」とも関係する。1のほうが深い体験であり、2のほうが浅い体験である[*8]。
1の神秘的因子は、深い臨死体験にあらわれやすいもので、精神展開薬の作用に似ている。セロトニン作動性ニューロンの5-HT受容体と関係しており、おそらくは、心停止などの低酸素状態で分泌される内因性DMTの作用と関係している[*9]。
2の自我喪失因子は、解離性の体験であり、軽度の事故や発熱による臨死様体験や、睡眠麻痺によっても起こる。
また、麻酔、とくにケタミンなどの解離性麻酔薬によって引き起こされる体験と類似しており、グルタミン作動性ニューロンのNMDA受容体と関係している。内因性NMDA受容体アンタゴニストについては、いくつかの候補物質が存在するが、確定されるには至っていない。
記述の自己評価 ★★★☆☆
(書きかけ。加筆が必要)
CE 2020/11/03 JST 作成
CE 2021/05/04 JST 作成
蛭川立
*1:Horizon Research Foundation. Research Scales Used to Classify an NDE.(2021/07/21 JST 最終閲覧)
*2:Horizon Research Foundation. Research Scales Used to Classify an NDE : the Weighted Core Experience Index(2021/07/21 JST 最終閲覧)
*3:リング, K. 笠原敏雄(監訳)「臨死体験を計測する」グレイソン, B.・フリン, C. P. 笠原敏雄(監訳)(1991).『臨死(ニアデス)体験』春秋社, 40-50.
*4:Bruce Greyson (1983). The Near-Death Experience Scale. Journal of Nervous & Mental Disease, 171(6) , 369-375.
*5:笠原敏雄(監訳)「生命を脅かす危機状況に対する心理的反応」『臨死(ニアデス)体験』春秋社.
*6:R. Noyes, and D. Slymen (1979). The Subjective Response to Life-Threatening Danger. OMEGA - Journal of Death and Dying, 9(4).
*7:R. Noyes, and D. Slymen (1979). The Subjective Response to Life-Threatening Danger. OMEGA - Journal of Death and Dying, 9(4).
*8:要出典
*9:Christopher Timmermann, Leor Roseman, Luke Williams, David Erritzoe, Charlotte Martial, Héléna Cassol, Steven Laureys, David Nutt, and Robin Carhart-Harris (2018). DMT Models the Near-Death Experience.Frontiers in Psychology, 9, 1424.