蛭川研究室

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【講義ノート】「人類学B」2020/11/09

個人向けの遺伝子解析サービスの話から、親族構造論へと話を移動させていきます。秋学期の授業も、前半の自然人類学から、後半の文化人類学へと移行していきます。

配偶システム・婚姻制度について、自然人類学的な視点からは、サル類の一種としての人類の進化史を振り返り(「人類の進化と大脳化」)、類人猿と現生人類の配偶システムについて種間比較を行い、(「ヒト上科の配偶システム」)文化人類学的視点からは、人間社会における婚姻と出自の規則について概観していく(「単婚と複婚」「出自の規則」)というのは、先週までの授業と変わりません。リンク先も同じです。

走婚ー雲南省モソ人の別居通い婚」も、5月に走り書きしたものが、まだ整理できていません。

もう同じ話を二十回ぐらい繰り返していますが、それでも、何度でも言います。いまのSARS関連コロナウイルスは、中国の雲南省のコウモリから人間に感染しました。この問題がきちんと認識され、根本から改善されないかぎりは、十年後、二十年後に、また同じ感染症が繰り返されてしまいます。

17年前に、私はまさにその雲南省にいて、混乱に巻き込まれてしまったのは、今から思えば貴重な経験でした。そのときに記録した資料がたくさんあるのですが、本当に貴重な資料ですから、きちんと整理していくつもりです。



背景となる基礎知識として、遺伝子やDNAや染色体や、あるいは有性生殖といった概念は、高校生レベルだから、知っていて当然かと思ってしまっていましたが、これは、高校で生物を選択した人と、していない人で、分かれますね。

二十年以上前に書いた拙著の一部を紹介します。「『性』と『死』の円環」という一節ですが、著作権保護という意味もあり、いつものなぞなぞをかけています。これも、かなり偏った、おかしな内容かもしれませんが、意味がわからないところがあれば、聞いてください。

原始社会と現代社会のライフサイクルについては、別個にこちらに表を載せておきました。カラハリ砂漠ブッシュマン、などと言っても、具体的な映像がないとイメージが涌きにくいかもしれませんが、いまは、ちょっとGoogle検索をかけると、たくさんの映像や動画が出てきます。とはいえ、そういう映像を見ているだけで勉強になるのなら、大学で授業を受ける必要はないのですが、大学での授業は、とくに人類学では、いま自分たちが暮らしている社会の価値観を、いったん置いておいて、異文化の論理を学ぶという意味があります。

一夫一妻制よりも一夫多妻制のほうが生物の進化という点では合理的だとか、生まれた子どもの三分の一は一歳までに死亡し、成人するのは半数だと、そういう話は一般のメディアではとりあげないか、遅れた、野蛮な風習であり、改善しなければならないと、そういう観点で語られがちなのですが、人類学という学問においては、善悪とか、人権とか、そういう近代的な人間観を、いったん保留して、生物としての人間、人間文化の多様性と相互理解という、そういう観点から、人間や社会を見なおす、ということを学ぶわけです。

昨今は、文明の行き過ぎから、自然に還ろうという思想も盛んになってきています。しかし「自然食品」とか「自然分娩」とか、自然ナントカ、という概念は流行していますが、そこでいう「自然」はイメージであって、本当の意味での自然の生活は、そのイメージとは違うのだ、ということも知る必要があります。



さて、来週、11月の16日ですが、月曜日は、また、お昼前後の時間に、パソコンを打ちながら、というわけにもいかない、会議です。昨年度までの授業ですと、学会や会議や、出張などの場合には、休講にするのがふつうでした。そして年度末、定期試験の前、1月下旬ぐらいに、どこかの曜日の、どこかの時限に、補講、ということになります。月曜日の二限の時間に教室が空いている可能性は低いので、別の曜日の、別の時間になる可能性が高いのです。

しかし、オンラインディスカッションの場合にはどうなるのか、これは、まだ休講という事態になったことがないので、考えていませんでしたが、先月、10月12日は、うかつでした。失礼いたしました。先月は、仮想教室は開いているのに、教員が無断欠席のようになってしまいました。

さて、どうしましょう。たとえば、16日の二限に仮想教室をオープンして、質問やコメントを書き込んでもらい、もしそれに答えられたら答える、そして、答えられなかったぶんは、23日(祝日授業実施日)の二限に、同時並行で答えていく、もしコメントがたくさん出て、間に合わないようなら、12時30分以降も延長するということにしようかと考えています。



記述の自己評価 ★★★☆☆
CE 2020/11/08 JST 作成
CE 2020/11/09 JST 最終更新
蛭川立