蛭川研究室

蛭川立の研究と明治大学での講義・ゼミの関連情報

遠隔通信の技術と展望

感染症の流行により、インターネットを通じた自宅間でのリアルタイム通信の必要度が増している。

通話可能なアプリケーション

LINE

動画通信については、いまは主にLINEを使用している。LINEは今までも海外とのやりとりに使ってきたので、使い慣れている。

LINEはチャット用のアプリとして普及しているが、チャット画面の右下のアイコンをクリックすれば、そのまま音声通信、ビデオ通信ができる。これは、スマホでもパソコンでも使える。

LINEの欠点としては、1人で1個のアカウントしか持てないので、公私など複数のアカウントに分けられないのが問題である。

Skype

Skypeについては、今まで私的な通信のために使ってきたが、逆にアカウントが複数あって整理できていない。スマホからはつながるが、画面が小さいのが難点。

Zoom

Zoomは大学での会議用に、大学からアカウントを受け取って使っている。

背景に自分の好きな写真を入れる機能が面白く、重宝している。

その他のアプリ

Facebookその他にもリアルタイム通信機能はついている。何を選ぶかは、性能だけでなく、相手(や仲間)が何を使っているのかにもよる。

音声だけではいけないのか?

音声だけの通話が必要なら、従来どおり電話を使うことができる。インターネット経由であっても、動画よりは伝えられる情報量は少ないが、情報量が少ないので通信は安定する。

また、服装や部屋の様子などが映らないので、気にする必要がない。もちろん、動画通信でも、資料などを提示して、敢えて自分はカメラに写らないという方法もある。

資料の提示

資料などを見せる必要がある場合には、画像が必要である。自分の顔は映さずに、資料やパソコンの画面だけを映すという方法もある。複数のパソコンやスマホを組み合わせることで、パソコンの画面を映しながら会話する方法を模索している。

動画通信の場合は、解像度が低く、細かい文字が読めないという問題もある。この解像度については、ハード的、ソフト的な制約がある。とくに、スマホは持っていてもパソコンは持っていない、という場合には、制約が大きい。この点は、パソコンの貸与などの対策がこうじられるかもしれない。

通信料金のこと

無料の無線LANがある場所では、インターネットは無料で使い放題である。

しかし、自宅にWi-Fiの電波を飛ばしていない場合には、携帯電話の電波を使うことになる。リアルタイムの動画は情報量が多いため、コストがかかることには注意しておく必要がある。これは、契約しているプランにもよる。

通信速度と機密情報

多くの人が動画で通信をするようになった場合、通信回線の制限で実質通信速度が遅くなったり、途中で途切れたりする可能性がある。これは、逆に画像の解像度を落としたり、音声のみにすることによって改善する。

会話が途切れた場合、音声が本当に途切れたかどうかを確認する方法としては、背景に音楽や、あるいは単純なノイズなどを流すことで確認しやすくなる。ネット上にも川の音や雨の音などの環境音が配信されている。このことは、複数名で同居の場合、他人の音声が聞こえないようにする方法にもなる。

逆に、機密事項を話し合う会議や、カウンセリングを受けたり、プライベートな会話など、自分の会話が同居している家族に聞こえないような方法はあるだろうか。もちろん、できるだけマイクに近い場所で小声で話せば良いのだが、それは、余談ながら、たとえば恋人どうしの親近感をより強めることになるかもしれない。

空間の公私浸透

在宅勤務においては、空間の公私浸透が起こる。公的な労働の領域が自宅に入り込んでくる。たとえ上半身だけであっても、自宅でスーツを着たりメイクをする必要が出てくる。

たとえばLINEでは、ビデオ通話中の「高画質通信」をON/OFFにすることもできる(デフォルトではOFFになっている)。「ぼかし」の機能があって、顔や背景をぼかしたい場合に使う機能だが、逆に細かい資料を見せたい場合は、このエフェクトを最小にする必要がある(デフォルトではすこしエフェクトがかかった状態になる)。

背景に自宅の様子が映ってしまうという問題もある。たとえばZoomだと、背景を消したり自分の好きな画像を入れることができるので、この問題は解決できる。

ヘッドセットを使うと、両手が自由になるが、いっぽうで、対人距離が大幅に縮まる。マイクのすぐ先には相手の両耳があり、両耳の向こうには相手の口がある、という、物理的身体ではありえないような奇妙な体位でコミュニケーションが行われる。もっとも、これは受話器を使う電話でも同じである。

感染症を防ぐために、物理的な対人距離を離すために行われる遠隔通信なのだが、同時に仮想的な対人距離を調整しなければならない。

2020年から未来へ

今は社会が混乱し試行錯誤の状態だが、これからは、ちょっとした用件で、電話と同じような感覚でビデオ通話を使うことになるだろう。技術的にはすでに開発されていた動画通信だが、必要に迫られた結果、あの2020年がきっかけで一気に普及した、と振り返られるようになるだろう。

自宅にとどまることを余儀なくされたとき、電子技術を使って外部世界とつながろうとする人がいる一方で、仮想世界へ向かう人も増えてくるだろう。しかし、仮想世界と外部世界は、かならずしも矛盾しない。たとえば、VRのOculusはFacebookと提携して、個々人の立体像が仮想空間に集合できるような仕組みを作っている。アバターで仮想会議室に集合、といったことも技術的には可能になっている。



CE2020/04/09 JST 作成
CE2020/05/19 JST 最終更新
蛭川立