蛭川研究室

蛭川立の研究と明治大学での講義・ゼミの関連情報

感染予測シミュレーションによる今後の見通し

この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、その正確性は保証されていません[*1]。検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。この記事の内容の信頼性について検証が求められています。確認のための文献や情報源をご存じの方はご提示ください。

 
【この記事は2020年5月22日に更新を止めました。それより新しい状況をふまえた議論は「新型コロナウイルス感染の現状と見通し(試論)」をごらんください。】
 

有効数字と誤差

2003年4月、私が雲南省にいたとき、公式発表では省内のSARS感染者数は0名だった。真偽のほどは確かめようがないが、隣接地域に流行が広がっており、かつある程度の人口があるところで「0名」というのは、調査不足や情報隠蔽を疑いたくなる(雲南省の人口は約四千万人)。いっぽうで、ごく少数であっても、たとえば「2名」などと発表されると、逆に信頼性がおける。

大きな数字であっても、たとえば死亡者が52785名、とピッタリな数字ほど、その正確さを疑う必要がある。なるほど死亡者の数はともかく、死因はそれほど正確に確定できないものだし、重複しやすい。すでに病気に罹り弱っている人に別の病気が感染すれば命取りになるからである。

数え方によって数が変わったり、検査の精度が100%ではない場合には、誤差を示すのが当然であり、誤差が示されていない数字は疑わしい。研究論文では誤差が示されるのが当然だが、役所の数字には誤差が示されていないことが多く、不思議なことである。わざと「52785名」などというピッタリした数字を出して情報の正確さを装っている、というのは勘ぐりすぎだろう。

あるいは、有効数字は二桁ぐらいとみなして、約五万二千人、と書いてもいい。こういうときに、漢数字は便利である。

最新情報の分析

5月22日

日本にかぎって言えば、5月31日に緊急事態を解除するという見通しだが、新規感染者数は0に収束しつつあり、回復者数が増え、感染者数も減り続けている。

しかし、公表されている患者数のピークは1万人強(1万人に1人)であり、欧米に比べて100分の1のオーダーである。なぜ、こんなに少ないのだろうか。

  • 検査数が少ないので見かけ上の患者数が少ない
    • これについては抗原・抗体の検査が進めば実態が明らかになるだろう
    • 限られたサンプルでの調査結果は5月17日以前の記事に書いたとおり
  • 日本人は清潔好きで秩序を重んじるから
    • この可能性については「外出自粛勧告下出勤」に書いたが、それだけでは100倍の違いは説明できない
  • 日本で流行したウイルスと欧米で流行したウイルスは種類が違う
    • この可能性は以前から知られていたことだが、下記で少々検討してみたい

https://bedford.io/images/blog/ncov_nextstrain_2020_03_01.png

https://bedford.io/images/blog/ncov_nextstrain_2020_03_01_wa1.png

auspice
SARS-CoV-2には、大きく3種類の変異があり、東アジア<ヨーロッパ<北米の順に毒性が高い[*2]

日本では東アジア型の変異はすでに1〜2月に流行しており、4〜5月に流行したのはヨーロッパ型の変異だという説が出てきた[*3]

日本ではヨーロッパ型の変異があまり流行しなかったのは、東アジア型の変異に対してすでに免疫ができていたからだ、というのである。

これは驚きだが、その根拠は、季節性のインフルエンザが2019年の12月までは増えつづけたが、例年のように1〜2月の流行が起こらないまま終わってしまったことにあるという。しかし、季節性インフルエンザとSARS-CoVが交差するという仮説には些か無理があるのも事実である。

そのこともまた、マスクや手洗いをするという日本人の習慣が奏効したのではないかという考察を「『病という物語』と認知バイアス」に書いたが、そうではなく、事前にSARS-CoV-2に感染して免疫ができていたから、インフルエンザにも罹りにくかったのだ、という仮説である。それが正しいかどうかも、今後の抗体検査によって確かめられるだろう。

5月17日

厚労省と東大・慶大のグループが独立に行った抗体検査によると、東京都の陽性率はいずれも0.6%だったという。

人口1000万人の東京では、現在の感染者数は1500人、回復者数が3500人と報告されている(合計で2000人に一人の割合)。人口の0.6%というのは、60000人だから、桁違いに多い(200人に一人の割合。感染しても発症する割合は一割程度だということもできる。

しかし、そう結論する前に、以下の問題を検討する必要がある[*4]

  • 検査キットの信頼性
    • 偽陽性(感染していないのに抗体を持っている)の確率は0ではない。かなり高い可能性がある。
  • サンプリング
    • 厚労省の調査では、500人の検査で、陽性は3人だったという。サンプル数が少なすぎる。

下のクルーズ船の分析データと比較して、じっさいの感染者数は200〜1000名に1人、感染しても発症せずに終わる確率は50〜90%だといえる。

中国など、諸外国の疫学的データはどのような数字になっているのだろう。

5月14日

日本では、部分的に緊急事態を解除することになった。

感染者数は、順調に減少し、新規感染者数は、0に向かって収束しつつある。新規感染者数が0になっても、感染者数は横ばいになるだけで、減らないというわけでもなく、回復者数が増えてきているので、感染者数も5月に入ってから、急に減少に転じている。

現在の感染者数はざっと5000人で、16000人が感染、1000人が死亡、10000人が回復、という割合になる。

感染者というのは、有症状感染者の数であって、無症状感染者はその何十倍もいるのではないか、だから、無症状や軽症の場合でも、PCR法で抗原検査を進めるべきだというという意見もある。

特定の集団の全数調査として、3000人が乗っていたクルーズ船では600人(20%)が感染し、症状が出た人が300人、症状が出なかった人が300人と、ほぼ半々だった[*5]

全体の感染者数を、症状が出ている感染者の二倍と見積もると、約一万人となり、これは、一億人の人口に対して、一万人に一人の感染者がいるという計算になる。

CE2020/05/14 JST 追記
CE2020/05/20 JST 修正

5月6日

5月6日に解除予定だった緊急事態が、5月31日に延長された。

f:id:hirukawalaboratory:20200506195115p:plain
5月6日までの全国の感染者数[*6]

5月5日に12081人だった感染者数が、6日になって200人ほど減少した。これで、ピークを越えたのかもしれない。

新規感染者数は減少しているが、まだ100人ていどである。しかし、回復者が300人あったので、差し引きで200名減となった。

今後、感染者数はどう推移するだろうか。

https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/userstorage/000/053/935/990/752faa530d.jpg?ct=1054505c0a95
全国の新規感染者数の実績と予想[*7]
 
https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/userstorage/000/053/935/999/2ab7b4d031.jpg?ct=19c503ba1fe8
東京都の新規感染者数の実績と予想[*8]

これは、ひとつのシミュレーションだが、実際の値とシミュレーションの数値が比較的よく一致している。

緊急事態宣言が出された4月7日の3日後、4月10日ぐらいに新規感染者数がピークに達し、減少に転じている。

接触60%減で新規感染者が横ばい(感染者は直線的に増加)になり、目標の80%減で新規感染者がほとんどいなくなる(感染者数は横ばい)のに対し、実際には70%減にとどまっており、5月31日には100人ぐらいまで減りそうな見通しである。(このシミュレーションでは、回復者の増加は計算されていない。)

(CE2020/05/06 JST 追記)


感染者数と新規感染者数

以下のようなグラフをよく目にする。

https://s.yimg.jp/images/yjtop/hazard/coronavirus/2020/total0421_03.png
 
https://s.yimg.jp/images/yjtop/hazard/coronavirus/2020/graph0421_02.png
2020年4月21日現在の感染の状況[*9]

上のグラフを見ると、感染者はどんどん増えているようにみえるし、下のグラフを見ると、感染者はすでに減少に転じているようにみえる。

上のグラフは「いま、感染している人の数」であり、下のグラフは「今日、新たに感染した人の数」である。つまり、感染者は増えてはいるけれども、増加速度は落ちているということである。

あらためてグラフをみると、東京都の外出自粛要請が出された3月25日ごろから感染者数増加の速度が上がり、4月7日に日本政府が緊急事態宣言を出し、その一週間後ぐらいから増加速度が落ちてきている。

https://graph-stock.com/wp-content/uploads/2020/04/COVID-19InspectionPersons0423-2cream-640x360.png
東京都における検査数と陽性になった新規感染者数[*10]

新規感染者数が一週間おきに増減しているようにみえるのは、週末は検査数が減るという原因によるもので、じっさいの感染者数の変動ではない。

https://memorandum.yamasnet.com/wp-content/uploads/2020/05/%E6%84%9F%E6%9F%93%E8%80%85%E7%A2%BA%E5%AE%9A%E6%95%B0%EF%BC%88%E6%9D%B1%E4%BA%AC%EF%BC%89.gif
5月1日までの新規感染者数を7日間平均でならすと、下のグラフのようにきれいな曲線になる[*11]

諸外国と比較してみた場合、どうだろうか。

https://www.ft.com/__origami/service/image/v2/images/raw/http%3A%2F%2Fcom.ft.imagepublish.upp-prod-us.s3.amazonaws.com%2Ff9f6fc0e-840c-11ea-b872-8db45d5f6714?fit=scale-down&quality=highest&source=next&width=1260
1日あたりの新規感染者数が30人を越えた日より、4月22日(BST)までの集計[*12]

他国と比べると、人口が一億以上である日本の新規感染者数が、しばらく桁違いに低水準で推移していたのが、4月に入ると急に増加しはじめたことがわかる。そして4月の中旬になってやや頭打ちになっている。(こちらのグラフは一週間おきの変動を平均してならしている。)

縦軸が対数グラフになっている。生物の個体数の増加のような指数関数的な(ネズミ算的な)増加の変動を冷静に分析する場合には、対数グラフを用いたほうがよい。そのままの数だと、爆発的に増加している様子だけに目を奪われてしまう。

また、上のグラフは対数グラフではあっても、実数だから、国の人口を考慮していない。日本でも、患者数が一万人ではあるが、人口は一億人だから、感染者数は一万人に一人ということになる。1日あたりの死亡者数は15人だが、日本の人口自体が毎日死亡により3700人失われているから、これはすべての死亡者の250人に一人だということになる。しかも、すでに病気を持っている人が感染症も重症化させやすいので、じっさいには死亡理由は複数であることが多い。(詳細は「日本における出生数、死亡数とその原因」を参照のこと。)

年齢の要因

f:id:hirukawalaboratory:20200505191932p:plain
日本での新型コロナウイルス感染症の年齢別致死率[*13]

また、死亡率が年齢によって極端に違う場合には、すべての年齢層を合わせた致死率の数字にはあまり意味がない。

高齢になるほど致死率が高い場合は、それ以外の要因での致死率も比較検討しなければならない。

https://d2l930y2yx77uc.cloudfront.net/production/uploads/images/15538133/picture_pc_a2a7e582936f04f676563aa150711c54.png
日本における年齢別10年後生存率[*14]

たとえば70歳の人が80歳になるまでに死んでしまう確率は約20%である。70歳の人がこれから10年間に新型コロナウイルス感染症に感染して死亡する確率が5%だとしても、これは罹患しなくても20%が死亡するという数字と比較して検討しなければならない。(10年間死亡率を例にとることには根拠がなく、乱暴な議論ではあるが。)

国別など、集団間で死亡率を比較する場合、その社会の高齢化の度合いも考慮する必要がある。

SIRモデル

最初のグラフに戻って、ごく簡単に感染者数の増減を式にしてみると、以下のようになる。(本当は「感染者数」=「有症状感染者数」+「無症状感染者数」なのだが、5月14日の最新情報に書いたように、実際の感染者は報告されている感染者の二倍ぐらいと推測される)

「今日の感染者数」
=「昨日の感染者数」+「昨日の新規感染者数」
ー「昨日の回復者数」ー「昨日の死亡者数」
 
「明日の感染者数」
=「今日の感染者数」+「今日の新規感染者数」
ー「今日の回復者数」ー「今日の死亡者数」

そして、感染者数の増加は、

「感染者数の増加」=「今日の新規感染者数」ー「今日の回復者数」

となる。ところで、まだ感染していない人が、一日の間に感染する確率は、

「まだ感染していない人が新たに感染する確率」
=「一日に接触する感染者数」×「感染率」

とあらわせる。新規感染者数は、この確率に、未感染者数の人数を掛けあわせたもの、つまり

「新規感染者数」=「未感染者数」×(「感染者数」×「感染率」)

となる。いっぽう、

「回復者数」=「感染者数」×「回復率」

なので、これらをあわせて代入すると、

「感染者数の増加」
=(「感染者数」×「感染率」)×「未感染者数」
ー(「感染者数」×「回復率」)

となる。これが、SIRモデルにおける微分方程式


 \frac{d}{dx}I(t)=βS(t)I(t)-γI(t)

の意味するところである。この種の微分方程式は解析的には解けないものだが、変数にいろいろな値を入れて、さまざまなシミュレーションが行われている。

微分方程式のシミュレーションというと難しそうだが、上に書いたような足し算や引き算をそのまま表計算ソフトに打ち込んでも、それなりの計算はできる[*15]

接触減はどの程度感染者を減らせるか

さて、死亡者の数を減らし、回復者の数を増やすのは、医療の仕事である。

いっぽう、まだ感染していない人間にできることは、日々の接触者数と接触の濃厚さを減らすことである。(当座、街にいるひとたちの誰が感染者かはわからない。いまの日本では感染者は一万人に一人しかいないという計算になる。)それは、自分の身を感染から守ることでもあり、また無自覚なまま感染者になってしまい、未感染者に感染させることを防ぐためでもある。

しかし、接触をゼロにすることはできない。では、どれぐらい減らせばいいのだろうか。

https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/b/0/550/img_b06490ee9b44a1777e67bc64ae1f7fd743891.jpg
接触減の割合による感染者数の試算(2020年4月17日)[*16]

接触6割減で感染者数は横ばいになり、それよりすこしでも低いと指数関数的に増えてしまい、逆に7割以上ならじゅうぶん減少する。それ以上減らしても、あまり効果はない。

https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXMZO5810333015042020CR8001-PB1-1.jpg?auto=format%2Ccompress&ch=Width%2CDPR&fit=max&ixlib=java-1.2.0&s=9c3601dbbf6db100f65cdc861b5bcc7d
接触をまったく減らさなかった場合のシミュレーション。[*17]

もし接触をまったく減らさなければ、感染者は指数関数的に急増し、その後は低下する。医療崩壊が起こり、約3ヶ月で40万の死亡者を出すという試算である。日本での(感染症流行前の)一年あたりの死者数が137万人(3ヶ月当りでは34万人)だから、それに匹敵する数である。逆にいえば、感染を完全になくしても、日本では3ヶ月間に30万人の人が死亡するということでもある。なんの対策もしなければ合計で70万人の死者が出るかといえば、そうではない。病気は重複するし、老衰死は一定の割合で起こるからである。(ちなみに日本における出生数は1年あたり86万人であり、3ヶ月だと20万人になる。)

https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXMZO5796187011042020CZ8001-PN1-2.jpg?auto=format%2Ccompress&ch=Width%2CDPR&fit=max&ixlib=java-1.2.0&s=6d6f9134ce34cbc135b6f8b5b079210b
接触減の割合をより細かく仮定した場合のシミュレーション[*18]

接触を7〜8割減らせば、一ヶ月程度でじゅうぶんに収束させられるというのが、緊急事態を5月上旬までとする根拠である。都市部での人の動きが日々モニターされているが、現段階では東京で7割前後の減少となっており、地方都市では目標を達成していないところが多い[*19]。ただし、割合だけが問題ではない。10000人が3000人に減ることと、1000人が300人に減ることでは、意味が違う。

https://wedge.ismedia.jp/mwimgs/0/5/-/img_05674d1d7ebc8cc1cd2abc4d2e576124480497.png
台湾大学の徐丞志による試算。日本では4月16日〜26日に新規感染者数のピークが来ると予測している[*20]

また別の試算では、日本では4月16日〜26日に新規感染者数のピークが来ると予測しているが、じっさいの新規感染者数は、楽観的なシナリオよりも、さらに早く減少している。緊急事態宣言による自粛勧告が、適切に機能しているように思われる。また、それに先立って東京都が三月の時点で自粛勧告を出していたのも早い対応だったといえる。

社会現象の予測不可能性

もっとも、見通しが楽観的だからといって、人々が楽観的に行動しすぎると事態はまた悪化してしまう。社会的モデルの自己言及的な難しさである。一般に、悲観的なシナリオにしたがって努力すれば事態は早く改善するし、楽観的なシナリオにしたがって楽しめば、事態を悪化させてしまう。

多少のリスクがあっても楽観的に楽しもうと考えるのは個人の自由である。しかし、感染症の場合は、個人の意思決定が社会全体の状況を変えてしまう。緊急事態宣言とは、社会の秩序を保つために、一定の期間、個人の自由を制限するという発想である。

これは、負のフィードバックが起こる場合だが、正のフィードバックが起こることもある。

悲観的なシナリオにしたがって行動すれば事態は改善するかといえば、そうでもなく、逆に、悲観的な行動が悲観的なシナリオを「自己成就」させてしまうという逆の効果もある。

「あの銀行はつぶれるらしい」という噂が広がり、人々が慌てて預金を引き出すと、じっさいに銀行はつぶれてしまう。「医療崩壊が起こる」という不安が広がって、患者が「その前に診察してもらおう」と殺到したり、医者が他の病気を後回しにしてしまうと、実際に医療崩壊が起こってしまう。

発散/収束/振動

しかし、新規感染者数が0になったとしても、それは感染者数が増えなくなるということであり、感染者数が0になることを意味しない。感染者数が爆発的に増える(発散しかけてまた減少する)ことを防いだというだけで、接触を元通りに戻せば、感染者数はまた増加に転じてしまう。

ただし、新規感染者数を0に保てば、回復者と死亡者のぶんだけ、じょじょに感染者数は減っていく。高齢の感染者が死亡していくことは残念なことだが、しかし高齢者が死亡する原因はガンや心臓病など多数ある。老衰死、つまり病気や事故以外の死亡も、日本では一ヶ月あたり一万人である。

将来の数値がどうなるかについては、数学的には三つの可能性に分類される。

  1. 発散
  2. 収束
  3. 振動

「発散」というのは、感染者数が無限に増えるということだが、これはありえない。

次の可能性は「収束」である。数学的には「終息」という言葉はないが、強いて言えば「0へ収束する」と解せる。だから、感染者数が0に収束しなければ「終息」にはならない。じっさいには、患者数は当面、0にはならず、ほどほどの数に収束するか、あるいは季節性インフルエンザのように、一年サイクルで「振動」しつづけることになるだろう。振動が起こる理由のひとつは、インフルエンザウイルスが高温多湿に弱いからである。

ウイルスと宿主の共進化(蛇足)

RNAウイルスは短期間でさまざまな変異へと進化していくので予断を許さない。しかし、ウイルスからすれば、宿主に死ぬほどの打撃を与えるのは失敗である。逆に致命的なウイルスに感染した場合、宿主は子を産んで自らの老衰死を早めるという方略をとることがある。それに対して、ある種のウイルスは、宿主が老衰死するのを妨害し、むしろ長生きさせようとする。

宿主に寄生しつつ、宿主が、感染したと自覚するほどの症状をあらわさず、より元気で社交的になり、長生きする変異のほうが感染力が強く、集団に広がっていく。

これは、ウイルスの弱毒化と呼ばれる現象であり、SARSの病原体であるSARS-CoVよりもCOVID-19の病原体であるSARS-CoV-2のほうが重症化しにくいのは、そのためかもしれない。

日々、多数の無害なウイルス(と、少数の有益なウイルス)が感染を繰り返しているのだが、それは感染者にも気づかれず、気づかないから医学の対象にもならない。

これは、非常に長い目でみれば、生物の進化のプロセスだといえる。



(5月5日追記)
SEIRモデルシミュレータは、数値を変化させると時系列のグラフをつくってくれるインタラクティブなサイトである。

記述の自己評価 ★★★☆☆
(この記事は、数字の解釈など、考え方を示したものであって、個々のデータについての専門的な知識の裏付けがない。ネット上から拾い集めた図表を読み解くといいながら、まず引用が正確ではない。それらを確認するための一次資料となる研究に当たっていない。肯定的なことばかり書くと御用学者ではないかと疑われそうだが、幸か不幸か、開示すべき利益相反はない。本音をいえば、多少の助成金でも頂いて研究助手を募集したいぐらいである。)
CE2020/04/22 JST 作成
CE2020/07/08 JST 最終更新
蛭川立

*1:免責事項にかんしては「Wikipedia:医療に関する免責事項」に準じています。

*2:Trevor Bedford (2020). 「Cryptic transmission of novel coronavirus revealed by genomic epidemiology」『bedford lab』(2020/05/23 JST 最終閲覧)

*3:Yasuhiko Kamikubo & Atsushi Takahashi (2020). Paradoxical dynamics of SARS-CoV-2 by herd immunity and antibody-dependent enhancement. この論文については田口淳一 (2020).「コロナウイルス対策について vol.6 東京ミッドタウンクリニック 院長 田口淳一医師より皆様へ」『東京ミッドタウンクリニック』(2020/05/23 JST 最終閲覧)に日本語の解説がある。

*4:個人のブログにDORA (2020).「陽性率と偽陽性率が同じレベルとは。」『DORAのブログ』(2020/05/23 JST 最終閲覧)という批判がある。

*5:国立感染症研究所 (2020).「現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例【更新】」(2020/05/15 JST 最終閲覧)

*6:新型コロナウイルス感染症まとめ 国内外の発生の状況」『Yahoo! JAPAN』(2020/05/09 JST 最終閲覧)(孫引き)

*7:タッチ_ (2020).「武漢ウイルス・緊急事態宣言後の状況(27日目)」『人馬一体!はそれとして…w』(2020/05/09 JST 最終閲覧)

*8:タッチ_ (2020).「武漢ウイルス・緊急事態宣言後の状況(27日目)」『人馬一体!はそれとして…w』(2020/05/09 JST 最終閲覧)

*9:新型コロナウイルス感染症まとめ 国内外の発生の状況」『Yahoo! JAPAN』(2020/05/09 JST 最終閲覧)(孫引き)

*10:東京都の1日あたりの新型コロナウイルス検査人数と感染者数の推移のグラフ」『Graph Stock』(2020/04/28 JST 最終閲覧)(孫引き)

*11:YAMA (2020).「東京都の感染者数の7日移動平均をプロット – コロナウィルスとの闘い」『YAMA'S MEMORANDUM』(2020/05/09 JST 最終閲覧)

*12:Financial Times.FT Visual & Data Journalism team (2020). Coronavirus tracked: the latest figures as the pandemic spreads | Free to read Financial Times.(2020/03/31 JST 最終閲覧)

*13:忽那賢志 (2020).「小児と新型コロナ 重症化しないから安心ってホント?」『Yahoo! JAPANニュース』(2020/05/06 JST 最終閲覧)

*14:梶原健司 (2019). 「10年後に何%の確率で生きているか。」(2020/05/06 JST 最終閲覧)

*15:関沢洋一「感染症についてSIRモデルから学んだこと」には、Excelを使った簡単な計算方法が載っている。

*16:中村潤児 (2020). 「接触頻度によって著しく変化する感染者数の挙動」『新型コロナウイルス感染者数推移の予測』(2020/04/17 JST 最終閲覧)

*17:[無署名記事](2020).「『接触8割減の徹底を』北大教授、最大40万人超死亡」『日本経済新聞』(2020/04/22 JST 最終閲覧)

*18:前村聡 (2020).「『接触7割減』では収束まで長期化 北大教授が警鐘」『日本経済新聞』(2020/04/23 JST 最終閲覧)

*19:新型コロナウイルス感染症対策~人流の減少率~」『内閣官房』(2020/04/23 JST 最終閲覧)

*20:野嶋剛 (2020). 「台湾の研究者が日本の新型コロナ感染拡大を試算、5万人感染で『第二の湖北省になる』と警告」『WEDGE Infinity』(2020/04/23 JST 最終閲覧)

遠隔通信の技術と展望

感染症の流行により、インターネットを通じた自宅間でのリアルタイム通信の必要度が増している。

通話可能なアプリケーション

LINE

動画通信については、いまは主にLINEを使用している。LINEは今までも海外とのやりとりに使ってきたので、使い慣れている。

LINEはチャット用のアプリとして普及しているが、チャット画面の右下のアイコンをクリックすれば、そのまま音声通信、ビデオ通信ができる。これは、スマホでもパソコンでも使える。

LINEの欠点としては、1人で1個のアカウントしか持てないので、公私など複数のアカウントに分けられないのが問題である。

Skype

Skypeについては、今まで私的な通信のために使ってきたが、逆にアカウントが複数あって整理できていない。スマホからはつながるが、画面が小さいのが難点。

Zoom

Zoomは大学での会議用に、大学からアカウントを受け取って使っている。

背景に自分の好きな写真を入れる機能が面白く、重宝している。

その他のアプリ

Facebookその他にもリアルタイム通信機能はついている。何を選ぶかは、性能だけでなく、相手(や仲間)が何を使っているのかにもよる。

音声だけではいけないのか?

音声だけの通話が必要なら、従来どおり電話を使うことができる。インターネット経由であっても、動画よりは伝えられる情報量は少ないが、情報量が少ないので通信は安定する。

また、服装や部屋の様子などが映らないので、気にする必要がない。もちろん、動画通信でも、資料などを提示して、敢えて自分はカメラに写らないという方法もある。

資料の提示

資料などを見せる必要がある場合には、画像が必要である。自分の顔は映さずに、資料やパソコンの画面だけを映すという方法もある。複数のパソコンやスマホを組み合わせることで、パソコンの画面を映しながら会話する方法を模索している。

動画通信の場合は、解像度が低く、細かい文字が読めないという問題もある。この解像度については、ハード的、ソフト的な制約がある。とくに、スマホは持っていてもパソコンは持っていない、という場合には、制約が大きい。この点は、パソコンの貸与などの対策がこうじられるかもしれない。

通信料金のこと

無料の無線LANがある場所では、インターネットは無料で使い放題である。

しかし、自宅にWi-Fiの電波を飛ばしていない場合には、携帯電話の電波を使うことになる。リアルタイムの動画は情報量が多いため、コストがかかることには注意しておく必要がある。これは、契約しているプランにもよる。

通信速度と機密情報

多くの人が動画で通信をするようになった場合、通信回線の制限で実質通信速度が遅くなったり、途中で途切れたりする可能性がある。これは、逆に画像の解像度を落としたり、音声のみにすることによって改善する。

会話が途切れた場合、音声が本当に途切れたかどうかを確認する方法としては、背景に音楽や、あるいは単純なノイズなどを流すことで確認しやすくなる。ネット上にも川の音や雨の音などの環境音が配信されている。このことは、複数名で同居の場合、他人の音声が聞こえないようにする方法にもなる。

逆に、機密事項を話し合う会議や、カウンセリングを受けたり、プライベートな会話など、自分の会話が同居している家族に聞こえないような方法はあるだろうか。もちろん、できるだけマイクに近い場所で小声で話せば良いのだが、それは、余談ながら、たとえば恋人どうしの親近感をより強めることになるかもしれない。

空間の公私浸透

在宅勤務においては、空間の公私浸透が起こる。公的な労働の領域が自宅に入り込んでくる。たとえ上半身だけであっても、自宅でスーツを着たりメイクをする必要が出てくる。

たとえばLINEでは、ビデオ通話中の「高画質通信」をON/OFFにすることもできる(デフォルトではOFFになっている)。「ぼかし」の機能があって、顔や背景をぼかしたい場合に使う機能だが、逆に細かい資料を見せたい場合は、このエフェクトを最小にする必要がある(デフォルトではすこしエフェクトがかかった状態になる)。

背景に自宅の様子が映ってしまうという問題もある。たとえばZoomだと、背景を消したり自分の好きな画像を入れることができるので、この問題は解決できる。

ヘッドセットを使うと、両手が自由になるが、いっぽうで、対人距離が大幅に縮まる。マイクのすぐ先には相手の両耳があり、両耳の向こうには相手の口がある、という、物理的身体ではありえないような奇妙な体位でコミュニケーションが行われる。もっとも、これは受話器を使う電話でも同じである。

感染症を防ぐために、物理的な対人距離を離すために行われる遠隔通信なのだが、同時に仮想的な対人距離を調整しなければならない。

2020年から未来へ

今は社会が混乱し試行錯誤の状態だが、これからは、ちょっとした用件で、電話と同じような感覚でビデオ通話を使うことになるだろう。技術的にはすでに開発されていた動画通信だが、必要に迫られた結果、あの2020年がきっかけで一気に普及した、と振り返られるようになるだろう。

自宅にとどまることを余儀なくされたとき、電子技術を使って外部世界とつながろうとする人がいる一方で、仮想世界へ向かう人も増えてくるだろう。しかし、仮想世界と外部世界は、かならずしも矛盾しない。たとえば、VRのOculusはFacebookと提携して、個々人の立体像が仮想空間に集合できるような仕組みを作っている。アバターで仮想会議室に集合、といったことも技術的には可能になっている。



CE2020/04/09 JST 作成
CE2020/05/19 JST 最終更新
蛭川立

睡眠時無呼吸症候群・周期性四肢運動障害

この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、その正確性は保証されていません[*1]。検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。この記事の内容の信頼性について検証が求められています。確認のための文献や情報源をご存じの方はご提示ください。

この記事は特定の薬剤や治療法の効能や適法性を保証するものではありません。個々の薬剤や治療法の使用、売買等については、当該国または地域の法令に従ってください。




2018年5月24日の体組成計計測値

2018年の5月に入って、体脂肪率が正常範囲の上限値である22%にまで下がった。このタイミングで、5月10日、終夜睡眠ポリグラフ検査を行った。去年の九月の検査で発見された睡眠時無呼吸は、ほぼ完全に治っていた。

https://keiyu.or.jp/msac/wp-content/uploads/2021/04/yomo_03.jpg
ヒトとチンパンジー咽頭[*2]
 
https://www.brh.co.jp/publication/journal/102/rp/research01/img/figure06@2x.jpg
ヒトは複雑な子音を発声できるが、「いびき」も子音の一種である[*3]

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群を疑って、吉祥寺睡眠メディカルクリニックを受診したのは、2012年のことであった。
www.tokyo-sleep.jp

パルスオキシメーターを装着してひと晩計測した。赤色光・近赤外線を反射させて、動脈血の酸素飽和度(SpO2)を測定する。


帝人の酸素飽和度モニタPULSOX®-Meシリーズ

試しにハタ・ヨーガの吸息の保息(antara kumbhaka)を行ってみたところ(→「瞑想時の脳波」)、酸素飽和度は95%まで下がった。脳が低酸素状態になると、神経細胞を保護するためにDMT(ジメチルトリプタミン)が分泌され、アヤワスカ茶を服用したときと同じような体験が起こると考えられている(→「DMTーありふれた構造の特異な物質」)。

この時にはとくに問題は見つからなかったが、精密検査のため、国立精神・神経医療研究センター睡眠障害センターを紹介された。

終夜睡眠ポリグラフ検査

2013年から2014年にかけては、イギリス、オーストラリアと、在外研究で海外に出ていた。帰国し、ようやく本格的な終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査を受けたのは、それから5年経った、2017年の9月である。これで、睡眠時無呼吸症候群や、周期性四肢運動障害・レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)などが発見できる。




(左)センサー着用前、「「終夜検査の様子」を自撮りしようとしている様子」を自撮りしている凜々しい姿
(右)センサー着用後の無残な姿
国立精神・神経医療研究センター病院三階南病棟)

国立精神・神経医療研究センターで終夜睡眠ポリグラフ(PSG: polysomnography)検査を行った。心電図用の電極と、脳波、手足の動きを計る筋電の電極が貼りつけられ、胸部と腹部には呼吸の度合いを測る帯が巻かれ、鼻には呼吸を計測するセンサーなどをつけられる。天井に設置されたカメラ(右上)で、寝ている閒、ずっと撮影される。

こんなものをつけて眠れるはずがない。ふとんの中で悶々と時間を過ごす。イライラして我慢できなくなった。「こんなものをつけて眠れるはずがない。みんな、立ち上がろう」と言って、立ち上がって鼻のセンサーをちぎり捨てた。驚いて飛び起きた。夢だった。本当に鼻のセンサーを外していた。ナースコールのボタンを押し、スタッフを呼び出す。睡眠薬を飲ませてくれた。そして意識を失っているうちに検査は終わった。

この精密検査で、睡眠時無呼吸が見つかった。いびきが酷く、寝ている間に呼吸が止まってしまう、という病気である。


終夜睡眠ポリグラフの結果。午前0時から1時にかけて、酸素飽和度が下がっている。
 

拡大図。呼吸が乱れ、酸素飽和度が67%まで下がっている。

 

AHI(無呼吸低呼吸指数)、つまり一時間あたり呼吸停止の回数が20回をこえると、保険適用による治療の対象になるのだという。

https://www.respiallergy.com/image/mukokyu/zu_02.gif
AHIの値を20で分けた場合の生命予後[*4]

AHIが20以上の状態を10年も続けていれば、生存率は半分になるという。その原因は、おもに循環器系の疾患である。

CPAP

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:経鼻的持続陽圧)という、睡眠中に喉に空気を送り込んで、いびきをかかないようにする、そういう装置を、毎晩つけて寝ることで、閉塞性睡眠時無呼吸の症状は抑えることができる。


CPAP国立精神・神経医療研究センター病院

CPAPは人工呼吸器のような装置で、これをつけて寝るのは、かなり邪魔になる。慣れないと、かえって眠れなくなる。

www.philips.co.jp
フィリップスのCPAPドリームステーション

毎晩の計測結果は、無線でフィリップスのサーバーに送られ、クラウド経由で病院からアクセスできる。

DreamMapper

DreamMapper

  • Philips Respironics
  • メディカル
  • 無料

データはスマホのアプリからも見ることができる。


2018年4月17〜18日のAHI(無呼吸低呼吸指数)は6.9。グラフは直近の7日間の値。

呼吸停止の回数、AHIは、CPAPによる治療開始前の、毎時23回よりは大幅に改善している。毎時5回が治療の目安である。

肥満の改善

睡眠時無呼吸症候群を積極的に治療する確実な方法はない。たるんだ喉を切除する手術もあるらしいが、かなり乱暴な方法なので、お勧めはできないと主治医の亀井先生は言った。消極的な方法ではあるが、一生、CPAPをつけて寝るしかないという。

小平にある国立精神・神経医療研究センター病院を退院し、新宿の晴和病院に移った。都心の病院で夜だけ過ごし、昼は出勤する「ナイト・ホスピタル」というプログラムである。

担当の主治医は、東大病院から来た上瀬大樹先生になった。上瀬先生は、脂質代謝と脳機能の関係に独自の見解をお持ちだった。

まずは肥満の改善から。肥満は万病の元だし、見た目も悪い。喉のたるみを減らすことで、いびきも改善できるかもしれない。

脂質よりは炭水化物を抑えるというダイエットを実行した。具体的には、米やパンをやめて、おかずだけをたべるといった方法である。

体重は、2015年には78kgで、これは英語圏での生活で脂っこいものを食べすぎたからでもあり、日本に戻ってからはだいぶ体重が減った。

CPAPをつけはじめた時に67kgだったのだが、さらに5kg減らして、62kgにまで落とした。78kgに比べれば、16kg減ったということになる。過食症が治ったということでもある。


 

2018年5月10〜11日のPSG検査結果(神経研究所付属晴和病院

AHIは去年9月の23から2に激減した。5以下であれば睡眠時無呼吸は完治したということになる。

周期性四肢運動障害

今回の検査で異常値を示したのは、周期性四肢運動指数、つまり、寝ている間にどれぐらい脚が動いたか、である。毎時2.2から21.4回に増加しており、15回以上が、周期性四肢運動障害の目安になる。


むずむず脚症候群(RLS)の鉄-ドパミン仮説[*5]

鉄分の不足とドーパミンの不足が関係している可能性があるということで、血液検査を行った。鉄分は50μg/㎗で、男性の正常値である60〜210μg/㎗を下回っていた。しかし、鉄の蓄えであるフェリチンは162.2ng/㎖で、これは男性の正常値である21〜282ng/㎖の範囲内だったため、とくに治療するほどのことはない、ということになった。


「不足が気になる女性」向けに配合された鉄と葉酸サプリメント[*6]

薬を処方されるようなことはなかったが、ドラッグストアで鉄と葉酸サプリメントを買い、服用するようになった。鉄は月経中に不足しがちであり、葉酸は胎児の神経系の発達に必要ということで、なぜかまとめて女性向けということになっているらしい。

精神・神経疾患との関係では、鉄の不足も葉酸の不足も、いずれもうつ病のリスクを高めるという研究がある[*7]。私じしんはうつ病とは診断されていないが、気分障害睡眠障害には共通する栄養学的原因があると考えられている。

付記:睡眠時無呼吸の再発と再治療

その後、歳とともに体重は徐々に再増加し、2022年に入ったころには、また70kgを超えた。3月に人間ドックを受けた結果、高脂血症脂肪肝が再発していた。

パルスオキシメーター、リングO2を購入した。

新型コロナウイルス感染症の自宅待機の症状を自己管理するということで、個人用のパルスオキシメーターが各種、出回るようになったが、指先に挟むタイプだと外れやすい。指輪型だと精度は悪いが、一晩中つけていても外れないという利便性がある。

4月のAHIの測定値の最大値は20を超えていた。保険適用レベルである。そのタイミングで、以前に睡眠サプリのことで話をしていた、精神科医の江越正敏先生との再会があった。
www.fire-method.com

意外なことに、ファイヤークリニックという、ダイエット専門のクリニックを起業したのだという。飽食の時代、人々の痩身願望につけ入り、暴利を貪る悪徳商法、いかにも怪しい。江越先生とはずいぶん議論をしたが、その内容は、ここでは省く。

研究協力も兼ねてファイヤー方式の減量プログラムに参加し、2ヶ月かけて体重を10kg減らした。


2022年の前半の体重の推移

睡眠中にいびきをかいていた時間[*8]

AHI(血中酸素濃度の低下頻度)
5以下が正常値で、20以上が保険適用

減量と並行して、睡眠時無呼吸もふたたび改善。眠りも深くなり、朝の眠気もだいぶ改善した。
(もうすこし書き加えて整理します。)



記述の自己評価 ★★☆☆☆
CE2018/03/30 JST 作成
CE2022/07/04 JST 最終更新
蛭川立

*1:免責事項にかんしては「Wikipedia:医療に関する免責事項」に準じています。

*2:“いびき”は無呼吸への第一歩 | 守谷いびき・無呼吸センター(孫引き)

*3:RESEARCH サルの発声から見るヒトの言語の起源 | JT生命誌研究館

*4:無呼吸症候群|中島アレルギー・呼吸器内科クリニック(孫引き)

*5:宮本雅之・宮本智之・岩波正興・鈴木圭輔・平田幸一 (2009).「Restless legs syndromeの病態生理」『Brain and Nerve』61(5), 523-532.

*6:

*7:功刀浩・古賀賀恵・小川眞太郎 (2015).「うつ病患者における栄養学的異常」『日本生物学的精神医学会誌』26(1), 54-58.

*8:

Sleep Cycle: スマートアラーム目覚まし時計

Sleep Cycle: スマートアラーム目覚まし時計

  • Sleep Cycle AB
  • ヘルスケア/フィットネス
  • 無料

通信アプリへの対応

「テレワーク」の普及にしたがって、各種の動画通信アプリを使うようになったが、SNSなども含めて、対応できるものを表にまとめておく。

サービス名 文字 音声・動画
電話・SMS
Twitter
Facebook
LINE
Skype
Zoom
Google -
  • もちろん、ふつうの電子メールはできる。メッセージ機能は、長い文章には向かない。
  • もちろん、ふつうの電話はできる。ただし、有料である。
  • スマホ、ノートPC、デスクトップ機と使い分けているが、資料を見ながら長時間話をする場合は、デスクトップ機が良い。デスクトップではiMacを使っているが、Skypeが動かない。

CE2020/08/14 JST 作成
蛭川

新型コロナウイルス感染の現状と見通し【覚書】

この項目は、医学に関連した書きかけの項目です。この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、その正確性は保証されていません[*1]。検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。この記事の内容の信頼性について検証が求められています。確認のための文献や情報源をご存じの方はご提示ください。

追記

7月中旬の時点では、新規感染[判明]者の急増は、検査数が増加したことによる見かけの増加であり、死亡者数がほぼ0で横ばいなので、日本での感染は終わりつつあるということを書いた。

https://pbs.twimg.com/media/EjJmq9HVgAAPnwt?format=png&name=900x900
2020年1月〜9月の日本での新型コロナウイルス感染症の流行状況[*1]

8〜9月と、新規感染[判明]者数は、順調に減り続けた。しかし、死亡数は遅れて増え始め、15人/日程度まで増え、その後、またすこし減少傾向にある。これは、5月のピーク時の約1/4である。

CE2020/10/08 JST 追記



緊急事態の解除によって規制がゆるんでから、また感染者が増加してきて、第二波が来たともいわれる。

国際的には感染(判明)者の少ない日本だが(後述)人口が密集しており連鎖的な感染が起こる可能性が危惧されている東京都の状況を分析してみたい。なおこの試論(私論)は、自分なりに、できるだけ冷静に数字を比較してみたいと思って書いたものではあるが、結果的に、報道されていることよりは、やや楽観的な分析になった。それと、早く感染が落ち着いてほしいという希望的な気持ちは、分けたつもりである。

見かけ上の感染者数は検査数に依存する

f:id:hirukawalaboratory:20200713184142p:plain
 
f:id:hirukawalaboratory:20200713184211p:plain
 
f:id:hirukawalaboratory:20200713184229p:plain
東京都の感染者数と検査件数の推移(2020年7月12日まで)[*2]

いちばん上の、新規感染者数のグラフだけを見ると、6月から新規感染者数が急増し、5月のピーク時を超えて史上最高になっているようにみえる。(数字のオーダーからして、たとえば140人というのは、東京都の人口である1400万人の10万人に1人である。)しかし、これだけをもって、規制が緩んだから第二波が来た、という結論にはならない。

1日あたりの新規感染者数は、感染者数ではない。緊急事態宣言下にあった4月と5月の2ヶ月間で、感染者の増加が止まり、急速に減少した。6月には低い水準で推移していたが、7月からはまたすこし増加してきている。

しかし「(新規)感染者数」というのは正確な表現ではない。「検査によって感染していることが判明した人数」のことである。「感染しているのに検査していない人数」は含まれていない。

下の、検査数の推移をみると、PCR法によるウイルスの検査は5月から順調に増加している。検査が増えれば「検査によって感染していることが判明した人数」も増える。

https://pbs.twimg.com/media/EcIlNIbUcAA_FlP?format=png&name=900x900
東京都のPCR法による検査と陽性率の推移[*3]

検査の陽性率をみると、陽性率もすこし上がっている。検査が増えたから見かけ上の感染者数が増えただけなら、陽性率は変わらないはずだから、ただ検査数が増えたからだ、という仮説は成り立たない、

しかし、サンプルは極端に偏っている。どういう人たちが検査されたのかが問題である。もしランダムサンプリングなら、陽性率は真の感染率になるから、少なくて10万人に1人ぐらい、0.001%から、多くても100人に1人ぐらい、1%は超えないだろう。

感染が拡大していたころは、疑わしい症状が出ていた人を中心に検査していたので、最大で25%ぐらいであった。現在は、都心の飲食店関係者などを集中的に検査しているので、それもまた考慮する必要がある。なお、感染拡大前にはだいたい1%で推移していた。これは後で見る抗体検査の陽性率に近い値である。

重症者数は減っている

検査すれば感染者が出てくるということは、「感染しているのに検査していない人数」が、もっとたくさんいることになる。つまり、この新型コロナウイルス感染症は(とくに若年齢層では)、重症化率、死亡率が非常に低い病気であり、当初から多数の感染者がいたのだが、ほとんどが発症せず、あるいは無症状だったということだ。もしウイルスが変異したり、変異したウイルスが海外から持ち込まれたのであれば、より重症化率、死亡率の低いウイルスだということになる。

では、本当の「感染者数」は、どれぐらいいるのだろうか。その推定が難しいのは、感染しても発症しない人や、軽症で終わる人が多いからである。

日本などアジアでは欧米よりもはるかに感染率が低いようにみえるのは、検査数が少ないからだという説がある。しかし、欧米では重傷者や死亡者も多い。(不幸なことに)重症者や死亡者の人数が、感染者数の確実な指標になる。

しかし、感染して重症になる人は病院に来ることが多いから、その人数はわかる。

f:id:hirukawalaboratory:20200718171956p:plain
東京都の重症患者数の推移(2020年7月18日まで)[*4]
 
https://news-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-tpc/images/story/2020/7/18/1595037002_tokyo.png
東京都の人工呼吸器が必要な重症患者数(2020年7月17日まで)[*5]

「感染して重症になった人」は、5月にピークの100人に達した後、ほぼ一定の割合で減少しつづけている。【追記】なお、7月の中旬に入って増加に転じているので注意が必要である。いまのところ、5人から10人へといった増加は、まだ誤差の範囲内であり、増減を論じられる数ではない。【さらに追記】より重症な、人工呼吸器が必要な重症患者数にかぎってみると、4月下旬をピークに単調に減少しており、7月に入っても減少傾向は変わっていない。

重症者の定義は曖昧なので、死亡者数のほうが確実な指標になるのだが、幸いなことに、東京都ではほぼゼロで推移しているので、計算できない。

致死率は年齢によって大きく違うのだが、日本では1%ぐらいである。、本当の感染者数は、死者数の100倍いることになる。死者数がゼロなら計算のしようがないから、重症者数を指標にしてみよう。5月のピーク時には(検査によって判明した)感染者数は2000人で、重症者数は100人であった。重症化率は5%だと計算できる。その後、重症者数は減り続け、10人になった。これを20倍すると、ピーク時と同様の検査をすることで判明するであろう感染者数は、200人しかいないことになる。

現在の感染者数が1000人を越えたということと、重症者数から推定される感染者数が200人まで減ったという数字との矛盾は、どう説明すれば良いのだろうか。

あらためて確認しておく必要があるのだが、「感染者数」と言われているのは、「検査によって感染していることが判明した人数」のことである。特定の集団に対する検査が増えたことを差し引けば、「実際の感染者数は」が増えているとはいえないし、減っているかもしれない。

検査の数が増えると検査の精度が下がるのも事実である。検査の失敗には偽陰性(感染しているのに感染していないという結果が出てしまう場合)と擬陽性(感染していないのにしているという結果が出てしまう場合)がある。基準を厳しくすると偽陰性が増える、つまり感染している人を見逃してしまう。偽陰性にならないいように基準をゆるめると、擬陽性が増える。それゆえ、検査数が増え、しかも検査の精度が下がると、擬陽性が増え、見かけ上の感染者数はさらに増える。

だから、実際の感染者数は減っており、第二波は来ていないどころか、感染は他のリスクのノイズの中に消えていくレベルまで収束しつつある。検査が進むことによって発見された「見かけ上の新規感染者数」だけを見ていては、無用な不安が社会経済的活動を抑制してしまう。

失業率と自殺率の間には高い相関があるが、失業がすぐに栄養失調をもたらすというよりは、うつ病のような、ストレスからくる精神疾患が増加することが懸念される。

抗体検査の陽性率が高いのはなぜか

PCR法などを用いた現在の感染の有無の検査と、もうひとつ、抗体検査、つまり、すでに感染して免疫を獲得しているかどうかという検査も行われている。

東京大学では、5〜6月に、1000名を対象とした抗体検査が行われ、7名が陽性だったという報告がある[*6]。単純に計算すれば、陽性率は0.7%であり、10万人が抗体を持っている、つまりすでに感染したという結果になる。これは、累積感染者数(検査によって感染が確認された人数)である約5000人の、20倍となる。

また、厚生労働省では、東京23区内の1971名の抗体検査を行い、2名が陽性であった。これも単純計算すれば陽性率は0.1%であり、累積感染者数よりもはるかに多い。しかし、陽性者数が2人というのは、調査の結果としては少なすぎる。95%信頼区間における誤差を含めれば、0.04〜0.24%となる[*7]。この下限である0.04%は、東京都の人口1400万人と掛け合わせれば5600名であり、累積患者数とほぼ同じ値になる。

なぜこうした数値の揺れによってまったく異なる説明ができてしまうのかといえば、そもそも人口に対する感染者数が非常に少ないからである。0.04%、5600人というのは、1400万人の人口のうち、1万人のうちの4人であり、感染者数が最大になったときの人数は、その半分であるから、1万人のうち2人である。6月の感染者数を700人とすれば、0.002%、つまり、2万人に1人という人数になる。

すでに別の病気に罹患している人に感染しやすいことをあわせて考えると、やはり、ほとんどゼロの領域で議論していることになる。だから、正確な議論ができないのである。

アジアの感染者数は非常に少ない

欧米では感染者数が人口の1%であり、上記の抗体検査結果と同程度の値だともいえる。

f:id:hirukawalaboratory:20200708163114p:plain
人口100万人当たりの死亡数(2020年6月25日現在)[*8](死亡者の大半は高齢者なので、少子高齢化が進んでいる社会ほど、高い値が出やすい)

この極端な死亡率の差の原因は何だろうか。日本国内だけを見ていてはわからないのだが、むしろ、感染が始まった中国も含め、アジア太平洋地域で死亡率が低いことのほうに注目することが必要である。

日本人は清潔好きであり、対人距離が遠い、声が小さい、など、コミュニケーションの濃度が低い。花粉症の時期などにマスクをすることに慣れている、等々、文化的な理由は考えられる。もしそうなら、そういう習慣を強化し、あるいは、海外に向けて発信していく必要があるだろう。

しかし、日本以外のアジアでも、同じぐらいの割合で死亡率が低いことは、この文化差だけでは説明できない。

アジアでは、多くの人がすでに類似した別のウイルスに感染して抗体を持っていたという仮説がある。今回のSARS-CoV-2自体が「-2」、つまり、同じ中国の雲南省のコウモリに由来するSARS-CoVの「第二波」であり、SARS-CoV、あるいは同種異株のウイルスが、ほとんど症状を引き起こさずに感染していたという説明は可能である。

この仮説は、2019年以前に集められた血液のサンプルの抗体を検査することによって確かめることができるだろう。

しかし感染が終わったわけではない

しかし、感染症の場合は、ほとんど終わったように見えても、なかなか0にはならない。理屈の上では、感染者が1人でもいれば、なにかのきっかけがあれば、また指数関数的に増え始める。

季節性インフルエンザほど気温の影響は受けないようだが、夏には感染がおさまり、冬には感染が拡大する可能性もある。そうやって毎年「振動」しながら、何年もかけて0へと「収束」していくのかもしれない。

少数ではあっても無症状の感染者が無自覚に感染を広げれば、それが高齢者や別の病気になっている人を重症化させ、死亡者を増やすことにもなる、という考え自体は、変わらない。

追記:東京で感染者数が急増?

7月7日にこの記事を書いた以降、東京では新規感染者の報告数が急増し、流行のピーク時を超えたという。これは、検査数が増えたから見かけ上の感染者数が増えた、というだけでは説明できない。

次に考える必要があるのが、検査されたサンプルの偏りである。どこで、どういう人たちを検査したのかが明確にされなければ、表面的な数字は意味を持たない。

下記に引用した記事でも、東京での新規感染「判明」者、約二百名のうち、半数が「接待を伴う飲食店の従業員や客など」であり、さらにその半数がホストクラブ関連だというから、東京で大規模な感染が拡大中だと報道されたとしても、少なくとも半分は差し引く必要がある。

https://static.tokyo-np.co.jp/image/article/size1/8/d/7/8/8d78ff7ea79d24897b01aaa8eb66261f_4.jpg
 
https://static.tokyo-np.co.jp/image/article/size1/8/d/7/8/8d78ff7ea79d24897b01aaa8eb66261f_3.jpg

2020年7月10日現在の、東京都における新規感染[判明]者の、感染経路の割合と、年齢別の割合[*9]

感染経路に「夜の繁華街」が多いのは、第一に「夜の繁華街」に関わっている人の検査が多いからであり、「夜の繁華街」で、じっさいに感染しやすい状況がある、ということでもある。

感染経路不明者が多数だからといって、すぐに謎の市中感染が広がっているといえない理由は、新規感染「判明」者の年齢層が20代〜30代に偏っているからで、これがサンプルの偏りを示している。もし、たんに人の多いところで感染が広がっているのであれば、年齢層はもっと広く分布するはずである。感染経路が不明といっても、その人の年齢や性別ぐらいは調べているだろうし、それを統計的な数字として出すのは問題がないはずである。(「夜の繁華街」が特別視されているから、そこに出入りしていたことを言いたくない、という人も一定数含まれるだろう。)

検査数の増加とサンプルの偏りを除外しても、じっさいに感染者数が増えている可能性は否定できない。しかし、慌てて第二波だといえないのは、重症者数が順調に減っているからで、5人を下回った。

急な感染拡大の場合には、感染してから重症化するまでに、数日かかる、ということは考慮する必要がある。とはいえ、新規感染「確認」者数が増えてきたのは6月上旬からなのだから、重症者数が単調に減少していることとは、整合性がない。(重症化する前に受診する機会が増えたということなら良いのだが。)

さらに追記:空気感染よりも唾液対策に重点をおくべきか?

感染の拡大防止のためには、感染経路不明、は、不明なので仕方がないとして、感染クラスターの定量的な分析が有効である。

https://wwwnc.cdc.gov/eid/images/20-2272-F1.jpg
緊急事態宣言の前の日本での感染クラスタ[*10]

医療施設は特殊なのでいったん置いておくとして、一般的な経済生活においてもっとも重要なのが[家庭を別にすれば]職場、学校、通勤や通学のための電車やバスである。職場では一定数発生しているが、これは職種によって大きく違う。その他は、飲食店、ジム、音楽関係のイベントがあり、いっぽう、交通機関は少ない。

また、定量的な分析ではないが、クラスターが発生しそうで発生していないところとして、

  • 会議
  • 満員電車
  • パチンコ
  • (高級な)レストラン
  • 劇場、映画館
  • 学校などの授業
  • ショッピングセンター

が挙げられている[*11]

さらに、飲食店や音楽イベントといっても、カラオケ、居酒屋、ナイトクラブ、合唱などが挙げられており、これらを総合すると、閉鎖された場所で、集団で大きな声を出すこと、そして大人数で喋りながら飲食を共にする場所での感染が多く、逆に、閉鎖された空間で人が集まる場所であっても、学校の授業、満員電車、映画館のように、会話や飲食をしない場所では感染が少ないことがわかる。

複数の人が会うときには、飲食じたいが目的ではなくても、飲食店が使われることが多い。典型的なのは居酒屋である。同じお皿の料理を複数名で食べることが多く、かつ大人数で大きな声で喋るために利用されることが多いからである。(といって、居酒屋は最悪だから重点的に休業すべきだということにもならない。静かに味わうに値する料理も少なくないからである。)

もともと、この新型コロナウイルスSARS-CoV-2)は、空気感染の割合が低く、飛沫感染の割合が高いとされてきたが、呼吸器と消化器から出る液体(主に鼻水、唾液、便)、とくに唾液を経由した感染を避ければ有効だということがわかる。

他人の唾液が自分の口に入る、という場合、もっとも直接的なのは、口と口のキスであり、大声で話す人の唾液を吸い込むことである。そして、他人の唾液が入った飲食物を口にすることである。唾液が体外に出ると、単独では生きられないウイルスは徐々に死んでいく。誰かがくしゃみをした唾液が手すりに付着し、それを手で触り、その手を洗わないまま、その手で食べものを食べるという場合、その時間の間にウイルスの数は減っていくので、感染の確率は下がっていく。

感染経路で「家庭」が一定数あるのなら、中途半端な外出自粛には意味がない。杓子定規に「ソーシャルディスタンス」を2mとることにも意味がない。人が集まっても喋らない(マスクをして小声で話す)状態で感染は起こりにくいのであれば、「三密」ばかりを気にしても仕方がない。

感染の拡大を防止しつつ、社会的活動を続けるためには、流布している情報の不正確さを疑う必要がある。主に唾液から感染するといった仮説の検討など、より正確な感染経路の分析と、それにもとづいた対策が必要であろう。

幸い、新たなデータは日々集積され、分析されている。



記述の自己評価 ★★★☆☆
(出典のほとんどが学術論文ではなくインターネット上の記事であり、専門知識が不十分なコメントである。学術的な正確さは保証されない。)
CE 2020/07/07 JST 作成
CE 2020/07/19 JST 最終更新
蛭川立

*1:

*2:新田祐司・佐藤賢・榎本敦・合田義孝 (2020).「チャートで見る日本の感染状況 新型コロナウイルス」『日本経済新聞』(2020/07/13 JST 最終閲覧)

*3:藤井聡 (2020). 『Twitter』(2020/07/12 JST 最終閲覧)

*4:[無署名記事](2020).「都内の最新感染動向」『東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト』(2020/07/18 JST 最終閲覧)

*5:新型コロナウイルス感染症 東京都の重症者における人工呼吸器装着数の推移(2020年8月17日、更新終了) - Yahoo!ニュース

*6:川村猛・児玉 龍彦 (2020). 「新型コロナウィルス抗体 第二回東京の500例測定結果について」『東京大学 先端科学技術研究センター』(2020/07/08 JST 最終閲覧)

*7:高橋義明・田辺俊介 (2020). 社会調査の視点から考える厚生労働省の抗体保有調査の 意味と問題点:今後の抗体調査の改善に向けて NPI Policy Paper July 2020.

*8:畑川剛毅 (2020).「BCG接種? 交差免疫? 日本のコロナ死者なぜ少ない」『朝日新聞デジタル』(2020/07/12 JST 最終閲覧)

*9:小倉貞俊・松尾博史・岡本太 (2020).「東京で最多更新243人感染 1都3県で300人超」『東京新聞』(2020/07/12 JST 最終閲覧)

*10:Yuki Furuse, Eiichiro Sando, Naho Tsuchiya, Reiko Miyahara, Ikkoh Yasuda, Yura K. Ko, Mayuko Saito, Konosuke Morimoto, Takeaki Imamura, Yugo Shobugawa, Shohei Nagata, Kazuaki Jindai, Tadatsugu Imamura, Tomimasa Sunagawa, Motoi Suzuki, Hiroshi Nishiura, and Hitoshi Oshitani (2020). Clusters of Coronavirus Disease in Communities, Japan, January–April 2020. Emerging Infectious Diseases, 26.

*11:鹿嶋友敬 (2020).「クラスター発生していないところからコロナの感染経路を考える」『オキュロフェイシャルクリニック東京』(2020/07/12 JST 最終閲覧)